OpenAIは2026年8月6日、ChatGPTの無料ユーザーのデフォルトをGPT-5.6 Lunaに変更すると発表しました。
有料のPlus・Proユーザー向けにはGPT-5.6 Solが更新され、回答の思考量を調整するスライダーが追加されます。無料とGoのユーザーは今週後半にGPT-5.6 Lunaがデフォルトとなり、翌週にはテキストチャットが無制限になります。店舗の運営スタッフが無料アカウントでChatGPTを使っている現場では、使えるモデルの中身が静かに入れ替わるという意味を持つ変更です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
有料は思考量スライダー、無料は小型モデルへ
今回の更新は、有料と無料で方向がはっきり分かれています。The Decoderによれば、GPT-5.6 Solは不要な詳細と過剰な装飾を削り、簡単な質問には直接答え、複雑な作業では要点が見つけやすい形で長く答えるよう調整されました。あわせて、どれだけ考えさせるかを5段階で選ぶスライダーがWeb・モバイル・デスクトップに追加されます。
事実の正確さについても数字が示されています。OpenAIが金融・医療・法律の質問群で実施した社内評価では、少なくとも1つの事実誤りを含む回答の割合が、GPT-5.5 Instant比でGPT-5.6 Lunaが約62%、GPT-5.6 Solが約68%減ったとされています。ただしこの数値は第三者による独立検証を経ていないため、社内基準としてそのまま採用するのは早いというのが現時点の見方です。
無料側の変更は二段構えです。GPT-5.6 Lunaが今週後半にデフォルトとなり、無制限のテキストチャットと、難しい質問で長く考えさせる「Think」ボタンが翌週に続きます。ファイルアップロードや画像生成といったツール類の制限はそのまま残ります。注意したいのは、Thinkボタンが押されても動くのはLunaのままで、上位モデルに切り替わるわけではないという点です。回数の制約は緩んだ一方で、無料アカウントから到達できる推論の上限は下がった格好になります。
なお今回の変更が及ぶのはChatGPTだけで、ChatGPT WorkとCodexで使われるGPT-5.6 Solには手が入っていません。
店舗運営で効いてくるのは「誰がどのモデルで書いたか」
日本のEC事業者にとって影響が大きいのは、無料アカウントの利用が業務に混ざっている場合です。商品説明文の下書き、レビュー返信のたたき台、問い合わせ返信の言い換えといった作業は、有料契約を持たないパート・アルバイトのスタッフが自分のアカウントで回していることが少なくありません。使うモデルが小型のLunaに寄れば、文章としては読めるのに、事実の細部が入れ替わる事故の確率は上がります。
現場で繰り返し見るのは、原産地・素材の混率・容量・保証期間といった、与えていない属性をAIが埋めてしまうパターンです。楽天RMSの商品説明文やAmazonの箇条書きにそのまま流し込むと、景品表示法や薬機法の観点で説明のつかない表記が残ります。モデルの世代が上がっても、与えていない情報を勝手に補完する性質そのものが消えるわけではないという前提は変わりません。この構造についてはオープンLLMのハルシネーション率と誤記載リスクの見極め方で詳しく整理しています。
もう1つは、思考量スライダーの扱いです。5段階のどこに置くかで応答時間もコストも変わるため、「調査や企画は高め、定型の言い換えは低め」といった目安を社内で共有しておかないと、担当者ごとに出力の粒度がばらつきます。タスク別にモデルと設定を割り当てる考え方はタスク別ルーティングでAPI費用を抑える設計と同じ発想で組めます。
今週やっておきたい3つの線引き
第一に、業務で使うアカウントの棚卸しです。誰が有料契約でどのプランを使い、誰が無料アカウントで作業しているかを一覧にします。無料アカウントのままで良い作業と、有料に移すべき作業を分けるだけで、事故の起点はかなり絞れます。
第二に、モデルを問わず通す検証工程の固定です。数値・単位・固有名詞は商品マスタと突き合わせる、断定表現は禁止語リストで機械的に洗う、公開前に人が最終確認する。この3工程を作業手順書に落としておけば、デフォルトモデルが入れ替わっても品質の下限は保てます。
第三に、思考量の目安づくりです。「返信文の言い換えは低め」「競合調査と企画は高め」といった社内の初期値を決め、迷ったときの基準にします。あわせて、無料アカウントでは長考させても上位モデルには届かないという事実を共有しておくと、期待値のずれによる手戻りを減らせます。
まとめ
無料枠が広がったこと自体は歓迎できる変更ですが、EC運営で意味を持つのは回数ではなく、誰がどのモデルで文章を作っているかという点です。アカウントの棚卸しと検証工程の固定を先に済ませ、そのうえで有料プランに移す業務を選ぶ順番が現実的です。
参考文献
- The Decoder・OpenAI improves GPT-5.6 Sol in ChatGPT and restricts free users to its weakest model
- OpenAI・Improving GPT-5.6 Sol in ChatGPT and expanding access to GPT-5.6 Luna for free users
- OpenAI Help Center・ChatGPT release notes
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。