TikTok Shopが2026年5月19日、米国の中小事業者(年商1500万ドル未満)による2025年の販売額が前年比66%増になったと発表しました。同プラットフォームで活発に出品している米国の中小企業は21万5000社を超え、こちらも前年比25%増という勢いです。日本ではTikTok Shopの本格展開はまだ限定的ですが、米国で起きているSNSコマースの構造変化は、楽天市場・Amazon・Shopify・Yahoo!ショッピングを運営する日本のEC事業者にとっても無関係ではありません。動画とライブ配信を起点に商品を売る型が、検索起点の従来型ECとどう競合するのか、本記事で整理します。
何が起きたか、中小売上66%増と発見起点の購買行動
Modern Retailによると、TikTok Shop米国市場の中小事業者の販売額が2025年に前年比66%増となり、出品する中小企業は21万5000社超に拡大しました。同時に発表されたGlobalDataによる調査は、16歳以上の米国消費者6000人を対象に2026年4月から5月にかけて実施されたもので、67%の消費者が新しい商品やブランドを発見するためにTikTok Shopを訪れていることを明らかにしています。比較対象として挙げられたAmazonの57%を上回り、発見型のチャネルとして優位に立ったことになります。
調査ではさらに、TikTok Shopユーザーの66%が過去1年間に同プラットフォームで新しいブランドを発見したと回答し、発見されたブランドの72%が年商1500万ドル未満の中小企業だったと示されています。発見から購入への転換も速く、小規模ブランドを発見した消費者のうち58%が後にそのブランドからTikTok Shopで購入しており、約2割は発見当日に購入に至っています。クリエイター推薦の影響力も強く、TikTok Shop利用者の70%がクリエイター推薦商品を購入した経験があり、そのうち88%が過去1年以内の購入と答えています。
日本のEC事業者にとっての論点、ライブコマースと発見導線
日本のSNSコマースは米国と異なる進化を辿っており、TikTok Shop自体は2026年5月時点で日本本格展開の規模感が限定的です(要確認)。一方で、楽天市場のRakuten LIVE、Yahoo!ショッピングの動画施策、Shopifyを基盤としたD2CブランドによるInstagram・TikTok連動のライブコマースなど、動画を起点にした購買導線は確実に広がっています。経済産業省の電子商取引に関する市場調査によれば、物販系BtoC-EC市場規模は2024年時点で約14.7兆円に達しており、その中でモール内動画やライブ配信が転換率に与える影響は年々大きくなっています。
米国TikTok Shopの数字が示しているのは、検索キーワードに依存しないチャネルが本格的に育ってきたという事実です。Charm.ioの推計によれば、TikTok Shopは2026年1月から4月だけで米国市場で約67.5億ドルの販売額を生み出し、前年同期から倍近い規模に拡大しました。2025年通年では約140億ドルを超え、Wayfair、Etsy、eBayを上回るとされています。ビューティ・パーソナルケアが2025年の売上構成比で約19%、ウィメンズウェアが約12.5%を占め、特定カテゴリでは既存ECモールと正面から競合する規模に達しています。日本のEC事業者がこの事実から読み取るべきは、検索広告と商品ページSEOだけに依存した集客から、動画コンテンツと配信主導の発見導線を併走させる構造への移行が始まっているという点です。
具体例も豊富で、Mavwicks Fragrancesという香水ブランドはTikTok Shop参入前の年商30万から40万ドル規模から、初年度に3200万ドル規模まで売上を伸ばしました。3Dプリント玩具のBumpaBuiltは1台のプリンターから70台体制に拡張し、Mississippi Candle Companyは1本のキャンドル動画が拡散したことをきっかけに前年比600%超の成長を遂げたとされています。日本でも、楽天市場のSPU施策と動画コンテンツを組み合わせて短期間に売上を伸ばすショップが出始めており、米国の事例は決して対岸の火事ではありません。
今後の展望と初動アクション、動画×AIで何を仕込むか
日本のEC事業者が今押さえるべき初動は3つあります。1つ目は、自社の主力商品で30秒から60秒の縦型動画を最低5本制作し、各モールの商品ページ動画枠と各SNSの両方でA/Bテストする体制を整えることです。楽天市場の商品紹介動画、Amazonのブランドストーリー動画、Shopifyの動画ブロック、Yahoo!ショッピングの商品ページ動画機能は、いずれもクリエイティブの差で滞在時間と転換率が動きます。米国TikTok Shopの調査で示された「発見から購入までの短さ」を日本のモール内でも再現できるかどうかが鍵になります。
2つ目は、ライブ配信を「販売チャネル」として正面から組み込むことです。Rakuten LIVEや、Instagram・YouTubeのライブ配信、TikTok本体のライブ配信を、月1回の周年セールではなく、週次のルーティンとして運用設計します。米国TikTok Shopではカウントダウン入札やショッパブルフォトといった機能が新カテゴリに拡張され、ライブ販売プラットフォームのWhatnotと正面から競合する状態に入りました。日本でも同様の機能が後追いで実装される可能性が高く、ライブコマースの運用ノウハウを早めに蓄積しておく価値があります。
3つ目は、生成AIをクリエイター施策と組み合わせて、量産可能な動画制作パイプラインを社内に構築することです。Google Flow、Runway、Luma Dream Machine、Kuaishou Klingといった動画生成AIの試用と、社外のショート動画クリエイター・インフルエンサーとの連携を並走させると、撮影コストを抑えながら動画在庫を厚くできます。TikTok Shopの調査で示されたクリエイター推薦の影響力は、日本市場でも応用可能なポイントです。
まとめ
米国TikTok Shopの中小売上66%増という数字は、検索起点ではなく動画とクリエイター起点で売れる構造が、もはや特殊事例ではなく主流になりつつあることを示しています。日本ではTikTok Shop本体の規模感はこれからですが、楽天市場・Amazon・Shopify・Yahoo!ショッピングの各モール内動画、ライブ配信、生成AIを使った動画量産という3点セットを2026年下半期までに仕込めるかどうかが、2027年以降の競争力を分けます。様子見ではなく、まずは動画コンテンツ1本の制作から始める姿勢が求められます。
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引用元: Modern Retail

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。