米ホームセンター大手のLowe’sが、自社の第三者(3P)マーケットプレイスを店頭の接客システムに統合し、店員がその場で外部出品者の商品を検索・注文できるようにしました。発表は2026年6月26日。店舗在庫と外部出品商品の境目を顧客に意識させない設計で、リアル店舗とマーケットプレイスを融合させる動きとして注目されます。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングといったモール型に依存してきた日本のEC事業者にとっても、マーケットプレイス戦略を考え直す材料になります。本稿では要点を3つに絞って読み解きます。
何が起きたか: 店頭システムへの3P統合
Modern Retailによると、Lowe’sはシカゴで開いた2回目の出品者サミットで、店員用の業務システム「My Red Vest」にマーケットプレイスを組み込んだと明らかにしました。店員は自社在庫と外部出品商品を横断して検索でき、店頭で購入を完結させて顧客の自宅へ直送できます。マーケットプレイス担当バイスプレジデントのMichael McCluskeyは「顧客は在庫品か外部出品かの違いをほとんど意識しない。求めているのは課題を解決する正しい商品だけだ」と述べています。
Lowe’sは2024年後半に3Pマーケットプレイスを開設し、Amazon.comや自前のモールを持つ他の小売各社に対抗してきました。2026年5月の決算では第1四半期のオンライン売上が15.5%増となり、マーケットプレイスがその成長に寄与したとされています。新機能はすでに約97%の店舗に展開され、数週間で全店に行き渡る見込みです。過去1年で品揃えは「倍以上」に増え、毎週数万点を追加していると説明しています。
日本のEC事業者にとっての論点: 1P/3Pの融合と在庫設計
Lowe’sの動きから読み取れる論点は3つあります。
第一に、1P(自社仕入れ)と3P(外部出品)の体験を融合させる発想です。日本でも楽天市場やYahoo!ショッピングはモール型、Amazonは1Pと3Pの混在型ですが、Lowe’sのように「自社の店員が外部出品商品をその場で売る」形は珍しく、リアル店舗を持つ家電量販やホームセンターにとって示唆的です。顧客から見た一貫した体験を作れるかが鍵になります。
第二に、店舗に置けない商品をマーケットプレイスで補完する在庫設計です。Lowe’sは売り場面積の制約で扱いにくい家庭用プールや、SNSで人気が出た装飾用のガチョウ(置物)などを外部出品で取り扱い、店頭からも注文が入っていると言います。実店舗とECの役割分担を、面積効率と需要の振れ幅で切り分ける考え方は、日本の中小事業者が自社ECと楽天店舗を使い分ける際にも応用できます。
第三に、マーケットプレイスを品揃え判断のデータ源にする発想です。McCluskeyはEV充電器のように店頭展開が小さくても売れた商品や、Stanley Black & Decker経由のブランドの需要を見て、卸取引や店頭導入につなげる「フィーダー(供給源)」だと位置づけました。売れ筋データを仕入れ判断に回す循環は、日本のEC事業者が楽天・Amazonの販売データを商品開発に活かす動きと重なります。
今後の展望と初動アクション
Lowe’sはマーケットプレイスを招待制に保ち、出品者の質に高い基準を設けています。McCluskeyは「これは社内の片手間プロジェクトではなく、デジタル戦略の中核になりつつある」と語りました。小売自社運営のマーケットプレイスはWalmartが店頭でQRコードを使うテストを進めるなど、各社が競って拡張しています。
日本のEC事業者がいま検討すべき初動は次の通りです。まず、自社が出品者側か運営側かを問わず、1Pと3Pをまたいだ顧客体験の一貫性を点検すること。次に、店舗やカタログに載せきれない商品を、楽天やAmazon、自社ECのどこで補完するか役割を整理すること。そして、各モールの販売データを仕入れ・商品開発の意思決定にどう還流させるか、仕組みとして設計することです。なお出品者として参加する場合は、各モールの規約(外部送客の可否など)が異なる点に注意が必要です。
まとめ
Lowe’sの事例は、マーケットプレイスが単なる品揃え拡張ではなく、店舗体験・在庫設計・仕入れ判断を貫く戦略基盤になりつつあることを示しています。日本のEC事業者も、モールを「売り場」だけでなくデータと体験の融合点として捉え直すことで、限られた在庫と店舗資源を効率よく活かせるはずです。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。