米国の就業者の20%が、以前は同僚や外注先に頼んでいた業務をAIに任せるようになりました。
調査主体は非営利のAI研究機関 Epoch AI と調査会社 Ipsos で、2026年7月10日から19日にかけて米国の就業者1,106人に聞いた結果です。注目すべきは「AIを使っているか」ではなく「人に頼んでいた仕事がAIに移ったか」を直接聞いている点で、置き換えが起きた業務の内訳まで数字で出ています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の視点で解説します。

AI業務委託の実態|10業務のうち代替が最多なのはデータ分析
調査の結論は、AIへの業務委託が特定職種ではなく10業務すべてに薄く広がっている、というものです。Epoch AI の報告によれば、「以前は同僚や外注先に任せていた業務のほぼ全部、または全部をAIが担うようになった」と答えた人は19.9%でした。
業務別の内訳を見ると、最も多いのがデータ分析で7.1%、次いで業務文書の読解が5.7%、記録管理が5.3%と続きます。一方で、その業務を担当している人のうちAIを何らかの形で使っている割合はもっと高く、記録管理の25%からシステム・ソフトウェア設計の57%まで幅があります。データ分析は46%、業務文書の読解は39%です。
つまり「AIを使っている人」は半数近くいるのに、「人の代わりにAIが丸ごとやっている」のは1割未満にとどまります。業務まるごとの自動化ではなく、業務のなかの一部がAIに移っている段階だと読めます。対象業務は米国労働省の職業データベース O*NET から、就業者数の多い知識労働を基準に選ばれています。
時短効果と手直し率|EC事業者が読むべき3つの論点
日本のEC現場にとって重要なのは、この調査が「AIに任せる範囲」と「実際に楽になったか」を分けて測っている点です。論点は3つあります。
第一に、時短効果はAIの担当範囲に比例します。AIが業務の一部だけを手伝った場合、時間が減ったと答えたのは37%でした。AIがほぼ全部または全部を担った場合は53%まで上がります。中途半端に一部だけ任せる運用では、期待した工数削減が出にくいということです。楽天RMSやAmazonセラーセントラルからCSVを落として売上分析する業務は、まさに「一部だけAI」になりがちな領域です。
第二に、逆に時間が増えるケースが一定数あります。AIが関与した業務の約6分の1で、以前より時間がかかったと報告されています。この割合は、AIが一部を担った場合と全部を担った場合でほぼ変わりません。AIを入れれば作業時間が下がる、という前提は現場では成立しないことがあります。
第三に、手直しの少なさです。AIが関与した業務の成果物のうち、そのまま使ったか軽微な修正で済んだものが66%(内訳は無修正5.8%、軽微な修正59.9%)でした。大きく作り直したのは4.7%です。裏を返せば、3分の1近くには相応の修正が入っているということで、商品説明文やレビュー返信のように誤りが売上と信用に直結する業務では、この修正工程を工程表に載せておく設計が要ります。
EC事業者の初動アクション|どの業務から任せるかの決め方
まず、自社の業務を「外注や他部署に頼んでいるもの」で棚卸しすることをおすすめします。この調査で代替が進んでいたデータ分析・文書読解・記録管理は、EC運営でいえば売上データの集計、モールからの通知やガイドライン改定の読み込み、在庫と受注の台帳管理にあたります。いずれも判断より作業の比重が高く、間違えても取り返しがつく業務です。
次に、任せる範囲を最初から広めに設計します。時短効果が53%まで伸びるのは業務のほぼ全部を任せたときなので、「下書きだけAI」で止めると効果が出にくくなります。工程を分解し、人が見るのは最終確認だけ、という形まで持っていける業務を選ぶのが現実的です。社内ツールの内製という選択肢についてはChatGPTで社内ツールを内製する判断軸の記事も参考にしてください。
最後に、時間が増える6分の1に自社が入っていないかを実測します。導入前後で同じ業務の所要時間を記録し、増えていれば任せ方か対象業務のどちらかを変えます。なお、業務を人からAIに移すと、その業務を通じて若手が学ぶ機会も同時に消えます。この副作用についてはAIで新人が育たなくなる構造の記事で扱っています。内製と外注の切り分けそのものを見直すならSNS運用の内製・外注判断の記事も合わせてご覧ください。
まとめ
米国就業者の20%が、同僚や外注先に頼んでいた業務をAIに移していました。ただし完全な自動化ではなく、時短が出るのは任せる範囲が広いときで、成果物の3分の1には手直しが入っています。日本のEC事業者は「AIを導入したか」ではなく「どの業務をどこまで任せ、実際に何分減ったか」で判断するのが現実的です。
参考文献
- Epoch AI: One in five US workers now delegates tasks to AI instead of other humans
- Epoch AI: Polling on AI Usage(調査データ・方法論)
- Epoch AI: AI is a common workplace tool(2026年3月調査)
- Ipsos KnowledgePanel(調査パネルの概要)
- O*NET OnLine(米国労働省 職業データベース)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Epoch AI
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。