AI市場の勢力図に変化の兆しが出ています。TechCrunchが報じたクレジットカード決済データの分析によると、お金を払ってAIを使う消費者のあいだで、AnthropicのClaudeを選ぶ人が月を追って増えています。ChatGPTが圧倒的な王者である構図は変わらないものの、この1年でClaudeが着実に距離を詰めてきました。AIを業務に組み込みたいEC事業者にとっても、どのツールに課金するかを考え直す材料になります。
決済データが示すClaudeの伸び
今回の数字の出どころは、クレジットカード取引を分析するIndagariです。同社は約2,800万人の米国消費者の匿名化された取引を、数十億件単位で集計しています。絶対額や総顧客数までは分かりませんが、トレンドを読むには十分な母数です。
その分析では、サブスクリプションやAPIトークンへの支払いを含むClaudeの有料消費者と売上が、2026年1月から約75%増えています。集計対象は2025年から2026年5月10日までの週次データです。注目すべきは、3月に一度伸びが跳ねた後も増加が続いた点です。3月の急伸は、Anthropicが米政権による大規模監視や自律兵器への自社モデル利用を拒否したタイミングと重なっていました。
消費者の関心の高まりは、別の指標にも表れています。AIスキルを教える教育プラットフォームのDataCampでは、「Claude」がサイト内で最も検索される語になり、「AI」という語さえ上回ったとTechCrunchに語っています。法人研修ではChatGPT関連講座が依然優勢ですが、個人で学ぶ層に限るとClaude講座の需要がChatGPTを3対1で上回り、直近30日でClaude講座の需要は18倍に伸びたとされています。
それでも王者はChatGPT
伸び率の大きさとは別に、規模ではChatGPTが全方位で先行しています。市場調査会社Sensor Towerのデータでも、Claudeは各プラットフォームで順調に伸びている一方、ChatGPTには大きく水をあけられたままです。Indagariのデータでも、有料ユーザーの実数はChatGPTのほうが圧倒的に多いと示されています。ChatGPT側の伸びがやや緩やかに見えるのは、すでに到達した規模が巨大だからという面もあります。
つまり現状は「ChatGPTが市場を握ったまま、Claudeが想定より速く追い上げている」という構図です。OpenAIとAnthropicはどちらも株式公開を目前に控えており、Anthropicは6月1日に上場を申請しました。両社が事業の足腰をどこまで開示するかは、今後の選定判断にも効いてきます。
なお足元では不確実な材料もあります。6月に米政府が、Anthropicのサイバーセキュリティ特化モデルであるMythos 5とFable 5を米国外の利用者に使わせることを禁じ、Anthropicはこれらを一旦市場から取り下げました。ただ、ここまで確認できるデータでは、Anthropicは消費者・法人の両方で利用を伸ばし続けています。
EC事業者は何を見ておくべきか
ECの現場では、商品説明の作成、レビュー返信、メルマガ件名のたたき台づくりなど、生成AIに任せられる作業が広がっています。今回の数字が示すのは、ChatGPT一択で決め打ちする時代が静かに終わりつつあるという点です。長文の構成や手順の正確さを重視する作業ではClaudeを試す価値があり、汎用的な発想出しや既存ワークフローの豊富さではChatGPTが依然強い、という使い分けが現実的です。
直近の支援案件で観測したのは、月20米ドル前後の有料プランを1つに絞り込むより、無料枠や低価格枠で2つを併用して作業ごとに振り分けたほうが、結果的に費用対効果が高くなるケースです。どのモデルが優勢かは半年単位で動くため、ツールを固定しすぎず、出力品質を定点で見比べる体制をつくっておくことをおすすめします。生成AIの選定とワークフロー設計に迷うときは、自店の業務に合わせた検証から始めると判断を誤りにくくなります。Claudeの階層別モデルの選び方はClaude Opus・Sonnet・Haikuの使い分け解説も参考になります。
まとめ
有料消費者という指標で見ると、Claudeは2026年に入って約75%伸び、ChatGPT優位の市場で存在感を高めています。とはいえ規模ではChatGPTが依然として大きく先行しており、勝敗が決した話ではありません。EC事業者は「どちらか一方」ではなく、作業特性に応じて使い分ける前提で、出力品質を継続的に比較する姿勢が有効です。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。