米国の消費財メーカーで、生産設備の余剰生産能力が広がっています。Modern Retailが伝えた調査では、工場の約1割が稼働率5割未満、約3割が31%以上の生産能力を持て余している状況です。これは新規ブランドの立ち上げや、自社ブランド(PB)をOEMで製造する事業者にとって、価格・ロット・リードタイムの交渉余地が広がることを意味します。日本のEC事業者にとっても、自社ブランドの製造委託を見直す好機といえます。

米国の消費財工場で何が起きているか
メーカーとブランドをつなぐプラットフォームKeychainの調査によると、米国の消費財(CPG)工場の多くが24時間稼働には程遠く、1日あたり1〜1.5シフト程度の操業にとどまっています。約10社に1社の工場が稼働率5割未満で、約3社に1社のメーカーが31%以上の生産能力を遊ばせているとされます。
背景にあるのは、低金利期に積み増した設備投資です。設備が立ち上がった頃には需要の波が変わっており、結果として供給能力が需要を上回りました。KeychainのCEOであるOisin Hanrahanは「機械も人も余っているのに、24時間フル稼働している工場はごくわずかだ」と述べ、さらに「もしメーカーが多忙を極めていたら、これほど多くの新規ブランドが立ち上がることはなかった。単純に作ってもらえないからだ」と指摘しています。
一方で、生産能力を増強したメーカーは、20%以上の増収を見込む割合が2.1倍高いという結果も出ています。昨年に20%以上の増収を達成したメーカーは全体の15%でした。設備過剰は弱みであると同時に、需要を取りに行く余地でもあるという二面性がうかがえます。
日本のEC事業者にとっての論点
この話は米国の消費財メーカーが主題ですが、自社ブランドやPBをOEM・ODMで製造する日本のEC事業者にとっても示唆があります。楽天市場やAmazon、Shopifyで自社商品を展開する場合、商品の競争力は仕入れ・製造の条件に大きく左右されるためです。
第一に、製造側に余力がある局面では、最小ロット(MOQ)や単価、製造リードタイムの交渉余地が広がります。これまで「ロットが大きすぎて試作できなかった」「初回発注の単価が合わなかった」という理由で見送っていた商品企画を、改めて打診し直す価値があります。
第二に、製造リードタイムの短縮は在庫戦略に直結します。Hanrahanは「機械の調達には長い時間がかかるが、ソフトウェアの仕組みは比較的速く変えられる」とも語っており、製造現場のデジタル化が進めば小ロット・短納期の対応力が上がる可能性があります。楽天スーパーセールやAmazonのセール商戦に合わせた追加生産がしやすくなれば、機会損失の削減につながります。
ただし、これは米国市場の調査であり、日本国内のOEM/ODMメーカーの稼働状況がどの程度同じ傾向にあるかは要確認です。業種(化粧品・食品・日用品など)や工場の規模によって事情は異なるため、自社の取引先に直接ヒアリングして確かめる姿勢が前提になります。
今後の展望と初動アクション
EC事業者がいま取れる動きは具体的です。まず、既存の製造委託先に対して、現在の稼働状況と追加発注時の条件をあらためて確認します。余力があるなら、単価やMOQの再交渉、あるいは新商品の試作に踏み込める可能性があります。
次に、自社ブランドの立ち上げを検討していた事業者は、企画を前倒しする選択肢が出てきます。製造側に余裕がある時期は、小ロットでの試験的な生産を受けてもらいやすいためです。楽天やAmazonでの販売実績データをもとに、売れ筋カテゴリで独自商品を投入する戦略が立てやすくなります。
最後に、価格交渉と品質管理は両立させる必要があります。条件が良いからと製造先を安易に切り替えると、品質のばらつきや納期遅延のリスクが生じます。複数社から見積もりを取りつつ、既存の信頼関係も活かす慎重さが求められます。
まとめ
米国消費財メーカーの設備過剰は、自社ブランドやPBを手がけるEC事業者にとって製造条件を見直す好機です。日本市場の稼働状況は要確認ながら、製造側に余力がある局面では交渉力が買い手に傾きます。商品企画を温めてきた事業者ほど、いまの市況を製造委託先への打診のきっかけにする価値があります。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。