Googleが2028年投入予定の自社AIチップ「Frozen v2」を開発中と、経済メディアのThe Informationが報じました。
Frozen v2とは、GoogleがGeminiの推論効率を最大10倍高めるために開発中の、モデルの構造そのものを回路に焼き込んだ自社AIチップのことです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。生成AIの利用料金を左右する「推論コスト」の競争に、検索大手のGoogleが新しいカードを切ろうとしています。日本のEC事業者が日々使うAIツールの価格にも、中期的に効いてくる動きです。

何が起きたか|Gemini専用チップ「Frozen v2」の中身
まず事実関係です。The DecoderとTechCrunchが7月20日に報じた内容によると、Googleは「Frozen v2」と社内で呼ばれる新しいサーバー向けAIチップを開発しています。元となった報道はThe Informationによる関係者情報で、投入時期は2028年ごろとされます。
最大の特徴は効率です。The Informationの情報では、消費電力あたりに生成できるトークン数で測って、既存のTPU(GoogleのAI専用チップ)と比べて6倍から10倍効率が高いと見込まれています。仕組みとしては、Geminiのモデル構造の一部をチップの回路に直接埋め込みます。「Frozen(凍結)」という名前は、AIモデルのパラメータを固定して変化させないことを指す用語に由来し、モデルの一部をチップに焼き固めることで計算の手数を減らし、応答を速くする狙いです。
この発想はもともと、Google DeepMindの主任科学者ジェフ・ディーンが提案したものとされます。最初の「Frozen」設計はモデルの重み(AIの応答を決める具体的な数値設定)そのものをチップに埋め込む案でしたが、それだと特定のGeminiのバージョンでしか動かず、すぐ陳腐化するため断念されました。Frozen v2は重みではなくモデルの構造(設計図にあたる部分)を埋め込むことで、新しい重みを後から載せ替えられる柔軟性を残しています。どこまで構造を焼き込むかはまだ決まっていないと報じられています。
Googleはこの報道を明確には認めず、否定もしていません。TechCrunchに対しては「すべてのプロジェクトが製品化されるわけではない」としたうえで、ハードとソフトを一体で設計する自社の方針を強調するコメントを出しました。あくまで現時点では、外部顧客向けの製品ではなく、Gemini専用の特化型チップという位置づけです。
なぜ重要か|AI推論コスト競争とNvidia依存脱却
このニュースが重要な理由は、AIビジネスの利益率が「推論コスト」でほぼ決まる時代になったからです。学習(モデルを作る工程)だけでなく、ユーザーの質問に答え続ける推論の電力・計算コストが、そのままサービスの原価になります。ここを6倍から10倍改善できれば、Googleは高性能なモデルをより安く動かし、価格でOpenAIやAnthropicからシェアを奪える可能性があります。
背景には、主要AI企業がそろって進めるNvidia依存からの脱却があります。6月にはOpenAIが初の自社チップ、推論向けプロセッサ「Jalapeño」(Broadcomと共同開発)を発表し、今月にはAnthropicがSamsungとのチップ製造提携を協議中と報じられました。うるチカラでもAnthropicが推論コスト削減へSamsungと自社チップを検討する動きを取り上げましたが、Frozen v2はその流れをGoogleがさらに一歩進めるものと言えます。
投資家の目線も無視できません。Googleは今年、AI基盤への設備投資を1,800億〜1,900億ドル規模と説明しており、巨額支出への懸念が市場にありました。そこに「推論を大幅に効率化するチップ」という材料が加わったことで、The Informationの報道後、Alphabet株は月曜の朝方に約3%上昇したと報じられています。GoogleはすでにTPUをMetaに貸し出し、外部クラウド顧客にも提供して「Nvidiaの年間売上の10%を取る」という社内目標を掲げていますが、Frozen v2は外販ではなく自社の計算能力不足を緩和する狙いという点で、TPUとは役割が異なります。
今後の動きとEC事業者への示唆
まず今後の動きです。Frozen v2は2028年ごろの投入見込みで、構造をどこまで焼き込むかなど設計はまだ流動的です。Googleはこれを特化型チップの試金石と位置づけており、量産規模もTPUより小さいとされます。まずは今週後半に控えるGoogleの決算で、AI投資の回収シナリオがどう語られるかが最初の注目点になります。
日本のEC事業者にとっての示唆は、間接的ですが確かにあります。商品説明文の生成、商品画像の作成、多言語翻訳、問い合わせ対応など、いまEC運営で使う生成AIツールの利用料金は、突き詰めれば各社の推論コストで決まります。GoogleがGeminiの推論を大幅に安くできれば、OpenAI(ChatGPT)やAnthropic(Claude)との価格競争がさらに激しくなり、EC事業者が払うAIツールの単価は下がりやすくなります。実際、中国製モデルを含めたコスト面での使い分けや、NVIDIAを軸にした国家規模のAI基盤投資など、推論を安く大量に回すための競争はすでに始まっています。
ただし、Frozen v2の効果が出るのは2028年以降であり、現時点の料金にすぐ反映されるわけではありません(効果は要確認)。EC事業者が今すべきことは、特定の1社・1モデルに業務を固定しすぎず、用途ごとに最適なAIを選べる体制を整えておくことです。推論コストの競争は今後も続き、勝者が変わるたびに「一番安く高性能なAI」も入れ替わるからです。
まとめ
GoogleのFrozen v2は、Geminiの構造をチップに焼き込み、推論効率を最大10倍に高めることを狙う自社AIチップです。2028年投入予定でまだ不確定要素は多いものの、AIの利益率を決める推論コスト競争に検索大手が本格参入する号砲と言えます。EC事業者は、この価格競争を追い風と捉えつつ、モデルを柔軟に乗り換えられる運用を今から準備しておくのが得策です。
参考文献
- The Decoder: Google’s “Frozen v2” chip reportedly bakes Gemini’s architecture directly into silicon for efficiency gains
- TechCrunch: Google is working on a new AI chip designed to make Gemini more efficient
- The Information: Google Plans New ‘Frozen’ Chip to Run AI Models More Efficiently
- CNBC: Alphabet stock pops on report it’s developing a more efficient AI chip
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。