Google は2026年9月15日、音声対話モデル Gemini 3.8 Live を公開しました。
音声で受け答えするAIの価格が、また一段下がりました。Google の公式ブログIntroducing Gemini 3.8 Live and 3.8 Live Extended Thinkingによると、入力音声1時間あたりの実行コストは Gemini 3.8 Live で0.84ドル、上位版の3.8 Live Extended Thinking でも3.50ドルです。競合の GPT-Live-1 Astra は5.83ドルとされており、標準版は約6分の1の水準になります。EC事業者にとっては、電話とチャットの一次対応をAIに任せる判断が、いよいよ「試す価値がある」から「試さない理由を説明する必要がある」段階に移りつつあります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

Gemini 3.8 Live とは何か、ベンチマークで何位だったのか
Gemini 3.8 Live とは、Google が2026年9月15日に公開した、音声で会話しながら作業を進めるためのAIモデルのことです。規模とコスト効率を重視した Gemini 3.8 Live と、複雑な多段推論に対応する Gemini 3.8 Live Extended Thinking の2本立てになっています。
性能面では、上位版が Artificial Analysis の Speech to Speech Quality Index で82.6を記録し首位となりました。OfficeChaiの整理によれば、GPT-Live-1 Astra(Medium)が81.5、Grok Voice Think Fast 2.0(High)が81.3で、差はわずかです。一方、顧客対応の完遂度を測る τ-Voice では68.6パーセント、Sierra の τ³-Banking では35.1パーセントで、こちらは GPT-Live-1 Astra の32.0パーセントを上回りました。
機能面で目を引くのは3点です。会話の途中で97言語を自動検出して切り替えること、カメラなどの視覚入力をニアリアルタイムで解釈すること、そして会話を続けたままバックグラウンドでツールやAPIを実行することです。上位版は「少し確認しますね」といった相槌を先に返し、処理の進捗を声で実況しながら待たせます。従来の音声自動応答にあった沈黙の数秒が、設計上なくなるということです。
日本のEC事業者にとっての論点は「単価」「言語」「完遂率」
結論から言えば、注目すべきはモデルの賢さより単価の桁です。入力音声1時間あたり0.84ドルという水準は、問い合わせ電話の平均通話時間が5分の店舗なら、1件あたり0.07ドル前後の計算になります。オペレーター1人を1時間確保する費用と比べたとき、定型対応をどこまで寄せるかという設計問題に変わります。なお円換算額は為替の実勢によって変動するため、試算時点のレートで各自確認してください。
2点目は越境ECです。97言語を会話の途中で切り替えられる仕様は、英語の問い合わせに日本語で答え直すといった運用の手戻りを減らします。楽天市場の海外向け出店やShopifyの多言語ストアで、時差のある問い合わせを一次受けする用途と相性が良いはずです。ただし日本語での実性能は公開ベンチマークに個別の数値が示されておらず、自社の商品名や型番をどこまで正確に聞き取れるかは要確認です。
3点目は完遂率の読み方です。カスタマーサービス型のタスクを扱う τ³-Banking で35.1パーセントという数字は、裏を返せば3件に2件は最後まで解決できていないことを意味します。全面置き換えではなく、配送状況の照会や返品条件の説明といった定型を切り出し、非定型は人に渡す前提で組むのが現実的です。音声自動化の考え方は、GPT-Live-1のAPI公開を扱った記事でも整理しています。
明日から動くなら、この順番で
まず Google AI Studio の Live 画面に自社のFAQを読み込ませ、日本語の応答品質を自分の耳で確かめることです。ベンチマークの数字より、自社の商品名が正しく発音され、聞き取られるかどうかのほうが実務では重要になります。
次に、過去半年の問い合わせログを定型と非定型に仕分け、定型が全体の何パーセントを占めるかを出します。ここが5割を超えるなら投資判断の根拠になりますし、2割程度なら当面は有人対応のほうが安く済みます。あわせて、月間の通話件数に平均通話時間を掛け、1時間0.84ドルを乗じた上限コストを算出しておくと、稟議の数字がそろいます。
本番投入の時期については、開発者向けはGemini Live API と Google AI Studio で当日から利用できる一方、企業向けの Gemini Enterprise はプライベートプレビュー、顧客対応特化の Gemini Enterprise for Customer Experience は提供予定の段階です。自社実装で先行するか、提供開始を待つかの判断が必要になります。生成された音声には SynthID の電子透かしが入るため、AIが応対している旨をどう告知するかという運用設計も同時に詰めておくべきです。低価格モデルの使い分けはGemini 3.8 Flash のEC活用記事も参考になります。
まとめ
Gemini 3.8 Live は、音声AIの品質競争が価格競争に移ったことを示す発表です。1時間0.84ドルという単価は、定型対応の自動化を検討する十分な理由になります。一方で顧客対応タスクの完遂率は35.1パーセントにとどまり、全面移管は時期尚早です。定型を切り出して試し、非定型は人が持つ。この線引きを先に決めた店舗が、コスト差をそのまま利益に変えられます。
参考文献
- Google – Introducing Gemini 3.8 Live and 3.8 Live Extended Thinking
- OfficeChai – Google Releases Gemini 3.8 Live-Extended Conversational Model
- Artificial Analysis – Speech to Speech Arena
- Google AI for Developers – Live API
- ServiceNow – EVA-Bench Results
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: Google The Keyword
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。