Googleが、Gemini生成物の可視透かしをオフにできる設定を追加しました。
対象は画像・動画・楽曲で、Nano Banana、Omni、Lyria の3モデルが該当します。商品画像や商品動画を生成AIで作っている店舗にとって、右下に入る「AI生成」の帯は入稿前に消すか作り直すかの二択を迫る厄介な存在でした。それが設定ひとつで外せるようになります。ただし外れるのは目に見える方だけで、不可視のSynthID透かしとC2PAメタデータは全生成物に残り続けます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:Gemini可視透かしの表示切り替えが設定に追加
結論から言えば、2026年8月14日以降、Geminiで生成した画像・動画・楽曲から可視透かしを外せるようになります。TechCrunchによると、Googleは同日この変更を発表し、対象モデルは Nano Banana、Omni、Lyria の3つです。
操作場所は Gemini アプリの設定内にある Media Watermark の項目で、ここで可視透かしのオンとオフを切り替えます。Google の Gemini 担当バイスプレジデントである Josh Woodward はX の投稿で、この切り替えが Gemini と動画エディタの Flow で使えるようになり、検索についても対応予定だと説明しています。提供は発表から数日かけて順次広がる形で、アカウントに届くまでに時間差があります。
なお一部の国では有料プラン限定になるという報道も出ていますが、Google 自身の発表文では触れられていないため、自社の契約プランで使えるかどうかは実際の設定画面での確認が必要です(要確認)。
オフになるのは「見える方」だけ:SynthIDとC2PAは残る
ここが今回いちばん誤解されやすい点です。可視透かしを外しても、AI生成物であることを示す仕組みは残ります。Woodward は「クリエイティブのコントロールと安全性のバランスを取っている」と述べたうえで、不可視のSynthID透かしとC2PAメタデータは引き続き使われると明言しました。ユーザー側でこれらを無効化する手段は用意されていません。
SynthID は Google が100億件を超えるコンテンツに適用してきた不可視の透かし方式で、画像を見ただけでは分かりませんが、Google の検索や Gemini からAI生成かどうかを照会できます。C2PA はコンテンツ来歴と真正性のための連合が策定している業界標準で、ファイルのメタデータに「いつ、どのツールで作られたか」を署名付きで記録します。この2つが残る以上、「透かしを消せばAI生成だと分からなくなる」という理解は誤りです。
Google はこの流れをさらに広げていて、8月13日には C2PA コンテンツクレデンシャルを扱うオープンソースのC++ライブラリ Credentio を公開しました。C2PA仕様の2.2および2.4に対応し、クラウドにファイルを送らずローカルで検証を完結させる設計です。Google 自身の説明によれば、これは40近いC2PA準拠のGoogle製品で使われ、数百億規模の生成アセットを処理してきたコードで、リポジトリは mediaprovenance.googlesource.com で公開されています。

日本のEC事業者にとっての3つの論点
論点は3つに整理できます。
第一に、商品画像と商品動画の入稿工数が下がります。可視透かしは画像の隅に固定で入るため、モールの1枚目画像に使うにはトリミングか作り直しが必要で、動画では該当フレームを避ける編集が発生していました。モールによっては商品画像に写し込めるテキストや装飾の割合に制限があるため、不要な要素が1つ減る意味は小さくありません。ただし各モールの画像ガイドラインは改定が入るので、自店が使うモールの最新版は必ず確認してください(要確認)。この工程改善は、Nano Banana系モデルで商品画像や動画を量産する運用を組んでいる店舗ほど効いてきます。
第二に、表示義務と社内ルールは別問題として残ります。可視透かしが消えても、商品ページで実物と異なる印象を与える画像を使えば景品表示法の優良誤認にあたる可能性があります。AI生成であることを隠せる技術になったわけではなく、「AI生成物をどこまで商品画像として使うか」という自社の線引きは変わらず必要です。テキスト側でも同じ論点が進行していて、Claudeが全出力に透かしを入れる件やSunoが楽曲の透かしとダウンロード制限を強化した件と地続きの話です。BGMを Lyria で内製している店舗も同じ枠に入ります。
第三に、素材の受け入れ検査を自社側でできる余地が広がります。Credentio がオープンソース化されたことで、外注デザイナーや越境ECの現地代理店から納品された画像について、AI生成かどうかを社内システムで判定する仕組みを組めるようになりました。ローカル完結なので素材を外部に送らずに済み、機密性の高い新商品画像でも検査に回せます。実装には開発リソースが要るため中小規模の店舗には遠い話ですが、素材の出所管理を取引条件に入れている事業者には現実的な選択肢です。
今週のうちに済ませたい初動
やることは3つです。
1つ目は設定の確認と権限の整理です。Gemini と Flow の Media Watermark 設定を誰が触れる状態にするかを決めます。全員がオフにできる状態にしておくと、あとから「この画像は透かし付きで作ったのか外して作ったのか」が追えなくなります。
2つ目は自社の表示ルールの明文化です。商品画像や広告クリエイティブで生成AIを使う範囲、実物と差が出る加工の可否、ページ内に注記を入れるかどうかを1枚のルールにまとめます。透かしという外部の歯止めが外れる以上、内側の歯止めを先に作っておく方が安全です。
3つ目は過去素材の棚卸しです。可視透かし付きのまま入稿してしまった画像がないかを確認し、差し替えるものを洗い出します。作り直しではなく設定を変えて再生成すれば済むケースが多いので、この機会にまとめて処理するのが効率的です。
まとめ
Gemini の可視透かしは設定でオフにできるようになりましたが、SynthID と C2PA は残ります。EC事業者にとっては商品画像・動画の入稿工数が下がる一方、AI生成物の扱いに関する社内ルールの必要性はむしろ増しました。技術的な歯止めが外れた分を、運用ルールで埋める段階に入っています。
参考文献
- Google will now allow users to remove visible watermark from its AI generations(TechCrunch)
- Introducing Credentio: Open Source C++ Library for C2PA Content Credentials from Google(Google Developers Blog)
- Josh Woodward による発表投稿(X)
- Coalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA 公式)
- Google says SynthID has been used to watermark over 10 billion pieces of content(TechCrunch)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。