Stripeは2026年9月、AIエージェントによるLink経由の取引件数が38倍、決済額が20倍に増えたと明らかにしました。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。AIエージェント決済とは、ユーザーに代わってAIが商品を探し、カード情報を使って購入まで完了させる仕組みのことです。
AIエージェントの購入は何が起きているのか
The Decoderは、Upstarts Mediaの報道をもとに、StripeのAIエージェント向け決済の伸びを伝えました。AIエージェントがユーザーの代わりに買い物をする際、Stripeの決済サービスLinkを使うケースが増えており、9月の取引件数は38倍、決済額は20倍になったとのことです。
ただしStripeは、実際の購入件数や金額の絶対値を公表していません。報道によると成長は小さな母数から始まっており、倍率の大きさがそのまま市場規模を示すわけではない点には注意が必要です。Stripeの幹部であるDan Hill氏も、市場はまだ非常に初期段階だと述べています。
分析時点でLinkを使っていたエージェントは約70でしたが、現在は約200に増え、MetaのMuseやGrok Botも含まれるとされています。エージェント1件あたりの支出は平均で約100ドルが多い一方、航空券や数千ドルの家具の購入を任せるユーザーもいるそうです。
内訳では、取引件数の36%、取引額の32%を小売が占めました。旅行は取引額の28%で2番目です。AIが代わりに買う商品の3割強が小売だという点は、物販を扱うEC事業者にとって無視できない数字です。
日本のEC事業者にとっての論点
結論から言うと、AIエージェント経由の購入は、日本のEC事業者にとって「いつか来る話」から「決済と商品情報の準備を始める話」に変わりつつあります。ただし今回の数字は米国のStripe Linkでの動きであり、日本の楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングで同じ規模の購入が起きているという根拠はありません。日本での提供範囲は要確認です。
1つ目の論点は、カード情報の扱いです。Linkはエージェントに実際のカード番号を渡さず、購入ごとに別の16桁の番号を発行し、ユーザーが利用上限を設定できるとされています。AIに任せる側の不安を、決済側の仕組みで減らす設計です。日本でもNP後払いやクレジットカードのトークン化が広がっていますが、AIが買い手になる場面を想定した設計はこれからの課題です。
2つ目の論点は、決済手段の主導権です。Hill氏は、Stripeが唯一の選択肢であり続けるわけではないと認め、競合としてPayPalとShopifyのShop Payを挙げました。Shopifyで自社ストアを運営している事業者は、Shop Payの動向がAIエージェント経由の購入に直結する可能性があります。一方、モール出店中心の事業者は、モール側の決済にAIエージェントがどう接続されるかを待つ立場になります。
3つ目の論点は、商品データの質です。AIが商品を選んで買う場合、人間が画像やキャッチコピーで比較するのとは違い、商品名、仕様、価格、在庫、配送条件といった構造化された情報が選ばれやすさを左右します。AnthropicとOpenAIもLinkを利用していますが、エージェントによる購入にはまだ使っていないとされており、主要なAI企業の参入前に動きが始まっている段階だといえます。
今後の展望と初動アクション
今後は、AIエージェントの数が増え、1件あたり約100ドルという少額購入から、旅行や家具のような高額購入へ広がるかどうかが焦点です。Stripeが数字を公表しない以上、断定的な市場予測はできません。次に数字が出るタイミングを待ちつつ、小さく準備を始めるのが現実的です。
日本のEC事業者が今できる初動は次の3点です。まず、商品ページの仕様、サイズ、素材、送料、返品条件を文章として正確に揃え、AIが読み取りやすい状態にしておくこと。次に、Shopifyを使っている場合はShop Payなど決済設定の更新情報を定期的に確認すること。最後に、AIエージェント経由の注文が入った場合に備え、不正対策と問い合わせ対応の流れを見直しておくことです。
まとめ
Stripe Linkでは、AIエージェント経由の取引件数が38倍、決済額が20倍に伸び、小売が取引件数の36%を占めました。ただし絶対数は非公開で、市場はまだ初期段階です。日本のEC事業者は、過度に身構えるより、商品データの整備と決済周りの情報収集という低コストの準備から始めるのが得策です。
参考文献
- The Decoder: Stripe says AI agent purchases are adding up, but it won’t share the numbers
- Upstarts Media: Data, Stripe Link and how AI assistants spend
- Stripe Link 公式サイト
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。