2026年10月、買い物や予約を代行するAIエージェントが、Amazonなど複数のサイトで入場を断られる事例が相次いでいます。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。AIエージェントとは、ユーザーに代わって検索から購入、予約までを実行するAIのことです。TechCrunchは2026年10月6日、こうしたエージェントがウェブサイト側にブロックされる問題を報じました。自社ECをAIに見つけてもらう時代に、AIの来店をどう扱うかは、楽天市場やAmazon、Shopifyの運営者にとって無視できない論点です。
何が起きたか:AmazonがMetaのMuseを遮断、Walmartでは購入が失敗
TechCrunchによると、Amazonは最近、Metaの個人向けAIエージェントMuseを自社の小売サイトからブロックし始めました。これによりMuseは、Amazonの商品カタログを閲覧したり購入したりできなくなっています。
問題はAmazonだけではありません。TechCrunchは、MuseがWalmartのサイトで購入を完了できなかったという複数の苦情を確認したとしています。ただしWalmartの広報担当者は、これは意図的なものではないと説明しました。WalmartはMetaと提携しており、9月のMeta Connectで発表されています。原因として挙げられているのは、訪問者が人間かどうかを確かめるためにクリックさせるボタンです。エージェントがこのチェックを通過できないと、そこで弾かれてしまいます。
SNSでは、Yelp、eBay、Zillow、Pizza Hut、Adidas、複数の航空会社などでも同様のブロックが報告されています。もっとも、これらはユーザーの投稿に基づく情報で、各社の公式な認定ではありません。TechCrunchが確認できた各社のコメントは次のとおりです。eBayは、第三者のショッピングエージェントによる購入完了を一律に禁じているのではなく、不正なエージェントや、スクレイピング、モデル学習といった行為を制限していると説明しました。Yelpは、データライセンスプログラムを通じて対価を払っていない限り、非人間のトラフィックを許可していないとしています。Deltaは、第三者のAIエージェントとの提携や統合は現時点でなく、評価を続けていると述べました。
なぜ起きるのか:従来のボット対策と、Cloudflareの設定変更
背景には、スパムや不正アクセスを防ぐ従来のボット対策が、ユーザーの代理で動く善意のエージェントを見分けられないという構造があります。TechCrunchも、現在のボット対策技術はエージェント優先のウェブに最適ではない可能性があると指摘しています。
もう一つの注目点がCDN(コンテンツ配信網)大手のCloudflareです。同社は2026年9月15日から、AI学習だけを拒否できる「Disallow AI Training」を設定に加えました。既存の「Block AI」設定のサイトは、この新設定へ自動で移行されます。広告収益のあるサイトの新規ドメインには、この設定が推奨されます。一部のユーザーは、こうした変更がMuseの通信に影響しているのではと疑っていますが、TechCrunchがCloudflareに尋ねたところ、共有できる具体的なデータはないとの回答でした。つまり因果関係は現時点で確認されておらず、要確認です。
業界の対応:エージェント間通信の標準づくり
この状況を受け、Meta、Walmart、Stripe、Sierra、Genesys、Rocket、NiCE、Decagonなどが、事業者とエージェントがやり取りするためのオープンな標準の策定を始めました。Metaは発表で、オンラインコマース向けのエージェント間通信に焦点を当てるとしています。善意のボットと悪意のボットを切り分け、事業者に予測可能な制御を与えることが狙いです。Metaは「個人エージェントを断ることは、その背後にいる顧客を断ることを意味する」という趣旨の声明も出しています。
日本のEC事業者にとっての論点
日本でMuseのようなエージェントがどこまで使われるかは、現時点で確認できていません(要確認)。それでも、論点は日本のECにそのまま当てはまります。自社サイトでボット対策やCDNのセキュリティ機能を使っている場合、将来の買い物代行エージェントを誤って遮断してしまう可能性があるからです。逆に、商品情報を無断で大量に取得されるリスクも同時にあります。
楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングに出店している事業者は、モール側の方針に従う立場です。一方、Shopifyなどで自社ECを運営している事業者は、遮断するのか、受け入れるのかを自分で決められます。Walmartのように、パートナーとして受け入れる道を選ぶ企業もあれば、Deltaのように慎重に評価を続ける企業もあります。
今後の展望と初動アクション
今後は、エージェントを正規のパートナーとして登録し、アクセスを許可する仕組みが先行するとみられます。TechCrunchも、特定ブランドとの提携と新しい標準の両方を進めるMetaのやり方が筋のよい方法に見えると評価しています。
自社ECの運営者が今すぐできることは三つあります。第一に、自社サイトのボット対策やCloudflareなどの設定が、現在どう動いているかを確認してください。第二に、問い合わせフォームやアクセスログで、不自然に拒否されている通信がないかを点検してください。第三に、自社の商品データをAIに読んでもらいたいのか、制限したいのかという方針を、社内で言葉にしておいてください。
まとめ
AIエージェントの遮断は、意図的なものと誤検知が混在し、業界はようやく標準づくりを始めた段階です。日本のEC事業者は、AIを一律に締め出すのか、選んで迎え入れるのかを、早めに自社の方針として決めておくことが大切です。
参考文献
- TechCrunch: The next hurdle for AI agents: getting websites to let them in
- Cloudflare: Accountable mixed-use AI crawlers
- TechCrunch: Everything new coming to Meta’s AI agent Muse
- Meta: A new way for businesses and personal agents to work together
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。