EUが、これまで150ユーロ以下の少額貨物を関税免除としてきた「デミニミス(de minimis)」の枠組みを2026年7月1日に廃止します。EUの消費者へ商品を届けている越境EC事業者にとっては、出荷コストと通関手続きが大きく変わる節目です。米国に続いてEUでも免税枠の縮小が現実になり、日本からEU向けに販売する事業者も、価格設定と配送スキームの見直しを迫られます。本稿では何が変わるのかを整理し、日本の越境EC事業者がいま確認すべき論点をまとめます。
何が変わるのか:150ユーロ免税の廃止と暫定3ユーロ関税
Modern Retailによると、EU向けに販売するブランドは7月1日に大きな配送上の変更を迎えます。具体的には、商品本体価格が150ユーロ以下の少額貨物をこれまで関税免除としてきた制度が撤廃されます。ここでの「価格」は送料や保険料を含まない商品そのものの価格を指します。
廃止後の移行措置として、EU消費者向けの少額貨物には1個あたり3ユーロの暫定関税が適用される見込みです。Zonosの解説では、この3ユーロは消費者から玄関先で徴収するのではなく、販売者や輸入者、その代理人といった事業者側に課される点が特徴とされています。さらにこの暫定措置はおよそ2028年7月1日まで続き、その後はEUの電子商取引向け「Customs Data Hub」が稼働し、商品分類に応じた通常の関税が適用される段階に移る方向です。
規模も小さくありません。欧州委員会の集計では、2024年に150ユーロ以下の少額貨物がおよそ46億個、EUに流入したとされ、これは1日あたり約1,200万個、前年の約2倍に相当します。免税枠の廃止は、こうした膨大な小口配送の流れを正面から見直す措置だといえます。
日本の越境EC事業者にとっての論点
注意したいのは、今回廃止されるのは「関税」の免税枠であり、付加価値税(VAT)の扱いは別だという点です。EU向けのVATについては、150ユーロ以下の少額輸入であっても課税対象とする仕組みがすでに2021年に整備され、輸入時のVAT申告を一本化するIOSS(Import One-Stop Shop)制度が導入されています。今回はそこに「少額でも関税がかかる」という新しい負担が重なる構図です。
日本からEUの消費者へ直接販売している事業者にとっては、1個あたり3ユーロ程度であっても、注文単価が低く出荷件数が多いほど影響は積み上がります。とくに数千円台のアクセサリーや日用品、コスメ、ホビー商品などをEU向けに数多く出している店舗は、1件ごとの利益が薄くなりやすく、価格と送料の設計を見直す必要が出てきます。配送業者との間で関税をどちらが負担するか(DDPで事業者が前払いするのか、DDUで購入者側が受け取り時に支払うのか)の取り決めも、顧客体験を左右する論点になります。
今すぐ確認すべき初動アクション
第一に、EU向けの商品価格と送料の再計算です。暫定3ユーロの関税が事業者側に課される前提で、どの価格帯から利益が圧迫されるかを商品ごとに把握しておきます。第二に、IOSS登録の有無と運用状況の確認です。VATの申告・納付フローが整っていない場合、関税対応と合わせて通関が滞るリスクがあります。第三に、配送パートナーとの関税負担スキームの整理です。受け取り時の追加請求は購入者の不満や受取拒否につながりやすいため、DDPで事業者側が引き受ける形が検討に値します。
加えて、EU向けの売上構成が大きい事業者は、現地倉庫からの発送や一括輸入後の国内配送といった、少額個口輸入に依存しない物流の選択肢も中期的に比較しておくとよいでしょう。
まとめ
EUの少額関税免税の廃止は、安価な商品を1個ずつ国境を越えて届けてきた越境ECのモデルに、コストと手続きの両面で見直しを迫る変化です。日本のEC事業者がとるべきスタンスは、慌てて販売を止めることではなく、価格・VAT対応・配送スキームの三点を早めに点検し、利益が残る形でEU市場との取引を続ける準備を整えることです。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。