米国で家庭用品ブランドのCleanBossが、SNS広告全盛の今あえて昔ながらのテレビ通販(インフォマーシャル)に投資し、放映から60秒以内に日次売上の最大9割を生み出していることが報じられました。動画で実演し、その場の売上に直結させるこの手法は、日本のEC事業者がライブコマースや動画コマースを設計するうえで示唆に富みます。本記事では何が起きたのかを整理し、ライブコマースへの応用と初動アクションを解説します。

何が起きたか:SNS広告偏重への揺り戻し
Modern Retailによると、Joy ManganoとミュージシャンのPitbullが2020年に立ち上げた無添加クリーニングブランドCleanBossは、テレビ通販を主要チャネルの一つに据え、媒体費の相当部分をリニアTVに振り向けています。同社の商品Eat Cleanerは、テレビ投入から30日でAmazonの該当カテゴリで売上1位になったといいます。
特徴は計測の徹底です。同社は自社開発のリフト計測の仕組みで、放映後15分・1時間・12時間のウィンドウごとに売上の増分を追っています。Chief Digital OfficerのNevin Jethmalaniは、リニアTVは細かなターゲティングではなく広いリーチに対して費用を払うため、CPMがデジタル広告より低くなりやすいとModern Retailに語っています。CleanBossはMeta、TikTok Shop、Amazon広告も併用し、テレビを起点に各チャネルへ需要を波及させる設計です。
日本のEC事業者にとっての論点:ライブコマースへの転用
この事例の本質は「テレビ」そのものではなく、動画での実演から即時購入につなげ、その増分を計測するという一連の設計にあります。日本でこれに最も近いのは楽天ライブやAmazon Live、TikTok Shopなどのライブコマースであり、ジャパネットたかたやQVCジャパンが磨いてきたテレビ通販の手法と地続きです。
CleanBossが放映60秒で売上の大半を取れるのは、商品の課題と解決を短時間で見せ切る実演力があるからです。ライブコマースでも、配信開始直後の数分でベネフィットを実演し、その場のクーポンやカートに直結させる構成が成果を分けます。さらに重要なのが、配信単体の売上だけでなく、配信後にAmazonや楽天市場、検索経由で起きる指名買いの波及(ハロー効果)まで含めて評価する視点です。SNS広告のCPMが高止まりするなか、ライブコマースを別チャネルの起爆剤として捉え直す余地があります。
ただし楽天市場でライブコマースを行う際は、配信や商品ページから自社サイトやLINE公式など楽天市場外のURLへ誘導しないなど、各モールの規約順守が前提となります。
今後の展望と初動アクション
まず、自社のライブコマースを単発の売上ではなく増分(リフト)で測る計測設計を整えることです。配信前後の一定時間で、対象商品の受注や検索流入がどれだけ伸びたかを記録するだけでも、投資判断の精度は上がります。
次に、実演の脚本化です。最初の数分で課題提示と解決の実演を終え、視聴者が迷わずカートへ進める導線を用意します。CleanBossが繰り返し放映で習熟していったように、ライブコマースも一度きりでなく定例化し、台本と進行を改善し続けることが効きます。
最後に、チャネル横断の役割分担です。ライブコマースで需要を喚起し、Amazonや楽天市場の商品ページ・検索で刈り取るという前提でKPIを設計すれば、配信単体のROIだけで判断して早期撤退する失敗を避けられます。
まとめ
CleanBossの事例は、動画での実演と厳密な増分計測を組み合わせれば、成熟したチャネルでも高い費用対効果を出せることを示しています。日本のEC事業者は、ライブコマースを流行りの配信ではなく計測可能な獲得チャネルとして設計し直す好機といえます。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。