AsanaのClaude搭載AI同僚|育てる人は1〜2人、EC運営3論点

AsanaはClaudeで動くAIエージェントを同僚として運用し、記憶を編集できる人を1〜2人に絞っています。役割・権限・共有メモリの設計から、楽天やShopifyを運営するEC事業者が学べる3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

AsanaはClaudeで動くAIエージェントを同僚として運用しています。

Anthropicは2026年9月29日、公式ブログで、プロジェクト管理ツールAsanaの最高製品責任者(CPO)Arnab Boseへのインタビューを公開しました。Asanaは社内でClaudeを標準のAIツールにし、「AI Teammates」と呼ぶAIエージェントに役割・権限・共有メモリを持たせ、人間と同じタスクの上で働かせています。目を引くのは、エージェントの記憶を書き換えられる人を限定している点で、Boseは設定を担う専門家はチームに1〜2人いれば足りると話しています。受注処理や問い合わせ対応をAIに任せ始めた日本のEC事業者にとって、「誰がAIを育てるのか」を決める参考になるニュースです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

AsanaのAIエージェント運用を紹介するClaude公式ブログの図版

AsanaのAI Teammatesで何が起きたか

AI Teammatesとは、Asanaのプロジェクトやタスクに同僚のように割り当てて使うAIエージェントのことです。今回のブログは、Anthropicが続けている「人間とエージェントのチームづくり」シリーズの3本目で、1本目の総論、2本目のSlack編に続く事例紹介です。

Asanaのエージェントは、コンテンツライター、インサイトアナリスト、プロジェクトマネージャー、依頼受付担当、キャンペーン分析担当といった役割単位で作られています。各エージェントにはプロフィールページがあり、名前と目的、使える人、管理者、指示、スキル、連携先、権限を一覧できます。アクセス範囲はプロジェクト単位や文書単位で絞ることができ、Asanaによると、エージェントが実際に触れられる範囲は呼び出した人の権限を超えないよう制限されています。

共有メモリの扱いも特徴的です。タスクへのフィードバックは誰でも返せますが、それを恒久的な記憶として保存・取り消し・削除できるのは管理者と編集者だけです。文章を書くエージェントなら、会社の声とトーンに責任を持つ広報チームが編集者になり、Bose本人でも下書きには使えるものの、挙動そのものは変えられないといいます。

社内の活用例は3つ紹介されています。1つ目は営業・カスタマーサクセス向けの製品Q&Aで、Slackに投稿された質問をAsanaのタスクに変換し、承認済みの回答があればエージェントが出典リンク付きで返し、回答がなければ製品チームの受付プロジェクトに課題として登録します。同じ質問が繰り返されると、研修資料を更新するタスクまで起票します。2つ目は更新リスクのある顧客の動向を毎朝まとめる「At-Risk Renewal」で、前向きな動き、後ろ向きな動き、推奨フォローの3区分でダイジェストを作り、経営陣へ自動配信します。3つ目はエンジニア組織向け製品Command by Asanaでの開発サイクル計画です。Boseは「コード生成はもはやボトルネックではない」と語り、課題は計画と意思決定に移ったと説明しています。なお、Anthropicの導入事例ページでも、AsanaはClaude Managed Agentsの利用企業として紹介されています。

日本のEC事業者にとっての3つの論点

このニュースの価値は新機能ではなく、AIエージェントを「人と同じ組織図に載せる」運用設計にあります。

1つ目の論点は、エージェントに新人と同じ職務記述書を渡すことです。Asanaは、エージェントを作る前に目的・指示・担当業務を、新入社員の最初の四半期の計画のように書き出すよう勧めています。EC運営に置き換えると、「問い合わせ一次返信担当」「商品登録チェック担当」「レビュー集計担当」のように役割を分け、それぞれが見てよいデータと実行してよい操作を決める作業です。楽天RMSのR-LoginやShopifyのスタッフ権限で人ごとに権限を分けているのと同じ粒度で、エージェントの権限も切ることが出発点になります。

2つ目は、AIを「使う人」と「育てる人」を分けることです。商品説明文やメルマガを書くエージェントなら、ブランドトーンに責任を持つ店長やブランド担当者だけが記憶を編集できるようにし、他のスタッフのフィードバックはそのタスク限りにとどめます。パート・アルバイトを含む少人数の店舗ほど、誰かの一言でAIの口調や判断基準が変わってしまう事故を防ぐ意味は大きくなります。

3つ目は、AIの仕事を全員が見える場所に置くことです。Asanaの製品Q&Aの仕組みは、ECの問い合わせ対応にそのまま応用できます。同じ質問が何度も届くなら、それは商品ページの説明不足のサインです。エージェントが回答するだけでなく、繰り返し質問を「商品ページ改善タスク」として起票する流れを作れば、問い合わせ件数そのものを減らせます。個人のチャット画面で完結させず、SlackやChatworkなどチーム全員が見える場所にAIとのやり取りを残すことが前提です。

小売での成果として、Asanaは2026年6月の発表で、H&MグループのファッションブランドCOSがAI StudioとAI Teammatesを使い、キャンペーン準備時間を90%削減、1キャンペーンあたりの制作物を1,000点超に倍増、年間約3,000時間の手作業をなくしたと紹介しています。いずれもAsana側の発表値である点には注意が必要です。

今後の展望と初動アクション

AIエージェント導入の論点は「どのツールを使うか」から「誰がどう管理するか」へ移りつつあります。Anthropicが9月28日にNVIDIAと発表したAIエージェント統制の仕組みも同じ流れにあり、権限・記録・育成の設計は、今後ツール選びより先に問われるはずです。

EC事業者が今すぐ取り組めることは3つあります。まず、AIに任せている業務を書き出し、担当業務と触れてよいデータを1枚にまとめます。次に、AIの指示文や記憶を変更できる担当者を1〜2人に決め、他のメンバーはフィードバックだけを返すルールにします。最後に、AIの出力とやり取りをチーム全員が見られる場所に残し、繰り返し発生する質問やミスを改善タスクに変えます。Asanaが毎朝のダイジェストを3区分の形式に固定しているように、AIのレポート形式を先に決めておくと、回を重ねるごとに精度が上がる運用にしやすくなります。

Claude Managed Agentsを使ったEC業務エージェントの作り方はこちらの解説記事、Slack上でClaudeをチームで使う方法は関連記事で紹介しています。

まとめ

AsanaはClaudeで動くAIエージェントに役割・権限・共有メモリを与え、記憶を編集できる人を1〜2人の専門家に絞って運用しています。EC事業者にとっての学びは、AIを便利なツールではなく「権限と育成担当を持つスタッフ」として扱うことです。役割の定義、育成担当の限定、仕事の見える化の3点から始めるのが現実的です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Claude by Anthropic


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ