アニメストリーミング大手のクランチロールが、またしてもAI論争の渦中に巻き込まれています。新しくリリースされた「ネクロノミコン・アンド・ザ・コズミック・ホラー・ショー」のドイツ語字幕で、なんと「ChatGPT said:」というクレジット表記が画面に表示され、ファンを驚愕させました。これまでも翻訳の質の低下が指摘されていたクランチロールですが、ついにAI使用の決定的証拠が発見されたことで、プロの翻訳者を軽視する姿勢への批判が高まっています。
ついに露呈したAI翻訳の決定的証拠
7月1日からクランチロールで配信開始された「ネクロノミコン・アンド・ザ・コズミック・ホラー・ショー」の19分頃、ドイツ語字幕に「ChatGPT said: Wenn ich die Welt von hier an weiter genießen kann」という表記が表示されました。この明らかなミスにより、クランチロールがChatGPTを字幕翻訳に使用していることが白日の下に晒されたのです。
興味深いことに、この問題は他の言語版では確認されておらず、ドイツ語版特有の問題として発生しました。しかし、ファンの間では英語字幕についても「ChatGPTのクレジット表記以外にも翻訳問題が山積している」という指摘が相次いでいます。
これまでクランチロールは公式にAI翻訳の使用を否定してきましたが、ファンの間では数か月にわたって翻訳品質の著しい低下が問題視されていました。明らかな誤訳、文脈に合わない表現、キャラクターの性格を無視した台詞など、プロの翻訳者では考えられないようなミスが頻発していたのです。
最近の作品でも翻訳問題が続出
今回のChatGPT表記発覚により、最近の他作品の翻訳問題についても新たな疑惑が浮上しています。6月28日に配信開始された「ロード・オブ・ミステリーズ」では、原作小説のファンから「重要な内容が抜け落ちている」「翻訳が不正確で意味が通らない」という批判が集中していました。
アニメ自体の映像クオリティは高く評価されていたものの、字幕の質の低さが作品の魅力を大きく損なう結果となっていたのです。当時は「翻訳者の技量不足」と思われていましたが、今回のAI使用発覚により、これらの問題がAI翻訳に起因していた可能性が高まっています。
ファンの中には「最近のクランチロールの翻訳はおかしいと思っていた」「プロの翻訳者なら絶対にしないようなミスが多すぎる」という声が多数上がっており、長期間にわたってAI翻訳が使用されていた疑いが強まっています。
ストリーミング業界への不信拡大
実は、クランチロールは1年前に「字幕翻訳への生成AI導入を検討している」と公言していました。しかし、その後の動向については曖昧な態度を取り続けており、今回の発覚まで具体的な使用状況は明らかにされていませんでした。
この問題は単なる技術的なミス以上の意味を持っています。プロの翻訳者を雇用せずにAIで済ませようとする姿勢は、翻訳業界全体への軽視と捉えられており、多くのファンが「ストリーミングサービスへの不信が増大している」と表明しています。
確かにAI翻訳は迅速性という点でメリットがありますが、文化的ニュアンスやキャラクターの個性を理解した質の高い翻訳には程遠いのが現状です。特にアニメのような創作物では、単純な言語変換以上の理解と感性が求められるため、AI翻訳の限界が露呈しやすい分野と言えるでしょう。
今回の騒動を受けて、クランチロールがどのような対応を取るかが注目されています。ファンからは「プロの翻訳者への回帰」を求める声が高まっており、同社の今後の方針が業界全体に与える影響も大きいと予想されます。
引用:screenrant