米国が2026年8月、外国製ドローンと先進ロボットへの関税と規制を強化しました。
TechCrunchによると、米国は2026年7月から8月にかけて外国製の先進ロボットシステムへの規制を強め、輸入ドローンとその部品に高関税を課しました。いずれも国家安全保障を理由としたものです。一方で中国メーカーはヒューマノイドロボットの世界出荷で上位5社が86%を占めており、規制だけでは製造規模の差は埋まりません。倉庫自動化やドローン配送を検討しているEC事業者にとって、調達先の選択肢が地域ごとに分かれていく変化は他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:ドローン関税は9月発効、部品は2027年に追加
今回の動きは、関税と通信規制という2つの経路で同時に進んでいます。ホワイトハウスは2026年8月、ドローンおよびその部品・構成品への関税措置を公表しました。ドローン本体への関税は2026年9月に発効し、部品への追加関税は2027年に続く予定です。
もう一方の経路が、米連邦通信委員会(FCC)が管理するCovered Listです。2021年に設けられたこのリストは、当初はHuaweiやZTE、Hikvisionといった通信・監視機器メーカーを対象にしていましたが、その後に外国製ドローンへ拡大し、直近では先進ロボット機器まで対象に含める決定が下されました。米国内で設計・組立を行うAgility Roboticsは7月のFCCの決定を歓迎する姿勢を示しており、規制が国内メーカーの追い風になるという見方も出ています。
ここで押さえておきたいのは、規制対象が「軍事用ドローン」のような限定的な領域ではなく、産業用ロボットや監視機器まで広がっている点です。物流倉庫で使われる自律搬送ロボットや、店舗・倉庫の防犯カメラも、供給元によっては同じ枠組みの影響下に入っていきます。
中国が握る86%:規制ではコストカーブは変えられない
規制強化の効果を測るうえで無視できないのが、製造規模の差です。調査会社Counterpointのレポートによると、2026年上半期のヒューマノイドロボットの世界出荷台数は2万2,000台に達し、その大半を中国メーカーが占めました。出荷台数上位5社であるAgiBot、Unitree、Galbot、UBTECH、Leju Roboticsはすべて中国企業で、5社合計で世界出荷の86%を握っています。
この差は自己強化的に働きます。価格が下がれば導入台数が増え、実運用データが集まり、精度が上がる。生産量が増えればさらにコストが下がる。TDK VenturesのAnkur Saxenaは、米国がフロンティアAI・ソフトウェア・半導体で先行する一方、中国は製造規模とサプライチェーンの厚み、コストで先行していると整理したうえで、「制裁でコストカーブを回避することはできません。上回るには自ら作るしかありません」と述べています(TechCrunch)。
Counterpointの主席アナリストSoumen Mandalは、中国のヒューマノイドメーカーが欧州・東南アジア・中南米・中東といった、人手不足が深刻で価格に敏感な市場を狙っていると指摘します。中国のEVメーカーがたどった道筋、つまり国内で規模を作り、海外に広げ、最終的に現地生産を立ち上げる流れをロボットでも繰り返すという見立てです。ドローン分野では、NDAA準拠の米国製システムを軸とする市場と、低コスト大量生産の中国製市場という二重構造がすでに生まれつつあります。
日本のEC事業者が見ておくべき3つの論点
第一に、倉庫自動化ロボットの調達判断です。日本の物流現場で導入が進む自律搬送ロボットやピッキング支援機器には中国製の部品が広く使われています。米国の規制はそのまま日本に適用されるものではありませんが、調達先の企業が米国市場向けの製品ラインを分けはじめると、供給リードタイムや価格改定に波及する可能性があります。見積もり取得の際に、製造国と部品構成、供給の安定性を確認する項目を追加しておく価値はあります。
第二に、価格低下の恩恵をどこで受けるかです。中国メーカーが米国以外の市場に販路を広げるのであれば、日本を含むアジア市場では選択肢が増え、価格競争が進む展開もあり得ます。ただし現時点で日本市場の価格がどう動くかを示す一次データはなく、この点は要確認です。中小規模のEC事業者にとっては、いま高額な投資を急ぐより、2027年の部品関税発効前後で市場がどう再編されるかを見極める時間的余裕があります。
第三に、日本メーカーの立ち位置です。TechCrunchの記事では、日本・台湾・韓国が低コストの中国製と高価格の米国製の中間を狙う構図が示されています。産業用ロボットの蓄積を持つ日本や、Boston Dynamicsを傘下に持つ韓国のHyundai、ロボティクスに投資するトヨタなどが該当します。国内サプライヤーから調達する選択肢が、価格ではなく供給の安定性という軸で再評価される可能性があります。
なお、ドローン配送については、Heven AeroTechのBentzion Levinsonが次の競争軸を「次世代のエネルギーとペイロードのアーキテクチャ」と表現しており、バッテリーの制約が実用化の鍵になると指摘しています。日本での商用ドローン配送はまだ限定的な実証段階にあり、EC事業者が短期のKPIに織り込む段階ではありません。
まとめ
米国の規制と関税は米国市場を守る一方で、中国の製造規模とコスト優位そのものには届いていません。結果として起きるのは米中の完全な分断ではなく、地域ごとに供給網が分かれる再編です。日本のEC事業者にとって当面の実務は、倉庫自動化機器の調達時に製造国と供給安定性を確認項目に加えること、そして2027年の部品関税までの動きを見てから大型投資を判断することです。
参考文献
- TechCrunch: The U.S. is building barriers around drones and robots, but China has scale to get around them
- The White House: Adjusting Imports of Unmanned Aircraft Systems and Unmanned Aircraft Systems Components Into the United States
- FCC: List of Equipment and Services Covered By Section 2 of The Secure Networks Act
- FCC: 先進ロボット機器に関する決定文書(DOC-423682A1)
- Counterpoint Research: Global Humanoid Robot Shipments Soar Nearly 300% YoY in H1 2026
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。