AI検索がアフィリエイトを飲み込む、EC事業者が今読むべき3つの論点

アフィリエイトマーケティングをAIが再編。AI検索が顧客の検討フェーズを圧縮し送客リンクの余地が縮小する中、日本のEC事業者がアフィリエイトとAI露出を地続きで捉えるための3つの論点と初動を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

アフィリエイトは米国EC売上の柱に育ちましたが、その成長の足元でAIが取引の構造そのものを書き換え始めています。生成AIが顧客の比較・検討フェーズを一つのプロンプトに圧縮し、これまで送客を担ってきた媒体やアフィリエイターが流通経路から外されつつあります。Modern Retailが公開したポッドキャストの読者質問回をもとに、日本のEC事業者が今おさえるべきアフィリエイトとAI検索の論点を整理します。

何が起きているか、アフィリエイト市場の急拡大とAIの介入

まず市場規模の前提を押さえます。調査会社eMarketerが2025年9月に示した推計では、アフィリエイトマーケティングは同年に米国のEC売上で2100億ドル超を生み出し、2028年には2870億ドルを超える見込みとされています。デジタルマーケティングのなかでも屈指の伸びを見せている領域です。

その急成長と並行して、AIがアフィリエイトの前提を揺らし始めています。番組の共同ホストであるGabriela BarkhoとMelissa Danielsは、リスナーから「AIは購買までの導線をどう変えるのか」「ブラウザ検索と比べて、ブランドはLLM上でどう表示されるのか」といった質問を多数受けたと話します。注目すべきは、AIがブランドの自社発信よりも、第三者の声を優先して引用しているという指摘です。Barkhoは「AIはRedditやInstagram、各種SNSやフォーラム上のオーガニックな声から拾っている。エージェントがそれらを最も信頼できると判断しているからだ。ブランドが自分について語る情報は優先順位の最下位にある」と述べています。

ここから導かれる重要な変化が、いわゆる「カスタマージャーニーの中間の消失」です。Danielsは「AIがジャーニーの中間を圧縮したことで、これまで複数サイトを見て回っていた実験・発見・比較検討のフェーズが、一つのプロンプトと一つの回答のなかで完結するようになった。これがアフィリエイトを機能させる余地を縮めている」と語ります。検討の場が消えれば、その途中に置かれていた送客リンクの出番も減るという理屈です。

日本のEC事業者にとっての論点、アフィリエイトとAI露出は地続きになる

この変化は、A8.netや楽天アフィリエイト、もしもアフィリエイトといったASPを使ってきた日本のEC事業者にも直結します。ポイントは、アフィリエイトとAI検索での露出(いわゆるLLMOやAIO)が、もはや別々の施策ではなくなりつつあるということです。番組でも、第三者からの言及や推薦が多いブランドほど、AIの検索結果に登場しやすくなる可能性が指摘されています。つまり、信頼できる発信者にどれだけ自然な形で取り上げられているかが、人間経由の送客だけでなくAI経由の露出まで左右し始めているのです。

裏を返せば、自社サイトやモール内の商品説明文をいくら作り込んでも、それは「ブランドの自社発信」としてAIの優先順位の最下位に置かれかねません。日本の事業者がここで考えるべきは、レビュー、SNS、コミュニティ、比較記事といった「外側の声」をどう健全に積み上げるかという視点です。サクラレビューや不自然なステマは景表法・ステマ規制の観点で論外ですが、実際の利用者やジャンルに精通した発信者と中長期で関係を築く取り組みは、これまで以上に投資対象として意味を持ち始めています。

媒体選びの基準も変わります。番組では、フォロワーであろうとなかろうと、商品とのつながりが自然な相手を選ぶことが起点だと強調されました。Barkhoは「Z世代や若い層は不誠実なキャンペーンをすぐ見抜く。だからこそ、すでにそのブランドのファンである人を探すことが出発点になる」と話します。報酬額や規模よりも、推薦の必然性をどう担保するかが問われています。

新チャネルとしてのニュースレター、そして初動アクション

もう一つの焦点が、ニュースレター発の新しい送客経路です。番組では、マーケティング会社PltfrmのシニアバイスプレジデントであるDelaney Del Mundoの見解として、約3500万人の利用者を抱え、従来のマーケティングメールより開封率が高い傾向のあるニュースレタープラットフォームが、アフィリエイトの有望な舞台になりうると紹介されました。具体例として、靴ブランドのMephistoが人気の書き手Jake Woolfと組み、特定カラーのプロモコードを配ったところ、クリックが集中してその商品が売り切れたといいます。Barkhoは「適切な書き手が適切な読者に届いた事例だった」と振り返ります。日本でもメールマガジンやnote、LINEなど、信頼関係のある発信者経由の購買は十分に再現の余地があります。

体制面の示唆も実務的です。クリエイター施策、媒体施策、クーポン施策をすべて一人で回せるかという質問に対し、二人は「予算が許すなら別々の担当やエージェンシーに分けるのが理想だが、多くのブランドは同じ枠で扱っている」と答えています。日本の中小EC事業者であれば、まずは自社商品と相性の良い一つのチャネルに焦点を絞り、そこで成功パターンを作ってから横に広げる進め方が現実的でしょう。

今日から動くなら、第一に、自社が今どの第三者の声でAIに引用されているかを、ChatGPTやClaude、Geminiに自社名やジャンル名を尋ねて確認することです。第二に、実際のファンや専門性のある発信者との関係づくりを、単発の報酬ではなく継続前提で設計し直すこと。第三に、アフィリエイトの成果を「クリック経由の売上」だけでなく「AI検索での露出」という指標でも見始めることです。なお、AI経由の露出がどこまで売上に結びつくかはまだ黎明期であり、断定は避け、自社データで検証していく姿勢が欠かせません。

まとめ

アフィリエイトは伸び続ける一方で、AIが顧客の検討フェーズを一つの回答に圧縮し、送客リンクの居場所を狭め始めています。日本のEC事業者にとっての要点は、人間への送客とAIへの露出が地続きになったという認識の転換です。自社の宣伝よりも、信頼できる第三者の声をいかに健全に積み上げるか。そこに資源を寄せられた事業者が、AI時代のアフィリエイトで一歩先に立つことになります。

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引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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