米国のリコマース企業が、不要になったおもちゃを回収して再利用・寄付・リサイクルへ回す新サービスを35ドルで始めました。衣類の回収から事業を広げてきた同社の動きは、「売って終わり」から「回収してまた循環させる」へと小売の前提が変わりつつあることを示しています。本記事では、この回収プログラムの中身を整理したうえで、日本のEC事業者が回収・下取り・リコマースをどう自社の購買体験に組み込むかを3つの視点で考えます。
何が起きたか:玩具の回収ボックスを35ドルで提供
Modern Retailが2026年6月25日に報じたところによると、リコマース事業を手がけるTrashieが、状態の良い不要なおもちゃを回収する「Toy Take Back Box」を今夏に開始しました。料金は1箱35ドルで、最大20ポンド(約9キロ)まで送ることができます。年68ドルの会員であれば、1回15ドルで玩具回収を追加できる設計です。
Trashieは2024年に立ち上がり、衣類向けの回収バッグをこれまでに100万袋以上販売し、350万ポンド(約1,600トン)の衣類を埋め立て処分から回避してきたとしています。回収バッグは1袋20ドルで、集めた衣類の約95%が再利用・リサイクル・再資源化されると説明しています。ユーザーは利用するほど自社マーケットプレイスで使えるリワードの倍率が上がる仕組みで、回収を起点に再購入へつなげる導線が組み込まれています。
玩具に目を向けた背景には、需要の存在があります。資源回収プラットフォームのToycycleによると、おもちゃの約80%が埋め立てや海洋に流れ着いているとされ、Trashieの利用者の約半数が子育て世帯であることから「クローゼットだけでなくおもちゃ箱も片づけたい」という声が寄せられていたといいます。回収対象はぬいぐるみやアクションフィギュアなど良品で、電池を抜いたものに限られ、ハッピーミールの景品やパズル、破損品は対象外です。受領後は専門の選別施設が仕分けし、約90%を国内外の支援先へ寄付などで再活用する想定だとしています。
日本のEC事業者にとっての論点:回収を購買体験に組み込む
日本でも二次流通やリコマースは身近な存在です。フリマアプリのメルカリや楽天ラクマが個人間取引を広げ、ファッションECではZOZOの「買い替え割」、無印良品やユニクロの店頭回収など、ブランド主導の回収・下取りが定着しつつあります。Trashieの事例が示すのは、回収そのものを単なる社会貢献ではなく、リピート購入とLTV向上の起点として設計している点です。
ここで日本のEC事業者が学べる論点は3つあります。第一に、回収を有料サービスとして成立させている点です。Trashieは「廃棄は本来無料ではない」という考えのもと、送料と処理費を顧客に明示して課金しています。安易な無料回収はコスト負担が読めず継続できないため、価格を提示したうえで価値を伝える姿勢は、利益率を重視する日本の中小EC事業者にも参考になります。
第二に、会員制とリワードによる継続接点の設計です。Trashieは2025年末に年68ドルの会員制を始め、2カ月で1万人以上を集めたとしています。回収のたびにマーケットプレイスで使えるポイントが貯まることで、回収が次の買い物の動機になります。楽天やAmazon、自社ECでポイント・クーポンを運用する事業者であれば、下取りや回収を既存のロイヤルティ施策と接続することで、休眠顧客の掘り起こしにつなげられます。
第三に、対象品の明確な線引きです。Trashieは受け付ける品目と不可の品目を顧客向けに細かく示し、選別施設と連携することで再活用率を高めています。回収プログラムは「何でも受け付ける」と現場が破綻するため、対象を絞ってオペレーションを軽くする発想は、人員の限られた店舗運営でこそ効いてきます。
今後の展望と初動アクション
サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行は、規制面でも後押しされています。米国では拡張生産者責任(EPR、生産者が製品の廃棄まで責任を負う考え方)に関する法整備が進み、日本でも容器包装リサイクル法や家電リサイクル法に加え、繊維製品の循環利用に向けた議論が続いています。回収の仕組みを早く持つ事業者ほど、こうした規制強化を負担ではなく差別化の機会に変えられます。
日本のEC事業者がいますぐ動くなら、まずは自社で扱う商材のうち回収・下取りと相性の良いカテゴリー(衣類、子ども用品、家電、ガジェットなど)を1つ選び、小さく試すのが現実的です。次に、回収を一度きりで終わらせず、回収時に発行するクーポンやポイントで再購入へ戻す導線を設計します。さらに、受け付ける品目と状態の基準をあらかじめ明文化し、返送や選別の手間を抑える運用を組んでおくことが、無理なく続けるための鍵になります。
まとめ
Trashieの玩具回収サービスは、回収を「コストのかかる社会貢献」ではなく、リピートと再購入を生むビジネスとして設計した点に新しさがあります。日本のEC事業者にとっても、回収・下取り・リコマースは値引き合戦に頼らない顧客接点をつくる有力な打ち手です。自社商材に合うカテゴリーから小さく始め、ポイントや会員制と結びつけて循環の輪を回していく姿勢が、これからの差別化につながります。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。