サムスンとSKハイニックスが韓国政府とともに総額約5,900億ドルの半導体投資に踏み切ると、The Decoderが2026年6月29日に報じました。背景にあるのはAIデータセンター向けの猛烈なメモリ需要で、増産が間に合わず、メモリ価格は2026年第3四半期に最大50%上昇するとの予測も出ています。本記事ではこの動きを整理したうえで、PCやスマートフォン、ストレージなど電子機器を扱う日本のEC事業者が、仕入れと価格設定でいま考えるべき論点をまとめます。
何が起きたか:5,900億ドル投資とメモリ価格の急騰
報道によると、サムスンとSKハイニックスは韓国政府の後押しを受け、半導体生産の拡大に総額約5,900億ドルを投じる計画です。内訳は、国内南西部に建設する4つの新工場へ800兆ウォン、パッケージング拠点へ81兆ウォン、次世代チップ開発へ15年間で30兆ウォンとされます。李在明(イ・ジェミョン)大統領が掲げる地域経済の活性化策の一環で、AIデータセンターからの需要急増が投資を後押ししています。この投資規模は複数の報道機関でも確認でき、韓国政府は911兆ウォン規模の半導体投資計画として打ち出しています(KED Global)。
問題は、増産が市場に効いてくるまでの時間差です。Jefferiesの分析では、メモリ価格は2026年第3四半期に前四半期比で40〜50%、第4四半期にさらに30〜40%上昇し、2027年も40〜45%の値上がりが続くと予測されています。価格が落ち着くのは新たな生産能力が立ち上がる2028年以降になる見込みです。サムスンとSKハイニックスはAIワークロードが依存する広帯域メモリ(HBM)で世界シェアの約8割を握っており、その動向が市場全体を左右します。すでにAppleはMacとMacBookの価格を引き上げており、メモリ価格の上昇は消費者向け電子機器の値上げという形で表面化し始めています。
日本のEC事業者にとっての論点:仕入れコストの直撃
このニュースは、AI業界の話にとどまりません。クラウド事業者やAI企業が長期契約で生産能力の多くを押さえると、消費者向け機器に回るメモリが減り、価格が押し上げられます。PC本体、メモリモジュール、SSDやUSBメモリなどのストレージ、スマートフォン、ゲーム機といった製品を楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングで扱う日本のEC事業者にとっては、仕入れ原価が継続的に上がる局面に入ったと考えるのが妥当です。
特にメモリやSSD単体を販売する事業者は影響が直接的で、第3四半期以降は仕入れ値の改定が相次ぐ可能性があります。価格据え置きのまま販売を続ければ利益率が削られ、かといって値上げが遅れれば在庫を高値で抱えるリスクもあります。為替の動向次第では、円建ての輸入コストがさらに上振れする点にも注意が必要です。なお、四半期ごとの上昇率はあくまで現時点の予測であり、実際の店頭価格への転嫁時期や幅は製品やメーカーによって異なるため、自店の主要仕入れ先の動きを個別に確認する姿勢が欠かせません。
今後の展望と初動アクション
価格上昇が複数四半期にわたって続く前提で、EC事業者は早めに備えを固めておきたいところです。まず、メモリやストレージなど影響の大きい商品の仕入れ価格と販売価格を定期的に見直し、利益率が一定水準を下回る前に価格改定の判断ラインを決めておくこと。次に、値上がりが見込まれる主力商品については、無理のない範囲で在庫を前倒しで確保し、急な仕入れ停止や納期遅延に備えること。さらに、価格に敏感な顧客が離れないよう、容量違いのバリエーション提案やセット販売など、単純な値上げ以外の見せ方を用意しておくことが有効です。
中長期では、メモリ価格に左右されにくい周辺アクセサリーや、価格よりも保証やサポートで選ばれる商品へ品揃えの軸を広げる発想も検討に値します。生成AIを使えば、仕入れ価格の変動を踏まえた販売価格のシミュレーションや、値上げ時の商品ページ文面の作成も短時間で進められます。
まとめ
AIデータセンター需要を起点としたメモリ価格の高騰は、電子機器を扱う日本のEC事業者の仕入れコストを直撃します。価格改定ラインの設定、計画的な在庫確保、値上げ以外の見せ方という三つの備えを早めに整え、利益率を守りながら需要を取りこぼさない運営を心がけたいところです。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。