Google Direct Offersとは|AIモードの値引き広告で粗利を守るEC設計4ステップ

Google Direct Offersは、AIモードで購入間近の人に限定値引きを出す広告形式です。仕組みと日本での提供状況、載るECと載らないECの分かれ目、粗利を守る値引き上限の算定から景表法チェックまでの4ステップとプロンプト4本を解説します。

投稿日: カテゴリー Gemini

Google Direct Offersとは、AIモードで購入間近の人に限定値引きを出す広告のことです。

AIの回答の中で、自社商品の「20%オフ」が競合商品と並んで表示される。Googleが2026年1月にパイロットを始めたDirect Offersは、検索広告の枠ではなく、AIモードの会話の流れの中に値引きを差し込む新しい広告形式です。値引きは売上を動かす一方、AIの回答面で他社と直接比べられると、値引き幅の競争に巻き込まれやすくなります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、Direct Offersの仕組みと日本での提供状況を整理したうえで、載る店舗と載らない店舗を分ける条件、粗利を削らずに使うための設計を4つのステップとプロンプト4本で解説します。日本での提供は2026年10月時点で未定のため、今やっておくべき準備に焦点を当てます。

Google Direct Offersの表示イメージ

Direct Offersは検索広告の何を変えたのか

Direct Offersが変えたのは、値引きを出す「タイミング」の決め方です。従来の検索広告やショッピング広告では、店舗がキーワードや商品を選び、表示されれば同じ訴求が誰にでも出ました。Direct Offersでは、GoogleのAIが会話の文脈を読み、購入に近づいた人に対して、関連性が高いと判断した瞬間だけ値引きを表示します。

始まりは2026年1月です。The Decoderの報道によると、GoogleはAIモードで購入の準備ができた利用者に、小売事業者が限定割引を見せられるパイロットを発表しました。たとえば「手入れのしやすいダイニング用ラグ」を探している人に、その条件に合う商品を扱う店舗の割引が表示される、という使われ方です。初期の参加企業として、ペット用品のPetco、化粧品のe.l.f. Cosmetics、旅行かばんのSamsoniteが挙がりました。当初は割引のみで、バンドルや送料無料は後から加わる予定とされていました。

2026年5月のGoogle Marketing Live 2026では、機能が一段広がりました。Googleの日本語公式ブログによると、パイロットにはChewy、Gap、L’Orealなどが参加しています。広告主が対象商品と許容範囲を設定すると、Geminiが商品を組み合わせたオファーを自動で作る「プロモーションのバンドル化」がまもなく始まり、UCP(Universal Commerce Protocol、AIの画面内で決済まで完了させるGoogle主導の規格)を導入した事業者向けには、広告や検索画面の中で決済を完了できる機能が加わりました。Booking.comやExpediaなどの旅行分野への拡大も予告されています。

表示される場所も増えています。Googleの広告主向けページでは、2026年の新機能として、AIモードの商品ビューアーに加えて、AIモードの回答そのものにも表示を広げ、探している途中のほかの関連商品と並べて割引を見せられるようにしたと説明しています。アップロードできる販促は、割引、プレゼント、店舗で使えるクーポンなどです。

ただし、ここまでの発表はすべて米国向けです。Googleの日本語公式ブログには、Google Marketing Liveの発表は米国向けで、日本での導入時期や展開の詳細は未定の情報を含むという注記があります。AIモード自体は日本語でも使えるようになっていますが、Direct Offersが日本の広告主に開放される時期は、2026年10月18日時点で示されていません。

Direct Offersに載るECと載らないECの分かれ目

Direct Offersに載れるかどうかは、値引きの大きさより先に、Googleの広告と商品データの仕組みに乗っているかで決まります。Googleの説明では、小売の広告主はMerchant Centerでオファーを管理し、AI MaxやP-MAX(Googleの自動化された広告キャンペーン)を使う広告主はGoogle広告の管理画面からDirect Offersを作成し、値引きの上限を設定できます。広告主は販促をアップロードし、対象商品とガードレール(守るべき条件)を渡し、AI Briefという機能で配信の方向性を指示する流れです。

この構造から、載る店舗の条件は3つに絞れます。1つ目は、Merchant Centerに商品フィードを出し、エラーなく承認されていることです。2つ目は、Google広告でショッピング系のキャンペーン、特にP-MAXやAI Maxを運用していることです。3つ目は、値引きを出してよい商品と上限を、店舗側で決められることです。UCPに対応していれば、AIの画面内で決済まで完了するネイティブチェックアウトも視野に入ります。

逆に、載らない店舗は、Googleショッピングに商品を出していない店舗、フィードの不承認やエラーが放置されている店舗、楽天市場やAmazonなどのモールだけで販売している店舗です。モールの商品はモール側の仕組みで流通するため、店舗が自分でDirect Offersを設定する場面は、少なくとも現時点では想定しにくいといえます。影響を直接受けるのは、Shopifyなどの自社ECでGoogleショッピングを使っている店舗です。

フィードの品質は、ここでも土台になります。AIが「この人にこの商品の割引を出す」と判断するには、商品の仕様や用途がフィードと商品ページで正確に伝わっている必要があります。Merchant Centerのエラーの直し方は、GMCフィードエラー修正スキルの記事で、会話型の検索で拾われる属性の足し方はMerchant Centerの会話型属性への対応手順で整理しています。

もう1つの分かれ目は、価格以外の条件を言葉で持っているかどうかです。AIの回答の中で割引が他社と並ぶと、利用者は値引き率だけでなく、送料、配送日数、返品条件、保証も合わせて比べます。値引き幅で他社に勝てない店舗でも、「当日発送」「30日間返品可」「名入れ無料」のような条件がフィードと商品ページで明確なら、比較の土俵を価格以外に移せます。Googleの広告形式全体の中でのDirect Offersの位置づけは、Googleのエージェンティックコマース広告の解説もあわせてご覧ください。

粗利を守りながら使う4ステップとプロンプト4本

日本で提供が始まる前に準備できるのは、値引きの上限を決めること、オファーの型を決めること、AIの回答面でどう比べられるかを確かめること、訴求文を法令に沿って整えることの4つです。4本のプロンプトは、ChatGPT、Claude、Geminiのいずれでも使えます。

ステップ1は、商品ごとの値引き上限の算定です。Direct Offersでは広告主が値引きの上限を設定できますが、その数字を感覚で決めると、売れても利益が残りません。粗利率、広告費、送料負担、決済手数料から、出してよい値引きの上限を商品ごとに計算します。

プロンプト1:商品ごとの値引き上限を計算する

あなたはEC事業の利益管理に詳しいアナリストです。
以下の商品データをもとに、AI検索広告で出してよい値引き率の上限を商品ごとに計算してください。

商品データ(商品名、税込販売価格、原価、送料の自社負担額、決済手数料率):
{一覧を貼り付け}

条件:
1. 1件あたりの目標利益は販売価格の{10}%とする
2. 広告費は販売価格の{15}%を見込む
3. 値引き上限率=(販売価格−原価−送料負担−決済手数料−広告費−目標利益)÷販売価格 で計算する
4. 上限がマイナスになる商品は「値引き対象外」と明記する
5. 結果は値引き上限率の高い順に並べ、対象にしやすい商品の上位10件を挙げる

ステップ2は、オファーの型の設計です。Direct Offersは割引から始まり、バンドルやプレゼント、店舗クーポンへと型が増えています。同じ原資でも、割引より「同時購入で1点プレゼント」のほうが粗利を守れる商品があります。商品ごとに向いている型を決めておきます。

プロンプト2:商品ごとにオファーの型を決める

あなたはEC販促の設計に詳しいプランナーです。
以下の商品について、AI検索の中で見せる限定オファーの型を提案してください。

商品情報:{商品名、価格、粗利率、よく一緒に買われる商品、在庫状況}
選べる型:割引、商品バンドル(同時購入で割安)、プレゼント(おまけ)、送料無料

条件:
1. 各商品に最も向く型を1つ選び、理由を2文で書く
2. 割引を選ぶ場合は、プロンプト1で計算した上限を超えない率にする
3. バンドルを選ぶ場合は、組み合わせる商品と合計価格を示す
4. 在庫が多い商品と少ない商品で、オファーの出し方をどう変えるかを書く
5. 全体として、値引き競争に巻き込まれにくい組み合わせになっているかを最後に評価する

ステップ3は、AIの回答面での比べられ方の確認です。日本でDirect Offersが始まっていなくても、AIモードやChatGPTに「この条件でおすすめは?」と聞いたとき、自社商品がどう扱われるかは今すぐ確かめられます。競合の条件と並べて、どこで選ばれ、どこで落ちるかを見ます。

プロンプト3:AIの回答で自社商品がどう比べられるかを確かめる

あなたは慎重な買い物客の代理として商品を比較するAIアシスタントです。
次の条件で商品を探している人に、以下の候補から1つをすすめてください。

買い手の条件:{用途、予算、重視する点(例:手入れのしやすさ、届くまでの日数)}

候補(商品名、価格、値引き、送料、配送日数、返品条件、保証、主な仕様):
- 自社商品:{内容}
- 競合A:{内容}
- 競合B:{内容}

出力:
1. すすめる商品と理由
2. 各候補が選ばれなかった理由
3. 自社商品が選ばれるために、値引き以外で足りない情報や条件

ステップ4は、訴求文と表示の法令チェックです。日本でAIの画面に値引きを出す場合も、景品表示法の二重価格表示や有利誤認の考え方は変わりません。「通常価格」の根拠がない比較価格や、条件を省いた「最大」表現は、AIが回答の中で繰り返すことで誤解を広げかねません。

プロンプト4:限定オファーの訴求文を景品表示法の観点で点検する

あなたは日本の景品表示法に詳しいEC広告の審査担当者です。
以下の限定オファーの訴求文を点検し、修正案を出してください。

訴求文:{例:今だけ20%オフ、通常価格5,980円が4,784円}
比較対象にした価格の根拠:{いつ、どこで、どのくらいの期間その価格で販売していたか}
オファーの条件:{対象者、期間、併用可否、数量限定の有無}

条件:
1. 二重価格表示として問題になりうる点を指摘する
2. 条件が省かれて有利誤認につながりそうな表現を指摘する
3. 「最大」「今だけ」「限定」などの言葉を使う場合の注意点を書く
4. 修正後の訴求文を3案出す
5. 判断に迷う点は「専門家に要確認」と明記する

4つのステップは、プロンプト1と2を主力商品20点ほどで先に回し、プロンプト3を月1回の定点観測、プロンプト4をオファーを作るたびに通す、という使い方が無理のない形です。

よくある3つの失敗と回避策

1つ目は、値引き上限を一律で決めてしまう失敗です。「全商品10%まで」と決めると、粗利率の高い商品では余裕が残り、粗利率の低い商品では売れるほど赤字になります。ある食品ギフトの中規模店舗の事例では、送料込み価格の商品に一律の割引を当てた結果、送料負担を差し引くと利益がほとんど残らない注文が目立ちました。プロンプト1のように、送料と広告費まで含めて商品ごとに上限を出すのが回避策です。

2つ目は、値引きでしか比べられない商品ページのまま臨む失敗です。AIの回答の中で他社と並んだとき、配送日数や返品条件が書かれていない商品は、値引き率だけで比べられます。結果として、値引き幅を広げないと選ばれない状態に追い込まれます。値引きの設計に入る前に、価格以外の条件をフィードと商品ページの両方にテキストで書き出しておくと、値引きを小さく保ったまま選ばれる余地が残ります。

3つ目は、モールのクーポン運用と自社ECのオファーがちぐはぐになる失敗です。楽天市場のクーポンやお買い物マラソンに合わせた値引きと、自社ECでGoogle向けに出す値引きの条件がばらばらだと、同じ商品の実質価格がチャネルごとに大きく違って見えます。AIは複数の販売先の価格を突き合わせることもあるため、チャネルごとの値引きの方針を1枚の表にまとめ、意図した価格差になっているかを確認しておくべきです。

費用と追うべき指標の目安

Direct Offersの費用は、通常の広告予算の中で扱われるとされ、第三者の報道ではクリック課金と伝えられています。ただし米国のパイロット段階の情報で、日本での料金体系は未定です。実際の負担として大きいのは広告費そのものより、値引きの原資です。値引き率と注文数を掛けた金額が、広告費とは別に粗利から差し引かれます。

追うべき指標は、オファー経由の注文の粗利額、オファーを見た人の購入率、オファーを出さなかった場合との売上差の3つです。売上だけを見ると値引きは常に成功に見えるため、粗利額で評価することを最初に決めておきます。オファー経由の注文のうち、もともと定価で買う予定だった人の割合も、可能な範囲で推定しておきたい数字です。

工数の目安としては、主力商品20点の値引き上限の算定に半日、オファーの型の設計に半日、訴求文の点検に1〜2時間ほどです。月1回のAI回答の定点観測は30分あれば回せます。日本で提供が始まった時点でこれらがそろっていれば、設定にかかる時間は数時間で済むという見立てです。

今後の展望:AIの中の値引きは誰のためのものか

今後の焦点は、日本での提供開始時期と、値引きの出し方をどこまでAIに任せるかです。Google Marketing Live 2026で示されたプロモーションのバンドル化は、広告主が商品と許容範囲を決め、組み合わせはGeminiが作るという設計でした。値引きの中身をAIが組み立てる時代になるほど、店舗が握るべきなのは「許容範囲」、つまり上限と対象商品の線引きです。

もう1つの論点は、利用者から見た公正さです。会話の文脈に応じて人ごとに違う値引きが出る仕組みは、店舗にとっては効率的でも、同じ商品を定価で買った人との差が見えたときに不満を生む可能性があります。日本では景品表示法の考え方も踏まえ、どの条件の人に、なぜその値引きを出すのかを説明できる設計にしておくことが、長く使ううえでの前提になると判断します。

AIの回答の中で商品が選ばれる流れは、Direct OffersのようなGoogleの広告形式だけでなく、AIエージェントが代理で購入する仕組みとも結びついていきます。UCPによるネイティブチェックアウトが日本に来れば、値引きの提示から決済までがAIの画面の中で完結します。そのとき選ばれるのは、値引きが大きい店舗ではなく、条件が明確で、注文後の対応まで信頼できる店舗です。UCPへの備えはUCPとMerchant Center対応の手順で整理しています。

よくある質問

Google Direct Offersとは何ですか

Google Direct Offersとは、AIモードで購入を検討している人に、小売事業者が限定の値引きや特典を表示できるGoogleの広告形式のことです。2026年1月に米国でパイロットが始まり、会話の文脈からGoogleのAIが表示のタイミングを判断します。割引のほか、バンドル、プレゼント、店舗クーポンへと型が広がっています。

日本でも使えますか

いいえ、2026年10月18日時点では日本での提供時期が示されていないからです。Googleの日本語公式ブログでも、Google Marketing Liveの発表は米国向けで、日本での導入時期は未定と注記されています。今のうちにフィードの整備や値引き上限の算定を済ませておくのが現実的な備えです。

楽天市場やAmazonの出店者にも関係がありますか

いいえ、直接の関係は薄いと考えられます。Direct OffersはMerchant CenterやGoogle広告で管理する仕組みのため、自社ECでGoogleショッピングを使っている店舗が主な対象です。ただし、AIが複数の販売先の価格を突き合わせる可能性はあるため、モールと自社ECの値引き方針はそろえておくべきです。

値引きを出すと利益が減りませんか

はい、設計を誤ると利益は減ります。値引きの原資は広告費とは別に粗利から差し引かれるため、商品ごとに送料と広告費まで含めた上限を決めることが欠かせません。値引きより粗利を守りやすいバンドルやプレゼントを選べる商品もあります。

費用はどのくらいかかりますか

料金体系は日本向けには未定です。米国では通常の広告予算の中で扱われ、報道ではクリック課金と伝えられています。実際の負担として大きいのは値引きの原資なので、値引き率と想定注文数から粗利への影響を先に試算しておくと判断しやすくなります。

載るために今すぐできることは何ですか

今すぐできることは、Merchant Centerの商品フィードのエラーを解消し、価格以外の条件をフィードと商品ページに書き出すことです。Direct Offersに載る前提は、Googleショッピングに商品が正しく出ていることです。あわせて主力商品の値引き上限を算定しておくと、提供開始後すぐに設定できます。

景品表示法で気をつける点はありますか

はい、二重価格表示と有利誤認には特に注意が必要です。比較に使う通常価格には販売実績の根拠が求められ、条件を省いた「最大」「今だけ」といった表現は誤解を招くおそれがあります。判断に迷う表現は、公開前に専門家へ確認してください。

まとめ

Google Direct Offersは、AIモードの会話の流れの中で、購入間近の人に限定の値引きや特典を見せる広告形式です。2026年1月に米国でパイロットが始まり、5月にはバンドル化やネイティブチェックアウトへと広がりましたが、日本での提供時期はまだ示されていません。載れるかどうかを分けるのは、Merchant Centerのフィード品質、ショッピング系キャンペーンの運用、値引きの上限を商品ごとに決められる体制の3つです。今のうちに値引き上限の算定、オファーの型の設計、AIの回答面での比べられ方の確認、訴求文の法令チェックを済ませておけば、提供開始の日に粗利を削らずに動き出せます。

参考文献


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)


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【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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