AI自動化ツールRelay.appが2026年9月14日に完全終了します。
Zapierの後継を掲げて2021年に立ち上がったAI自動化ツールが、わずか5年で店じまいします。無料プランは2026年8月15日、有料プランも9月14日でアクセスが切れ、その後はアカウントもデータも完全削除されます。受注処理やレビュー返信をこの手のAI自動化SaaSに寄せているEC事業者にとって、他人事ではない話です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC運用の視点で解説します。

何が起きたか|Relay.appの終了と創業者のGoogle復帰
結論から言えば、AI自動化SaaSのRelay.appがサービスを畳み、創業チームの一部がGoogleのChromeチームへ移りました。TechCrunchによると、創業者兼CEOのJacob Bankは、Google Chromeのプロダクト担当バイスプレジデントとして復帰し、プロダクトとデベロッパーリレーションの両チームを率いるとのことです。BankはTimefulというスケジューリングアプリのGoogle買収を経て2015年にGoogleへ入社し、GmailやGoogleカレンダー、Google Chatのプロダクトリードを6年以上務めた後にRelayを創業した経歴を持ちます。
終了スケジュールはRelay.appの告知ページで細かく示されています。新規登録と無料から有料へのアップグレードは2026年7月16日に停止済み、無料プランは8月15日23時59分(太平洋時間)で、有料プランは9月14日の同時刻でアクセスが終了します。その時点でアカウントと関連データは恒久的に削除されます。有料契約は7月16日付で自動解約され、年額契約の未使用分は5営業日以内に日割り返金されます。移行支援として、残り60日間は毎月25,000ステップと10,000AIクレジットが上乗せで無償付与されます。
データについては、ワークフローやシーケンス、MCPサーバーをJSONとAIプロンプトの形式で書き出せるほか、実行履歴とテーブルをCSVで取り出せます。公式のエクスポート手順も用意されています。アカウント削除時には、連携アプリ向けに保管されていた認証情報とトークンも削除されると明記されています。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
日本の店舗運営に引き寄せると、この一件は「AI自動化を業務に組み込むときの設計思想」を問うています。論点は3つに整理できます。
第一に、業務の心臓部を単一SaaSに預けている場合の停止リスクです。楽天RMSの受注CSVを取り込んで在庫を更新する、Amazonのレビューを拾って対応文面を下書きする、Shopifyの問い合わせをタグ分けする。こうした処理を1つの自動化ツールで組んでいると、そのツールが止まった瞬間に業務が止まります。Relayの場合は60日の猶予と返金がありましたが、これは丁寧な部類です。猶予なしで止まる可能性も想定しておくべきです。
第二に、設計資産の可搬性です。Relayがワークフローを「JSONと、他のツールに貼り付けられるAIプロンプト」の両方で出力できるようにしたのは示唆的です。自動化の中身が特定ツールのGUIにしか存在しないと、移行時にゼロから作り直しになります。逆に、処理手順をテキストのプロンプトや仕様書として別管理していれば、移行先がDifyでもn8nでもMakeでも、あるいは自社スクリプトでも、作り直しの工数は大きく下がります。
第三に、認証トークンの棚卸しです。自動化ツールにはGmail、Slack、スプレッドシート、そして各モールのAPIキーが預けられています。Relayは削除を明言しましたが、サービス終了時に連携先の権限が宙に浮くケースは珍しくありません。撤退時には、ツール側の削除を待つのではなく、自社側で連携アプリの認可を取り消すのが安全です。
なお、この動き自体はAI業界の大きな流れの一部でもあります。GeminiのChrome組み込みは2025年9月に米国ユーザー向けへ展開され、Geminiアプリの利用者は10億人を超えたと報じられています。Bankは自身のX投稿で、Chromeを「エージェントと協働するのに最適な場所」と表現しています。単機能の自動化SaaSが、ブラウザやOSの標準機能に吸い込まれていく構図と読むこともできます。ここは今後の発表待ちで、断定はできません。
今週やるべき初動アクション
まず、いま使っている自動化ツールとAIツールを棚卸しし、それぞれが止まったときに何分・何時間の業務が止まるかを書き出してください。所要は30分から1時間です。受注、在庫、問い合わせ、広告レポートのどこに紐づいているかを見える化するだけで、優先順位が決まります。
次に、業務が止まると困る自動化については、処理手順を日本語の仕様書かプロンプトとして別ファイルに保存します。ツールの画面を見ながら書き起こすだけで構いません。これが移行時の設計図になります。
三つ目に、連携アプリの認可一覧を確認します。Googleアカウント、Slack、各モールの開発者設定を開き、使っていないツールの権限を外します。退会済みサービスの認可が残っているケースは実務でよく見かけます。
四つ目に、Relay.appを実際に使っている場合は、9月14日を待たずに今週中のエクスポートをおすすめします。ワークフローのJSON、実行履歴のCSV、テーブルのCSVを取り出し、社内の共有ドライブへ保管してください。年額契約の返金は自動処理されますが、着金は各自で確認しておくと安心です。
最後に、新しくAI自動化ツールを選ぶときの基準に「エクスポート機能の有無」を加えてください。無料枠の広さや連携アプリ数より、撤退できるかどうかのほうが、数年単位で見れば効いてきます。AI関連のツールは統廃合が続いており、StripeによるOpenRouter買収報道のように、買収でサービス方針が変わる可能性も織り込む必要があります。
まとめ
Relay.appの終了は、AI自動化SaaSが業務インフラになりつつある一方で、そのインフラが数か月で消えうる現実を突きつけました。日本のEC事業者がとるべきスタンスは、ツールを避けることではなく、乗り換えられる形で使うことです。手順を自社の言葉で残し、認証情報を管理し、データを定期的に手元へ落とす。この3点を運用に組み込めば、次にどのツールが止まっても、業務は止まりません。AIへの業務委任が広がる局面だからこそ、委任の設計を見直す価値があります。
参考文献
- TechCrunch・AI automation startup Relay shuts down, staff joins Google’s Chrome team
- Relay.app・An important update on Relay.app(公式終了告知)
- Relay.app Docs・Export your Relay.app data(公式エクスポート手順)
- TechCrunch・Google’s Gemini app surges to one billion users
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。