簡易発注点計算スキルを使うと、SKUごとの発注点と安全在庫が3分で出ます。
在庫の発注タイミングは、いまだに勘と経験で決めている店舗が多い領域です。平均日販だけを見て「リードタイム分の在庫があるから大丈夫」と判断していると、実は欠品確率は50%あります。販売数のばらつきを吸収する安全在庫が入っていないためです。ALSELの簡易発注点計算スキルは、平均日販・標準偏差・リードタイム・欠品許容率の4変数から、安全在庫、発注点、推奨発注量、機会損失額までを一括で計算します。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
発注点計算スキルでできること
簡易発注点計算スキルとは、直近の販売実績とリードタイムから「いつ・何個発注すべきか」を数値で出すスキルのことです。ALSEL Agent Skillsから配布しており、Claude Code上で動きます。
計算の中心にあるのは次の2式です。安全在庫は「安全係数 × 標準偏差 × リードタイム日数の平方根」、発注点は「平均日販 × リードタイム日数 + 安全在庫」。ここで標準偏差は日販のばらつきの大きさ、安全係数は欠品をどの確率まで許容するかを表す数字です。欠品許容率1%なら2.33、5%なら1.65、10%なら1.28を使います。売上上位のA群は1%、中位のB群は5%、下位のC群は10〜15%という振り分けが実務の初期値になります。
出力されるのは、入力情報の整理、安全係数の選択理由、安全在庫と発注点と残日数と推奨発注量の計算結果、発注タイミングの判定、機会損失額の試算、制約条件のチェックリスト、不足情報の指摘までを含んだ一連のレポートです。単に数字を出すだけでなく、賞味期限、キャッシュフロー、倉庫保管能力、シーズン消化見込み、海外仕入の旧正月といった実務制約で発注量に上限をかけるところまで面倒を見ます。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングを併売していて、モールごとに売れ方が違う商品を扱う店舗ほど効きます。
実際の使い方
起動は「SKU-A001の発注点を計算して」「この商品、いつ発注すべき?」「安全在庫を出して」といった自然な依頼で足ります。EOQ(経済的発注量)や適正在庫日数、機会損失額といった言葉でも反応します。
入力として渡すのは、直近30日から90日の日次販売数、リードタイム日数、現在庫数、既発注分の数量と入荷予定日です。任意で欠品許容率、発注ロット(最小発注単位)、単価と粗利率、賞味期限を添えると精度が上がります。日次データはRMSやセラーセントラルからダウンロードしたCSVをそのまま渡せます。データが足りない場合は仮定値で初稿を出し、冒頭に「最終確定には何の確認が必要か」を明示する設計になっています。
スキルに載っている代表例で流れを追うと分かりやすいはずです。単価3,800円の化粧水、直近30日で150本(平均日販5本)、標準偏差2本、リードタイム7日、B群で欠品許容5%、現在庫50本、発注ロット50本単位というケースでは、安全在庫は1.65 × 2 × √7 で約9本、発注点は5 × 7 + 9 = 44本になります。現在庫50本は発注点まで残り約1.2日ですから、判定は即発注です。適正在庫日数30日から逆算した推奨発注量は109本で、ロット単位に切り上げて150本という結論になります。機会損失額は5本 × 3,800円 × 粗利率50%で1日あたり9,500円です。
このスキルは新商品やトレンド変動にも手当てがあります。直近7日の販売が直近30日平均の1.3倍を超えている商品は直近7日ベースで平均日販を取り、安全係数も厚めにします。欠品した日を平均日販の計算に含めると需要を過小評価するため、その日を除外する扱いも明記されています。リードタイムは実績の中央値ではなく85〜95パーセンタイルを使うという指針も入っています。
導入による業務インパクト
手作業との差は、SKUあたりの計算時間と判断のばらつきに出ます。標準偏差を電卓で出して安全係数表を引き、制約条件を確認して発注量を決める作業は、慣れた担当者でも1SKUに10分前後かかります。100SKUで約16時間、月2回の発注サイクルなら月30時間規模です。スキルに任せると計算部分は数分で終わるため、担当者の時間は「リードタイムの実績値が正しいか」「この仕入先は旧正月で止まるか」といった判断に寄せられます。
金額面のインパクトは欠品の抑制側に出ます。先の化粧水の例では欠品1日あたり9,500円の粗利損失です。3日欠品すれば約28,500円で、これが10SKUで起きれば1回の発注ミスで28万円規模になります。あわせて欠品は楽天やAmazonの検索順位やカート獲得にも影響しますが、この部分は定量化が難しいため、スキルも定性的な併記にとどめています。
限界も正直に押さえておきたいところです。このスキルは時系列モデルや機械学習による需要予測ではなく、直近実績と安全係数で足りる範囲を扱う簡易版です。販売実績がほぼない新商品や、広告投下でグラフが階段状に跳ねる商品では、類似商品の実績を持ち込んだり安全係数を上げたりする人間側の判断が必要になります。標準偏差を実データから出さず「販売数の20〜30%」で仮置きした場合は、その旨を明示する運用にしてください。欠品や滞留がすでに起きている場合の対応設計は別スキルの担当で、在庫処分のシナリオづくりは滞留在庫の処分計画スキル側になります。値付けの検証をあわせて行うなら粗利シミュレーションのスキルと組み合わせると判断が早くなります。
まとめ
このスキルが向くのは、100SKU以上を扱い、仕入リードタイムが1週間以上あり、発注判断が担当者の勘に依存している店舗です。一歩目として、売上上位20%のSKUだけを対象に直近30日の日次販売数を出し、発注点と安全在庫を計算してみてください。現在の在庫水準が発注点に対して厚いのか薄いのかが見えるだけで、次の発注の精度が変わります。
参考文献
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。