Runway は2026年8月31日、画面を1フレームずつ生成する「Solaris」を公開しました。
コードを書かずに、ユーザーの操作に応じて画面そのものをAIが毎フレーム生成する。動画生成AIで知られる Runway が公開した Solaris は、EC事業者にとって「店舗ページは固定レイアウトである」という前提を揺らす発表です。250人が参加した比較調査では、同じ操作要求に対して Solaris の結果が61パーセント支持され、コードで実装した結果の24パーセントを上回りました。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
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Solarisとは何か、何が発表されたのか
Solaris とは、画面を1フレームずつ生成しながらユーザーの操作に応答する「Interface World Model」のことです。Runway が2026年8月31日に公開しました。The Decoder は「コードを実行する代わりに、操作に合わせてユーザーインターフェースを1フレームずつ生成する」と説明しています。
従来のソフトウェアは、デザインをいったんHTMLやCSS、JavaScriptといった中間表現に翻訳してから動かします。Solaris はこの翻訳工程を丸ごと省き、生成された画面そのものがアプリケーションになります。解像度は720pで、クリック、ドラッグ、音声指示に対して連続的に反応します。仕組みとしては、言語モデルが「次に画面がどう変わるべきか」を判断し、ワールドモデルが各フレームを描画する二層構成です。基盤は同社の動画生成モデル Gen-4.5 で、汎用ワールドモデル GWM-1 の延長線上にあります。
Runway は技術的な壁として3点を挙げています。遅延がおよそ0.5秒を超えるとインタラクティブに感じられなくなる速度の問題、セッション全体で文字やレイアウトの一貫性を保つ問題、そして1フレームずつ生成するコストの問題です。この3つを同時に解いたことが Solaris の主張点になっています。
数字で見る比較結果と、日本のEC店舗への論点
比較調査の結果は、生成インターフェースが実用域に近づいていることを示しています。Runway は250人の参加者に30種類の操作例を提示し、約7,500件の一対比較を集めました。同じ画像と同じ操作指示を与えたうえで、Solaris と Claude Opus 5 が生成したコード実装を比べた結果、指示への忠実さでは Solaris が61パーセント、コード実装が24パーセント、同等が13パーセントでした。シーン内での自然な振る舞いでは差が広がり、Solaris が71パーセント、コード実装が21パーセント、同等が6パーセントとなっています。

もう一方の実験では、30種類の画面をスクリーンショット1枚から復元させる課題で、GPT-4o、Gemini 2.5 Pro、Claude Fable 5 を評価しました。視覚的な複雑さが増すほど、どのモデルでも復元品質が落ちたと報告されています。デザインを言語やコードに翻訳する時点で情報が失われる、という主張の裏づけです。
日本のEC事業者にとっての論点は3つあります。第一に、店舗ページの設計思想です。Runway は「ストアフロントは全訪問者が同じものを見る固定レイアウトではなくなり、ブランドの同一性を保ちながら個人ごとに変わる生成環境になる」と述べています。楽天市場のRMSやShopifyのテーマは、テンプレートを組んで全員に同じ画面を配信する構造ですから、この前提が変わればページ制作の外注単価も内製体制も組み替えが必要になります。
第二に、AIエージェント対策です。Runway は、言語モデルがホテル予約や食品注文といった操作を苦手とする理由を、固定レイアウトで学習しているため少しでも構造が違うサイトに適応できない点にあると指摘し、コンピュータ操作タスクの研究を引いています。これは、うるチカラで以前取り上げたAI代理購入が99ポイント変動した検証とも重なる話で、エージェントが揺れる画面に慣れていく方向に進むなら、店舗側が構造化データを整える意味はむしろ増します。
第三に、法令とアクセシビリティです。生成された画面で商品を試着させる体験は魅力的ですが、実物と異なる見え方を提示すれば景品表示法の優良誤認に触れる恐れがあります。Amazon のメイン画像が純白背景の実写を求めているように、プラットフォーム側の画像規約とも衝突しかねません。Runway 自身も、生成インターフェースがスクリーンリーダーなどの支援技術と連携できるかは未解決だと明記しています。日本のウェブアクセシビリティ規格であるJIS X 8341-3への適合を求められる場面では、現時点で採用は難しいと考えるのが妥当です。
現時点でやるべきこと、やらなくていいこと
結論から言えば、いま導入を検討する段階ではありません。Solaris は一般提供されておらず、APIも公開ウェイトもなく、早期アクセスはフォーム申請制の研究プロジェクトです。Runway 自身が、文字の可読性、長時間セッションの一貫性、もっともらしく間違った結果が出るリスク、支援技術との統合を未解決課題として挙げています。商用のEC画面で最も重要な価格や在庫の表記が揺れる状態では、実務投入はできません。
そのうえで、いま手を打てることが3つあります。ひとつは、生成の起点となる素材の整備です。Solaris は「開始フレームを実在の商品画像や参考素材で構成することでシーンを現実に接地させる」設計になっています。つまり、高解像度の商品画像、色違いやサイズ違いの網羅、素材感が分かるカットといった資産の厚みが、そのまま生成品質の上限になります。これは今日から積める投資です。
ふたつめは、パーソナライズの前段にある顧客データの整理です。画面が個人ごとに変わる世界では、何を出し分けるかの判断材料が要ります。うるチカラではNetflixが推薦ロジックを言語モデルに置き換える検証やワールドモデルで顧客行動を予測する研究も取り上げましたが、共通するのは購買履歴と行動ログの粒度が成果を決めるという点です。
みっつめは、既存のAI活用でUI制作の工数を先に削ることです。生成インターフェースが実用化する前に、モックアップ作成や画面設計の段階でAIを使う手は既にあります。うるチカラで解説したClaude Codeのdesignコマンドのように、コードとして動く形で画面案を出す方法は今日から使えます。
まとめ
Solaris は、EC店舗の画面を「作るもの」から「生成されるもの」に変える可能性を示した研究成果です。ただし現時点では研究段階で、文字の安定性とアクセシビリティに未解決の課題が残ります。日本のEC事業者が今やるべきは導入検討ではなく、商品画像資産の整備と顧客データの粒度向上という、どの技術が来ても効く土台づくりです。
参考文献
- Runway|Introducing Solaris
- The Decoder|Runway’s Solaris is an AI system that generates software interfaces in real time
- Runway|Introducing Runway Gen-4.5
- Runway|Introducing Runway GWM-1
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。