AI求人9.4%で全体は11%減|二極化する採用とEC人員計画3論点

英国の求人の9.4%がAIに言及する一方、求人全体は年初から11%減。マーケティング職はAI求人指数341に対し全体52という二極化です。日本のEC事業者が採用と人員計画で押さえるべき3つの論点と、1週間でできる初動を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

英国の求人の9.4%がAIに言及し、全体の求人数は年初から11%減りました。

同じ労働市場のなかで、AIに触れる求人だけが増え、それ以外の求人が減っています。求人サイトのIndeedが英国のデータでこの分岐を数字で示しました。マーケティング職ではAI求人の指数が341まで上がる一方、その職種の求人全体の指数は52まで落ちています。人手不足なのか人余りなのかという二択では説明がつかない状態です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の採用と人員計画にどう効いてくるかを解説します。

英国の求人のうちAIに言及する割合が2023年から約5倍に伸びたことを示すIndeedのグラフ

AI求人は9.4%へ、対面職種は1%未満という広がり方

結論から言うと、AIスキルの要求はIT職から一般の事務・企画職へ広がりきりました。The Decoderが報じたIndeedの分析では、2026年6月末時点で英国の全求人の9.4%がAIまたは関連ツールに言及しています。2023年は約2%だったので、3年ほどでおよそ5倍です。

職種別に見ると、データ・アナリティクスが48.8%、ソフトウェア開発が46.7%と、ほぼ2件に1件がAIに触れています。ここまではIT職の話ですが、その先が本題です。ITシステム・ソリューションが30.7%、科学研究開発が28.1%、マーケティングが26.2%、メディア・コミュニケーションが22.4%、銀行・金融が16.9%、アート・エンターテインメントが16.3%と、技術職以外にも二桁が並びます。

一方で、現場に立つことが前提の職種は事情が違います。ビューティー・ウェルネス、介護、清掃、運転の各分野はいずれもAI言及率が1%未満でした。AIが求人票に入り込む速度は、その仕事がどれだけ画面の前で完結するかにほぼ比例しています。EC事業者の業務でいえば、商品登録、広告運用、受注処理、問い合わせ対応は、まさに画面の前で完結する側の仕事です。

求人指数341対52という分岐が意味すること

数字が際立つのは、同じ職種のなかで指数が逆方向に動いている点です。マーケティングではAI求人の指数が341まで上昇したのに対し、その職種の求人全体の指数は52まで低下しました。マネジメント職も344対78とほぼ同じ形です。分岐が最も鋭いのは人事、経理、マネジメント、マーケティング、プロジェクトマネジメント、銀行・金融の6分野だとされています。

背景には英国の労働市場全体の冷え込みがあります。求人数は2026年の年初から11%減り、パンデミック前の水準を32%下回っています。Indeedはこの状態を二速の労働市場と表現しました。全体の量は弱いのに、AIスキルが確認できる求人だけは伸びているという意味です。

マーケティングやマネジメント職でAI求人と全体求人が逆方向に動いていることを示すIndeedのグラフ

求職者側も同じ方向を向いています。AI関連職の検索数はChatGPT登場以降で7倍に増え、「AI」と組み合わせて検索される語は「Engineer」が6.4%、「Trainer」が5.6%で上位でした。ただし新卒の求人はパンデミック以降で最も低い季節水準にあり、若年層の失業率は10年以上ぶりの高さです。入口が狭まっているところに、AIを扱えるかどうかの選別が重なっています。なお、この傾向は英国限定ではなく、Indeedは米国と欧州でも同種の広がりを確認しています。

日本のEC事業者が今日から考えるべき3つの論点

第一に、職種名で募集するのをやめて、業務単位で要件を書き換えることです。「EC運営スタッフ募集」という書き方では、AIを前提に業務を組める人かどうかが判別できません。楽天市場のRMSで商品情報を一括更新できるか、Amazonセラーセントラルのレポートを読んで在庫と広告の判断に落とせるか、Shopifyの管理画面から問い合わせの一次対応を設計できるか。求める作業を具体的に書いたほうが、結果として応募者の質が揃います。業務の接続をどう設計するかはMCPコネクタの業務別の選び方でも整理しています。

第二に、減っているのは求人数であって仕事量ではないという点です。英国のデータが示しているのは「マーケティングの仕事が消えた」ことではなく、「マーケティングの求人を出す前に、いまいる人にAIを持たせる会社が増えた」という順序です。EC事業者にとっては、増員の稟議を書く前に既存メンバーの役割を定義し直すほうが先になります。この論点はEC顧客対応の自動化で2027年に消える職種と生まれる職種や、Amazon在庫管理の人を減らすべきかでも扱っています。

第三に、若手採用を絞ると3年後の中核人材が育たないという点です。新卒求人が最も低い季節水準にあり、若年失業率が10年以上ぶりの高さという組み合わせは、企業側が育成のコストを外部に押し出している状態を示します。AIで初級業務が減るほど、経験を積む場所も同時に減ります。中小規模のEC事業者ほど、育成の経路を自社で設計しないと、数年後に判断のできる人が社内にいなくなります。大企業が同じ判断を先に始めた例はGMがIT職をAI人材に置換した件でも取り上げました。

初動としてやること

最初にやるべきは、自社が過去1年に出した求人票を並べ、AIやツール名に一言も触れていないものが何割あるかを数えることです。次に、商品登録・広告運用・受注処理・問い合わせ対応の4業務について、いま何時間かかっていて、そのうち何割がAIに任せられそうかを、担当者本人に書き出してもらいます。ここまでは1週間あれば終わります。

そのうえで、募集要件を作業ベースで書き直し、既存メンバーには「AIを使ってどの業務の時間を何割減らすか」を半期の目標として持たせます。最後に、若手が経験を積む枠を意図的に1つ残してください。効率だけで判断すると真っ先に消える枠ですが、そこを消した会社から順に、数年後の判断力が細ります。

まとめ

英国の求人の9.4%がAIに言及し、マーケティング職ではAI求人指数341に対して全体指数52という逆方向の動きが出ています。日本のEC事業者にとっての示唆は、増員よりも先に業務の書き換えが来るということです。求人票を作業ベースに直し、既存メンバーの役割を定義し直し、若手の育成枠を意図的に残す。この3つを同時に回すのが現実的な進め方です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: The Decoder


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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