職場のAI言及が240%増、53%が否定評価|EC現場3つの論点

職場AIへの言及が240%増える一方、53%が否定評価に反転しました。強制利用や顧客体験の毀損という不満の中身と、日本のEC事業者が導入初日に決めるべき3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

職場のAIに対する従業員の評価は、2026年に肯定43%・否定53%へ反転しました。

従業員クチコミサイトのGlassdoorに投稿された企業レビューを分析したところ、AIへの言及が1年で240%増えた一方、否定的な文脈での言及が53%に達したことが明らかになりました。2019年には81%が肯定的な文脈だけで語られていたので、7年で評価が完全に裏返った形です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。EC事業者にとってこの数字は、AIを入れるかどうかではなく、現場にどう入れるかで成果が割れるという警告として読めます。

AIによる企業変革をテーマにしたイベント会場を準備するスタッフ

職場AIへの評価はなぜ53%が否定に変わったのか

結論から書くと、AIそのものではなく、AIの入れ方への不満が積み上がったからです。Allwork.Spaceが伝えたGlassdoorの分析によると、2025年5月から2026年5月までの1年でレビュー内のAI言及は240%増加し、そのうち53%が否定的な文脈のみ、肯定的な文脈のみは43%でした。

否定の理由は一様ではありません。最も多いのが職を奪われる不安で、詳細な否定コメントの20%を占めます。しかしそれに次ぐのが、AIツールの利用を会社から強制されることへの批判で14%、AIが本業から会社の注意をそらしている、あるいは顧客体験を損ねているという指摘が13%、社内監視や社内コミュニケーションへのAI適用への反発が10%と続きます。つまり半数近くは、失業不安ではなく運用設計への不満です。

立場による差もはっきりしています。経営層はAI言及の67%が肯定でした。一方で保険の損害査定担当は98%が否定、ライター、記者、会計担当、カスタマーサービス担当、デザイナー、IT担当も批判的な層に並びます。業種別では芸術分野が89%否定、非営利85%、保険81%、通信80%、運輸・物流79%という順です。会社規模でも差が出ており、従業員200人以下の企業は否定51%にとどまるのに対し、1万人超の企業では67%が否定でした。

日本のEC事業者にとっての論点は「顧客接点」と「強制」

EC事業者がこの調査で真っ先に見るべきなのは、批判的な職種の並びです。カスタマーサービス担当、ライター、デザイナーは、EC運営でいえば問い合わせ対応、商品説明文の作成、バナーや商品ページの制作を担う人たちで、まさにAIツールが最初に入る領域と重なります。楽天市場やAmazon、Shopifyの運営現場で「まずCSの一次返信からAIに」と考えるのは自然な発想ですが、その職種こそ抵抗が強いという事実は、導入計画の前提を変えます。

もうひとつ重い数字が、13%が挙げた「顧客体験を損ねている」という批判です。ECは顧客体験そのものが商品である以上、現場が「これはお客様のためになっていない」と感じたまま運用されるAIは、レビュー評価やリピート率という形で跳ね返ります。運輸・物流分野で79%が否定という結果も、物流委託先との連携でAI起点の指示を増やす場面では覚えておきたい数字です。

一方で、中小規模のEC事業者にとっては追い風といえる材料もあります。従業員200人以下の企業では否定が51%と、1万人超企業の67%より16ポイント低い水準です。少人数で意思決定が近く、導入の理由と使い方を全員で共有できる組織のほうが、AIへの納得感を保ちやすいと読めます。すでにAI導入支援サービスの選び方についてはEC向けAI導入支援サービスの比較記事でも整理していますが、ツール選定より前に「誰がどう使うか」を決められるかどうかが、規模による差の正体だと考えられます。

現場の納得感を保つための初動アクション

最初にやるべきは、AIの利用を義務から選択に置き換えることです。強制への批判が14%を占めた事実は、利用率をKPIに置く運用の危うさを示しています。商品説明文の作成でも問い合わせ返信でも、AIを使った場合と使わない場合を担当者が選べる状態にしたうえで、処理時間や品質を比較するほうが、結果的に定着します。

次に、評価指標をAI利用率ではなく業務成果に戻すことです。IT企業のGoToが世界2,500人を対象に行った調査をHR Diveが報じたところでは、60%の従業員が生産性向上のためAI利用を圧力として感じており、43%は品質が低いと分かっていてもAI生成コンテンツを使ったと答えています。商品ページの文章がその「品質が低いと分かっていて使われたもの」になっていないかは、公開前に人の目で確かめる工程を残すしかありません。

三つ目は、ミスが起きたときの責任の所在を先に決めることです。同じ調査では83%がAIのミスの責任を負わされることを懸念しており、IT責任者の4人に1人はAI起因のミスがすでに顧客や業績に影響したと答えています。価格の誤記載、在庫数の誤更新、返品可否の誤案内といったECで起こりうる事故について、AIの出力をそのまま反映してよい範囲と、人の承認を挟む範囲を文書で線引きしておくことをおすすめします。あわせて、AI活用の効果を数字で見える化する運用はAIの作業内容を可視化する取り組みの記事も参考になります。

なお今回のGlassdoorの分析は米国の従業員レビューが中心であり、日本のEC現場にそのまま当てはまる比率かどうかは要確認です。ただし、強制されると反発する、顧客のためにならないと感じると冷めるという反応そのものは、国を問わず起こると考えるのが自然です。

まとめ

職場AIへの評価は、肯定81%だった2019年から、否定53%の2026年へ反転しました。否定の内訳を見ると、失業不安が20%である一方、強制利用や顧客体験の毀損といった運用上の不満が合計で27%を占めます。EC事業者がとるべきスタンスは、AI導入の是非を議論することではなく、選択制にする、成果で測る、責任範囲を先に決めるという3点を導入初日から設計に組み込むことです。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Allwork.Space


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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