米国では「AIに期待より懸念が強い」と答えた人が52%に達しました。
TechCrunchは2026年8月19日、AIの普及が進んでも消費者の受け入れは進んでいないと報じました。根拠として引用されたのが、Pew Research Centerが8月18日に公表した調査です。日常生活でのAI利用について「期待より懸念が強い」と答えた米国人は52%で、2021年の37%から15ポイント増えています。EC事業者にとってこれは他人事ではありません。商品説明の自動生成、AIチャット接客、レコメンドと、買い物客が触れる接点にAIが入り込んでいるからです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:3つの調査が同じ方向を指した
結論から言えば、AIへの否定的な世論は単発の炎上ではなく、複数の独立した調査が同時に示す傾向になっています。Pew Research Centerの調査では「懸念が強い」が52%に達し、2021年の37%から一貫して上昇しました。

5月に実施されたEconomist/YouGovの世論調査では、70%を超える米国人がAIの進化を「速すぎる」と回答しました。18〜34歳を対象にしたCNBCの調査でも、AI業界の主要リーダー9人の名前を提示したところ、過半数が「責任ある行動を取るとは信頼できない」と答えています。
政治面でも影響が出ています。TechCrunchが引用したAxiosの報道によれば、米共和党の上院選対委員会は主要AI企業に対し、データセンター建設がオハイオ州の選挙に不利に働いていると警告する文書を送りました。AIへの反発が、企業のPR課題から地域社会・政治の課題へと広がった形です。

業界側も認識を改めつつあります。Anthropicのダリオ・アモデイはXへの投稿で、否定的な世論は「信頼の危機」であり、AI企業がまだ大きな約束を果たせていないことが最も正確な批判だと述べました。この議論の詳しい経緯はAI批判の正体は信頼の危機、Anthropic CEOの反論と3つの争点でも取り上げています。
日本のEC事業者にとっての論点:AIは「隠す」ではなく「効用で説明する」
日本のEC事業者が受け取るべき示唆は、AI活用をやめることではなく、買い物客に対するAIの見せ方を設計し直すことです。米国の調査が示しているのは技術そのものへの拒否ではなく、「自分の生活がどう良くなるのか分からないまま、コストだけ負わされている」という感覚だからです。
これは店舗運営の現場に置き換えると分かりやすくなります。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングの商品ページで「AIが自動生成した説明文です」とだけ書かれていても、買い物客の得は増えません。一方で「サイズ表記のゆれを全商品で統一し、実寸を必ず記載しました」と書けば、AIを使った結果として買い物客が得た効用が伝わります。同じ施策でも、AIという手段を語るか、買い物客の利益を語るかで受け止め方は変わります。
AIチャット接客も同様です。自社ECにチャットを置く場合、24時間即答という効用は分かりやすい一方で、回答の正確さと有人対応への引き継ぎが甘いと不信を増幅させます。自社サイトで接客AIを設定する際の実務的な注意点はCopilot Brand Agentsとは何か|自社サイトで接客するAIの設定と落とし穴にまとめています。
もう一点、見落としやすいのが商品画像とレビューです。生成AIによる画像加工が広く知られるようになり、実物と印象が異なる画像への警戒は強まっています。返品率とレビュー評価は、この警戒感が数字として現れる場所です。AI活用の効果を測るなら、作業時間の削減だけでなく、返品率や低評価レビュー比率も併せて追う設計にしておくと判断を誤りにくくなります。
今後の展望と初動アクション
今後は、AIを使っているかどうかではなく、AIを使ってどこまで責任を持つかが差になっていきます。米国では若年層を中心にダムフォンやフィルムカメラなどレトロ技術への回帰も報じられており、AI一辺倒の訴求が万人に効く前提は崩れつつあります。日本市場で同じ揺り戻しがどの程度起きるかは今後の調査を要確認ですが、備えておく価値はあります。
初動として取り組みやすいのは次の3点です。第一に、AI生成した商品説明やFAQを人が最終確認する工程を明文化し、誰がいつ確認したかを記録に残すことです。第二に、AIチャットを導入している場合は「AIが回答しています」という事実表示と、有人対応への切り替え導線をセットで用意することです。第三に、AI活用のKPIに返品率と低評価レビュー比率を加え、効率化と顧客満足が両立しているかを月次で確認することです。
商品説明を生成AIで作る際は、「この文章を読んだ買い物客が、購入後にがっかりする可能性のある表現を挙げてください」という確認プロンプトを一度通すだけでも、誇大な言い回しを減らせます。効率化の速度を上げる前に、確認の仕組みを先に置くという順番が、結果的に信頼を守ります。
まとめ
米国でAIへの懸念が52%に達したという事実は、EC事業者にとって「AI活用を控えるべきか」という問いではなく、「AIをどう見せ、どこまで責任を持つか」という問いを突きつけています。手段としてのAIを語るのではなく、買い物客が得る効用を語ること。そして効率化のKPIに顧客満足の指標を並べること。この2つを先に決めておけば、世論がどちらに振れても運用は揺らぎにくくなります。
参考文献
- TechCrunch: AI was supposed to win people over by now — it hasn’t
- Pew Research Center: Young adults in the U.S. are increasingly wary of AI
- YouGov: Most Americans say AI development is moving too fast
- Axios: GOP memo warns AI data centers are hurting the party in a key election
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。