Keenable が2026年8月25日、AIエージェント専用の検索基盤で2,600万ドルを調達しました。
AIエージェント専用の検索インデックスとは、人間ではなくAIが読むことを前提に設計されたウェブ検索の仕組みのことです。ドイツ出身のAI研究者とヤンデックス元検索責任者が立ち上げたスタートアップが、1,000億件を超える文書を抱えるこの基盤を公開し、AIラボや推論プロバイダーの本番環境で実際に使われ始めています。商品ページが「人間に読まれる前にAIに読まれる」時代が、インフラの側から現実になりつつあります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

AIエージェント向け検索基盤に2,600万ドル、インデックスは1,000億件超
結論から言えば、AIが使うための検索インフラに、いま本格的な資金が流れ込んでいます。TechCrunch によると、Keenable は2,600万ドルのシードラウンドでステルスを脱し、Accel がリードインベスターを務め、Conviction Partners と複数のエンジェル投資家が参加しました。
創業者はロシアの検索大手ヤンデックスで検索・AI・クラウド部門を率いたアンドレイ・スティスキンと、ドイツのAI研究者マティアス・ペトリの2人です。同社サイトによれば、スティスキンはヤンデックスで検索・広告事業を統括した後、Amazon AGI でウェブインフラのディレクターを務め、ペトリは Amazon AGI の主席応用サイエンティストとしてアレクサの裏側にあるウェブグラウンディング基盤を構築した経歴を持ちます。
Keenable が公開しているスペックは、インデックス規模1,000億件以上、米国東部での応答時間はp95で250ミリ秒未満、料金は毎秒100リクエスト以上の大口向けで1,000リクエストあたり1ドルからというものです。個人開発者向けの従量課金プランは1,000リクエストあたり4ドルで、APIのほかにMCPサーバーとCLIが同じキーで使えます。スティスキンは「インターネット全体を走査するコストは膨大なので、クエリに応じて検索空間を素早く絞り込む工夫が必要になる」と述べています。
日本のEC事業者にとっての論点は「誰のインデックスに載るか」
ここで押さえるべき論点は、商品情報が載る先が Google だけではなくなる、という一点です。記事によれば、GoogleのCustom Search APIやMicrosoftのBing Search APIは縮小・終了の方向に向かっており、AI企業が使えるウェブ検索の選択肢はむしろ減っています。その空白を、Keenable や Brave、Exa といった独立系プレイヤーが埋めようとしている構図です。
これが日本の楽天市場やAmazon、Shopifyの店舗にとって何を意味するか。ChatGPTやClaude、Perplexityが「30代女性向けの無添加スキンケアを比較して」と聞かれたとき、その回答の根拠になる文書は、こうした独立系インデックスから引かれている可能性があります。つまり、Googleの検索順位が変わらなくても、AI経由の指名流入は静かに増えたり減ったりします。うるチカラでもAI検索経由の流入が3倍になったShopifyの事例やDTC4社のGEO実践を取り上げてきましたが、今回のニュースはその流入がどこから供給されているかの答え合わせにあたります。
もう一つ見逃せないのが、Keenable が開発中の Time Machine です。クエリに時刻を指定すると、その時点のウェブの状態とランキングを再現できる時点指定型の検索APIで、価格改定やセール告知の履歴がAI側に残ることを意味します。「以前はもっと安かった」という指摘がAIから返ってくる状況は、日本のEC事業者にとって決して他人事ではありません。ただし Time Machine は早期アクセス受付段階であり、実際にどこまで小売サイトの過去を保持するかは要確認です。
いま取るべき3つの備え
第一に、商品ページを「AIが読んで要約できる形」に整えることです。価格、内容量、素材、返品条件といった判断材料を、画像内の文字ではなくテキストで書き切ります。AIクローラーは画像に焼き込まれたスペック表を読めないため、装飾的なバナー画像だけで説明を済ませているページは、AIの回答から静かに外れます。
第二に、クローラーの受け入れ方針を一度点検することです。TechCrunchが引用した Cloudflare の調査では、AIクローラーが検索トラフィックに占める割合が伸びています。自社ECサイトを持つ事業者は、robots.txtでどのAIクローラーを許可し、どれを止めているのかを確認しておきたいところです。楽天市場やAmazonの店舗ページは自分でrobots.txtを触れないため、モール外に自社の情報発信拠点を持つ意味がここでも出てきます。
第三に、AI経由の流入を計測できる状態を作ることです。Google Analytics 4の参照元にchatgpt.comやperplexity.aiが現れているか、月に一度でよいので確認する習慣をつけると、変化に気づくのが半年単位で早くなります。売上に直結する数字ではないうちに見始めるのが、結果的にいちばん安いコストで済みます。
まとめ
AIエージェント専用の検索インデックスが1,000億件規模で立ち上がり、AI企業がGoogle以外の供給源を持ち始めました。日本のEC事業者にとっての実務は派手なものではなく、商品情報をテキストで書き切ること、クローラー方針を点検すること、AI経由流入を計測することの3つです。順位表の外側で起きている変化なので、気づいた店舗から差がつきます。
参考文献
- TechCrunch: Accel-backed Keenable is indexing the web for AI agents
- Keenable 公式サイト(プロダクト・料金・チーム)
- Cloudflare: From Googlebot to GPTBot — who’s crawling your site in 2025
- Microsoft: Bing Search APIs retirement announcement
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。