米Targetが新設した美容売場に、韓国コスメが大挙して並び始めました。Modern Retailが2026年9月21日に報じたところによると、Targetが同月立ち上げた「Target Beauty Studio」は90ブランド・1,600点超で構成され、その多くがTargetにとって新規取扱のブランドです。注目すべきは、これまで米国ではSephoraやUltaといった専門店が主戦場だった韓国コスメが、大手量販チェーンの棚へ本格的に移り始めた点にあります。日本のEC事業者にとっても、これは「どのチャネルで売るか」の前提が動き始めた合図です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
Target Beauty Studioとは何か|90ブランド・1,600点の新売場
Target Beauty Studioとは、米Targetが2026年9月に立ち上げた自社運営の美容売場のことです。90ブランド・1,600点超を扱い、従来店内にあったUlta Beautyのショップインショップを置き換える形で展開されています。
韓国コスメの比重は明確に上がっています。Targetは2026年に入ってから韓国コスメの品揃えを4倍に広げ、スキンケア・メイク・ヘアケアで150点超の新商品と10ブランド超を追加したとしています。Beauty Studioの立ち上げにあたっては「K-beauty cosmetics favorites」として6ブランドを投入し、そのうち5ブランドはTargetにとって新規でした。具体名としてはAmuse、Kaja、Rom&nd、Dr. Melaxin、Purito Seoul、Sungboon Editorが挙がっています。さらにModern Retailは、明示されている以外にも韓国系のオーナーや創業者を持つブランドが十数社程度含まれていると報じており、ヘアケアのAromatica、スキンケアのVoeshなどが該当します。
この動きはTargetだけではありません。Ultaは前年に13の韓国コスメブランドを追加したとGlossyが報じ、Sephoraは韓国の大手美容小売Olive Youngと組んで19ブランドを米国の店舗とオンラインで展開したとThe Strategistが2026年8月に伝えています。専門店が深掘りし、量販店が裾野を広げるという二正面の拡大が同時に進んでいる状況です。
日本のEC事業者が読むべき3つの論点
この一件から日本のEC事業者が持ち帰るべき論点は3つあります。結論から言えば、独占契約・オンライン実績・オペレーション体制の3点が、次のチャネルを取れるかどうかを分けます。
第一に、独占契約を持たないことがそのまま参入の武器になったという点です。Purito SeoulとAromaticaの2ブランドがBeauty Studioに入れた理由のひとつは、米国でSephoraやUltaとの独占契約を結んでいなかったことだと、両ブランドの米国流通を担うMuskat BeautyのDaniella Jungが説明しています。日本でも、Qoo10や楽天市場で「独占」「先行販売」を条件に好条件を引き出す交渉は珍しくありませんが、それが次のチャネルへ移る際のコストになる場合があります。独占の見返りが、将来の販路の選択肢に見合うかどうかを、契約のたびに計算しておく必要があります。
第二に、オンラインの販売実績が実店舗バイヤーの入口になっている点です。Dr. Melaxinについては、オンラインの販売数値を見たTarget側から声がかかったと同社のJinwoo (James) Kimが述べています。日本に置き換えれば、楽天市場のランキング実績やAmazonのベストセラー順位は、単なる売上の結果ではなく、卸・量販・百貨店への提案資料そのものだということです。EC単体の損益だけで施策を評価していると、この副次的な価値を取りこぼします。
第三に、拡販の成否を決めるのは話題性ではなく運用だという点です。Jungは「在庫管理と価格管理の能力、そして市場に合ったマーケティング戦略が必要だ」と注意を促しています(Modern Retail)。SNSでの話題化は入口にすぎず、欠品と価格崩れを起こさない体制がなければ、チャネルは増やすほど損益が悪化します。
初動として何をするか|2年でチャネルは動く
Jungは、多くの美容ブランドが2年以内に新しい小売チャネルへ入っていくだろうという見方を示しています。同じ速度感が日本市場でも起きると仮定するなら、今から着手できることは3つあります。
まず、現在結んでいるモール・小売との独占条項を棚卸しすることです。契約の範囲が商品単位なのかブランド単位なのか、期間はいつまでか、解除条件は何かを一覧にしておくだけで、次のチャネルの話が来たときの判断速度が変わります。
次に、自社のオンライン実績を提案できる形に整えることです。カテゴリ内順位、レビュー件数と平均評価、リピート率、主要SKUの月次推移を1枚にまとめておけば、バイヤーとの初回面談の質が上がります。TargetがDr. Melaxinに声をかけた理由がオンラインの数値だったという事実は、その資料が営業ツールとして実際に機能することを示しています。
最後に、在庫と価格のガバナンスです。複数チャネルで同一SKUを扱うなら、チャネル横断の在庫引当ルールと、セール時の価格下限を先に決めておくことが前提になります。ここが曖昧なまま販路を増やすと、モール側のポイント施策と実店舗の売価が衝突し、どの取引先からも信用を失うことになります。
なお、Beauty Studioの品揃えには別の論点も残っています。90ブランドのうち黒人のオーナーや創業者を持つブランドはBriogeoとGlamazon Beautyの2つしか確認できなかったとModern Retailは報じており、品揃えの多様性という観点では課題が指摘されています。棚の構成そのものがブランドイメージに直結するという意味では、これは日本のモール特集や自社ECの企画ページにも同じ形で当てはまる論点です。
まとめ
米Targetの新売場は、韓国コスメが専門店から量販店へ広がる転換点を可視化しました。日本のEC事業者が押さえるべきは、独占契約の再点検、オンライン実績の資料化、在庫と価格の統制という3点です。ECは売上を立てる最終地点であると同時に、次の販路を開くための実績づくりの場でもあります。
参考文献
- Modern Retail「Target gets K-beauty brands to think beyond Sephora, Ulta with new Beauty Studio」
- Modern Retail「New brands flock to Target’s post-Ulta beauty section」
- Glossy「Ulta doubles down on K-beauty with 13 new brands」
- The Strategist「Sephora and Olive Young K-Beauty Edit」
- WWD「Sephora and Memebox Collab for K-Beauty Line Kaja」
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。