Amazon Adsは2026年9月29日、広告の買い分けをAIで一本化する新製品群を発表しました。
Amazon広告の年次カンファレンス「unBoxed 2026」がサンフランシスコで開かれ、スポンサー広告・ディスプレイ・動画・ストリーミングTVを1つのキャンペーンにまとめる「Full-Funnel Campaigns」や、運用全体をつなぐ「Amazon Ads Agent」が発表されました。これまで広告タイプごとに予算と入札を分けて管理していた運用が、AIに配分を任せる形へ大きく寄っていきます。本記事では、発表内容を整理したうえで、日本でAmazon広告を運用するEC事業者が今から準備すべき論点を3つに絞って解説します。
unBoxed 2026でAmazon広告は何を発表したか
結論から言うと、今回の発表の核は「広告の買い方の壁をなくし、配分をAIに寄せる」ことです。Modern Retailの報道によると、主な発表は次の3つです。
1つ目は「Amazon Ads Agent」です。広告のワークフロー全体をつなぐ統合的な基盤として位置づけられ、キャンペーン作成から最適化までをエージェントが支援する方向性が示されました。
2つ目は「Full-Funnel Campaigns」です。スポンサー広告、ディスプレイ、動画、ストリーミングTVを単一のキャンペーンで扱い、どのチャネルにどれだけ配分するかはAmazon側が最適化します。認知から購入までを1本で回せる一方、チャネルやオーディエンスを細かく指定する自由度は下がります。
3つ目は「DVA+」です。Amazon DSPを中心とするプログラマティック購入と、スポンサーディスプレイ、スポンサーTVをまとめ、シンプルモードとアドバンストモードを選べる設計になっています。
Amazon AdsのVPであるKelly MacLeanは、狙いを「プログラマティック広告の力をすべての広告主に届けること」と説明し、運用思想を「人が主導し、AIが支える」と表現しました。専任の運用チームを持たない中小の出品者でも、上位ファネルの広告に手を出しやすくする意図が読み取れます。
Amazon広告のAI一体運用で日本のEC事業者が押さえるべき論点
日本の出品者にとっての論点は、便利さと引き換えに「配分の中身が見えにくくなる」ことをどう管理するかです。現時点でこれらの新製品がAmazon.co.jpでいつ提供されるかは公表されておらず要確認ですが、Amazon広告の機能は米国先行で数か月〜1年程度遅れて日本に入るケースが多いため、先に考え方を整えておく価値があります。
論点の1つ目は透明性です。Full-Funnel Campaignsでは、どのオーディエンスに、どのチャネルで、いくらで入札したのかを広告主が細かく決めません。記事内でもVPのAmit Bhattacharyyaが、オーディエンス面での透明性をどう高めるかを検討中だと述べています。スポンサープロダクト広告で検索語句レポートを見ながら除外キーワードを積み上げてきた運用者ほど、判断材料が減る感覚を持つはずです。
論点の2つ目は規制リスクです。同報道によると、2026年8月には米連邦取引委員会(FTC)と22州の司法長官が、Amazonが広告に不透明な上乗せ料金を課していたとして提訴しています。係争中の事案であり事実認定はこれからですが、「配分をAIに任せるほど、料金の妥当性を広告主側で検証しにくくなる」という構造的な懸念は日本の出品者にも共通します。
論点の3つ目は評価軸です。上位ファネル(動画・ストリーミングTV)まで1本のキャンペーンで回すと、ACoS(広告費売上高比率)だけで良し悪しを判断すると誤ります。認知施策は直接売上に表れにくいため、TACoS(総売上に対する広告費比率)や新規顧客比率、ブランド検索数の推移で見る必要があります。
今後の展望とAmazon出品者の初動アクション
Amazon広告のAI化は止まらないため、「任せる部分」と「自分で握る部分」を今のうちに線引きしておくのが最善の初動です。具体的には次の4点を推奨します。
まず、現行のスポンサープロダクト広告で、検索語句レポートと除外キーワードの資産を棚卸ししておくことです。自動化が進んだ後も、自社で蓄積した「売れる語・売れない語」のリストは、AIの配分結果を検証する物差しになります。
次に、評価指標をACoS単体からTACoSと新規顧客比率を加えた複数指標に切り替えておくことです。上位ファネルに予算が流れたときに「広告が効かなくなった」と誤判断するのを防げます。
3つ目は、日本で新機能が出たら小さな予算で並走テストをすることです。いきなり全予算をFull-Funnel型に移さず、既存キャンペーンと同じ商品群で比較期間を設ければ、AI配分の実力を自社データで確かめられます。
4つ目は、楽天市場のRPP広告やYahoo!ショッピングのアイテムマッチなど、他モールの広告費も含めた全体予算の中でAmazon広告の位置づけを見直すことです。1つのモールの広告がブラックボックス化するほど、モール横断で費用対効果を比較できる社内の集計表が重要になります。
まとめ
unBoxed 2026で、Amazon広告は「広告タイプ別の運用」から「AIによる一体運用」へ舵を切りました。中小の出品者にとっては上位ファネル広告の敷居が下がる好機ですが、配分の透明性と評価指標の設計は自社で握り続ける必要があります。日本上陸前の今こそ、検索語句の資産整理と多指標での評価体制づくりを進めておきましょう。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。