Amazonが希少本を大量購入し、背表紙を裁断してAI学習用にスキャンしていたことが判明しました。
2026年8月17日、TechCrunchが報じた内容です。追跡装置を仕込んだ希少本が、最終的にラスベガスのAmazon施設に到着したという調査報道が発端でした。オンライン書店として創業した企業が、いま本を「壊して」AIの餌にしている構図です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者向けに3つの論点として解説します。
何が起きたか:AirTagが辿り着いた1,000冊の行き先
判明したのは、Amazonが希少本を商業ルートで買い集め、背を裁断してスキャンしているという事実です。調査を行った404 Mediaは、AI企業に買い取られたと疑われる希少本の1冊に追跡装置を仕込み、その荷物を追いかけました。その1冊は1,000冊規模の出荷ロットの一部で、たどり着いたのはラスベガスにあるAmazonの倉庫「LAS8」でした。
同倉庫の一区画は「VGT3」と呼ばれ、入口には本を掴んだ恐竜のロゴが掲げられていると報じられています。そこで働く従業員によれば、業務内容は大量の紙の書籍を受け取り、スキャンを速く回すために製本を切り落とすことだといいます。Amazonは404 Mediaに対し「顧客が利用する製品とサービスを改善するため、商業的な流通経路を通じて書籍を購入している」と回答しました。購入自体は合法的な取引だという立て付けです。
なぜわざわざ紙なのか。理由は明快で、インターネット上のテキストは各社がすでに学習し尽くしているからです。絶版本や、そもそもネット上に存在しない希少本は、残された数少ない未開拓の学習データになります。さらに2022年より前に出版された本は、生成AIが書いた文章が混ざる余地がありません。AI生成テキストを大量に食べ続けたモデルの出力品質が劣化する「モデル崩壊」を避けるうえで、古い紙の本は保険として機能します。
日本のEC事業者にとっての論点:調達の正しさが競争条件になった
この一件が示すのは、AI学習データの世界で「どう手に入れたか」が最大の争点になったという事実です。
比較対象として分かりやすいのが、2026年7月20日に最終承認されたAnthropicの15億ドル和解です。約50万点の著作物に対し1点あたり3,000ドルを支払う内容で、米国著作権法史上最大級とされています。この訴訟で裁判所は「著作物でAIモデルを学習させること自体はフェアユースにあたる」と判断した一方、海賊版サイトから入手した点は違法だと切り分けました。学習は問題ない、盗んだ調達は問題だという線引きです。

Amazonが「商業的な流通経路で購入している」と強調するのは、まさにこの線を意識しているからだと読めます。買った本を裁断してスキャンする行為は、絵面としては痛々しいものの、法的にはAnthropicが叩かれた海賊版ダウンロードとは別物です。なお、この整理は米国の一地裁判断にとどまり、日本の著作権法(第30条の4など)での扱いは別途検討が必要な領域です。判例として確定したわけではない点は要確認としておきます。
日本のEC事業者にとって直接効いてくるのは、自社が持つテキスト資産の位置づけです。商品説明文、レビュー、店舗ブログ、FAQ、これらはすでにネット上にあるため、各社のモデルが学習し尽くした側に入っています。Amazonが紙の本まで取りに行っているのは、裏を返せば「ネット上のありふれたテキストにはもう価値がない」という宣告でもあります。当社が以前解説したAmazonとTwitchのAI学習デフォルトONの件と合わせて読むと、プラットフォーム側の姿勢が一貫していることが分かります。
いま取るべき初動:3つの論点
第一に、自社コンテンツの権利表記と利用条件を棚卸しすることです。楽天市場やAmazon.co.jpに預けている商品ページのテキストや画像が、各モールの規約上どこまでAI学習に使われうるのかを確認しておきます。モールに出している以上、完全に止めることは現実的ではありませんが、自社ドメインのオウンドメディアやメルマガについては、robots.txtやAIクローラの扱いを能動的に決められます。
第二に、生成AIで作った商品説明文の扱いを社内で統一することです。2022年以降のAI生成テキストは学習データとしての価値が低いと市場が判断し始めています。同じ理屈で、AI丸投げの説明文だらけの店舗は検索側からも「薄いページの集合」と見なされるリスクがあります。当社が解説したAI生成本によるAmazonカタログの希薄化と同じ構図です。一次情報、つまり自社の検品基準、実際の使用感、返品理由の統計といった、社内にしかない事実を必ず1段落は混ぜてください。
第三に、古書・書籍を扱う事業者は仕入れ相場の変化を織り込むことです。AI企業が学習データ目的で希少本をロット単位で買い集めるようになれば、絶版本や専門書の相場は上振れします。せどりや古書販売を手掛けている場合、これまでのコレクター需要とは別軸の買い手が現れたことになります。逆に、裁断されて市場から消える冊数が増えれば、中長期では現物の希少性が上がる可能性もあります。
まとめ
Amazonが希少本を裁断してAI学習に回している件は、単なる炎上ネタではありません。AI学習データの争点が「学習してよいか」から「どう調達したか」に移り、ネット上の平凡なテキストの価値が下がったことを示す事例です。日本のEC事業者は、コンテンツの権利条件を棚卸ししつつ、社内にしかない一次情報を商品ページに残す方向へ舵を切るのが現実的な打ち手になります。
参考文献
- TechCrunch: Amazon, once an online bookseller, is destroying rare books to train AI models
- 404 Media: We Tracked a Shipment of Rare Books. It Ended at an Amazon AI Training Facility
- TechCrunch: Anthropic’s landmark $1.5B copyright settlement is approved
- TechCrunch: Google faces another AI training lawsuit from major publishers
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。