Perplexity はインドでの1年間無料配布が終わった後も、アプリ内課金収益が約60%増えました。
TechCrunchが2026年8月18日に報じたところによると、Perplexity がインド通信大手 Airtel と組んで実施した年額約200ドルのPro版1年間無料配布は、提供期間中にダウンロードを9倍以上に押し上げ、配布終了後もアプリ内課金収益が約60%増加しました。無料配布は「配りきったら終わり」で終わることが多い施策ですが、今回はその後の数字が公開された珍しいケースです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。無料お試しやクーポン配布を日常的に使う日本のEC事業者にとって、示唆の多い実験結果です。

何が起きたか:3億6,000万人に年額200ドルのPro版を12か月無料
結論から言えば、Perplexity は世界最大級の規模で「有料プランのばらまき」を試し、離脱後の残存率と収益の実データを手に入れました。2025年7月、Perplexity はインド2位の通信事業者 Airtel と提携し、同社の3億6,000万人の契約者に対し、通常年額約200ドルの Perplexity Pro を12か月無料で提供しました。新規申込の受付は2026年1月16日に終了しています。
効果は即座に出ました。調査会社 Sensor Tower が TechCrunch に提供したデータでは、2025年7月のインドでのダウンロードは590万件で前月比625%増、2025年上半期の累計540万件を1か月で超えました。受付が開いていた7か月間では合計5,600万ダウンロードとなり、直前の7か月の9倍以上です。月間アクティブユーザーは2025年7月に890万人へ倍増し、10月には2,200万人でピークを打ちました。
その反動も明確です。受付が閉じた後の2026年2月から7月までのダウンロードは330万件にとどまり、直前6か月比で90%以上減少しました。
日本のEC事業者にとっての論点:無料の後に何が残るか
注目すべきは、ダウンロードが9割減った後も、売上が落ちていない点です。Sensor Tower の推計では、2026年2月から8月中旬までのインドでのアプリ内課金・サブスク収益は、無料配布を受付していた期間と比べて約60%増えています。最初の無料期間が切れ始めた7月18日から8月12日にかけても、1日あたりの平均課金収益は直前30日比で9%高く、2026年上半期の平均比では27%高い水準でした。月間アクティブユーザーも、ピーク比では37%減の1,400万人ですが、配布前の2025年上半期平均である約260万人と比べれば5倍以上を維持しています。
別の調査会社 Appfigures のデータも同じ方向を示しています。配布開始前の週は1日あたり約11,200ダウンロードだったものが、開始1週目には約22万3,000件へと20倍に跳ね、9月中旬から10月中旬には1日約30万5,000件に達しました。同社が算出したインドでのモバイル純収益は、2025年1月の約3万4,000ドルから2025年12月に7万ドル、2026年7月には15万6,000ドルへ伸びています。
ただし、ここは慎重に読む必要があります。無料サブスクは自動更新の設定だったため、解約し忘れた利用者の課金が数字を押し上げている可能性を、Sensor Tower は排除できないと述べています。「元Airtel利用者が自ら有料に切り替えた」と断定できる材料はまだありません。日本のEC事業者が自社の無料お試しやサブスクを設計するときも、自動更新による売上と、納得して継続した売上を分けて見ないと、翌年の解約率で足元をすくわれます。
初動アクション:日本のECで真似できる部分、真似すべきでない部分
まず整理したいのは、この施策の本質が「値引き」ではなく「配布チャネルの借用」だという点です。Perplexity は自社で3億6,000万人を集めたのではなく、通信キャリアの契約者基盤に相乗りしました。日本のECに置き換えるなら、単独でクーポンを配るより、楽天スーパーDEALやお買い物マラソンのようにモール側の集客イベントへ乗るほうが、同じ原資でも到達人数が桁違いになります。越境ECでも、現地の決済事業者やキャリアとの提携は同じ構図で効きます。
次に、無料期間の長さと自動更新の設計です。今回は12か月という長さが、利用習慣を作るうえで効いた可能性があります。一方で、自動更新に頼った回収は短期の数字を良く見せますが、解約時の不満とレビュー低下を招きます。無料期間終了の告知タイミング、解約導線のわかりやすさ、継続理由の提示を、施策開始時点でセットにしておくことをおすすめします。
そして測定です。Perplexity のケースでも、ダウンロード数という見かけの指標と、課金収益という実利の指標が真逆の動きをしました。EC事業者の販促でも、クーポン利用件数ではなく、配布後3か月のリピート率と粗利で評価する設計にしておかないと、判断を誤ります。うるチカラでもAI検索経由の流入とCVRや、AIツールのインド現地価格戦略、無料枠を軸にしたモデル選択を取り上げてきましたが、共通するのは「無料で入った人がどこで有料に変わるか」を先に決めておくことです。
なお、この動きは Perplexity だけのものではありません。TechCrunch によれば、OpenAI は低価格プランの ChatGPT Go をインドで1年間無料にし、Google も Reliance Jio の利用者向けに AI Pro を18か月無料で提供しています。生成AI各社がインドで同じ賭けに出ている以上、後続の各社が同じ回収曲線を描けるかは、今後数か月で判明します。Perplexity は TechCrunch の取材に対しコメントしていません。
まとめ
無料配布は、配った瞬間の数字ではなく、切れた後の数字で評価するものです。Perplexity のインドでの実験は、ダウンロードが90%減っても課金収益が60%増えるという、直感に反する結果を残しました。日本のEC事業者が無料お試しやクーポンを設計するときは、到達チャネルの借り方、無料期間と自動更新の扱い、そして評価指標の3点を先に固めておくと、同じ原資でも残るものが変わります。
参考文献
- TechCrunch: Perplexity’s free AI offer left it with millions more users in India
- Airtel: Airtel partners with Perplexity, powers every single of its 360mn customers with Perplexity Pro
- Perplexity Help Center: Perplexity Pro Airtel promo
- TechCrunch: OpenAI offers free ChatGPT Go for one year to all users in India
- TechCrunch: Google partners with Ambani’s Reliance to offer free AI Pro access to millions of Jio users in India
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。