エージェンティック検索とは、AIとの会話から買い物が始まる入口のことです。
買い物の入口が、検索窓からAIとの会話へ移り始めています。Salesforceが2026年7月28日に公開した調査によると、購買行動の最初の一歩としてエージェンティック検索が使われる比率は前年比200%に伸びました。一方で、エージェント型AIを実際に使っている企業はまだ28%にとどまります。消費者の行動変化に事業側が追いついていない、という構図がはっきり数字に出た調査です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の目線で読み解きます。

AIチャット経由の流入だけが150%から428%伸びていた
今回の調査で最も重いのは、全体の流入とAIチャット経由の流入で伸び方が完全に分かれていた点です。Salesforceが世界15億人以上の買い物客の行動を分析したところ、AIチャットからの参照流入は測定した四半期すべてで前年比150%から428%伸びていました。同じ期間の全体流入は1桁から低い2桁の伸びにとどまっています。つまり流入の総量ではほとんど変化が見えず、内訳を分けて数えたときだけ移動が見える状態です。
消費者側の回答も同じ方向を向いています。2025年8月から2026年5月にかけて、自社サイトやアプリなど自前の資産で商品を見つける比率は7%下がり、従来型の検索は15%下がりました。その裏で、AIアシスタントやSNS上のAI、デリバリーアプリといった新しい経路を選ぶ比率が38%伸びています。調査はコマース従事者3,450人(20カ国・13業種、2026年4月10日から6月4日)と消費者4,689人(8カ国、5月12日から18日)への調査に、2024年第1四半期から2026年第1四半期までの37カ国の行動データを重ねたものです。日本が対象国に含まれるかは公開情報から確認できないため、この点は要確認としておきます。
Salesforceのエージェンティックコマース責任者 Caila Schwartz は「その最初の会話に入っていなければ、旅が始まる前に見えない存在になっています」と述べています。出典
導入率28%と指標定義32%のギャップが本当の論点です
日本のEC事業者にとって重要なのは、200%という数字より、事業側の準備の遅れを示す数字のほうです。エージェント型AIを現在使っている組織は28%、未導入企業のうち44%が半年以内の導入を計画しています。すでに使っている組織では検証段階にとどまっているのは4%だけで、最も多いのが部門横断で拡大している層(35%)でした。動き出した企業は一気にスケールに入っています。

ところが、AIの成果指標とKPIを完全に定義できている組織は32%しかありません。成果を語りながら、何を成果と呼ぶかが決まっていない状態です。土台側の数字はさらに厳しく、顧客データが販売・サービス・マーケティング・コマースで完全に統合されている組織は27%、過去2年でベンダー数が増えたと答えた責任者は78%に達します。複数チャネルを運用する組織で不具合がないと答えたのはわずか2%で、多いのは価格や販促の不一致(41%)と在庫のリアルタイム同期の失敗(40%)でした。
この2つは日本の店舗運営でそのまま起きています。楽天市場のRMS、Amazonのセラーセントラル、自社のShopifyやBASEで価格と在庫を別々に持っていれば、モール間の価格差や在庫ずれは構造的に発生します。価格表示の不一致はAI経由の比較でも露出に影響しますし、表示上の割引の見せ方は法的リスクにもつながります。参考として、表示価格の見せ方をめぐる米大手2社への集団提訴も直近の論点です。
Salesforceが挙げた企業側の一般的な打ち手は、商品コンテンツの質を上げる、会話型の問い合わせに合わせて内容を最適化する、AI検索側にデータフィードを出す、自然言語で読まれる前提で商品説明を書き直す、の4つでした。日本の現場に置き換えれば、楽天の商品名とAmazonの商品情報の書き方そのものです。商品名の設計はAmazonの商品名75文字とハイライトの整理で扱っています。
今週から測る3つの指標
1つ目は、AI経由の流入を分けて数えることです。Google Analytics 4の参照元で chatgpt.com、perplexity.ai、gemini.google.com、copilot.microsoft.com を個別に切り出し、週次で追います。全体の流入が横ばいでも、この列だけが伸びているなら入口はすでに動いています。逆にこの列がゼロに近いなら、AI側に自社の情報が渡っていない可能性を先に疑うべきです。AI検索側での見え方の測り方はAIショッピングエージェントでの露出比較、検索結果側の変化はAI Overviews経由の流入変化も合わせて確認してください。
2つ目は、AI経由の転換率と客単価を通常流入と別建てで見ることです。Salesforceは2025年の年末商戦データとして、AI経由の流入はSNS経由の8倍の率で成約したと報告しています。母数が小さいうちは率が跳ねやすいので、率だけで判断せず件数と金額をあわせて記録し、3週続けて同じ傾向が出るかで見極めます。
3つ目は、商品情報の会話対応度です。「防水で1万5千円以下の登山靴」のような条件付きの質問に答えるには、素材、防水等級、重量、想定用途といった属性が本文に文章として書かれている必要があります。自社の主力10商品で、そうした質問に答えられるかを人の目で確認するだけでも不足箇所が見えます。
そして着手前にKPIの定義を決めておくことです。指標を決めていない企業が7割近いという状況は、逆に言えば、定義を先に置くだけで判断の速さで差がつくということでもあります。
まとめ
AIとの会話から買い物が始まる比率は前年比200%に伸び、AIチャット経由の流入だけが150%から428%の伸びを示しました。一方で導入企業は28%、成果指標を定義できている企業は32%です。日本のEC事業者がまずやるべきは、AI経由の流入を分けて数えること、その転換率と客単価を別建てで見ること、商品情報が条件付きの質問に答えられる状態かを確認することの3点です。大きな投資より、測り方を先に決めることが効きます。
参考文献
- Salesforce: Shopping’s New First Step: Agentic Search Grows 200% as Purchase Journeys Start in AI Chats
- Salesforce: State of Commerce(第4版レポート)
- Salesforce: As AI Agents Transform Commerce, Salesforce Unleashes Its Biggest Agentforce Commerce Release Yet
- Salesforce: Holiday Season Rakes in Record $1.29T for Retailers
- Salesforce: AI Readiness SEO Checklist
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: Salesforce
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。