年末商戦の返品率17%|EC返品ポリシーを見直す3つの論点と初動

年末商戦の売上の約17%が返品されるとの米調査を受け、返品ポリシーを期間限定で緩める動きが拡大。日本のEC事業者向けに特定商取引法の返品特約表示、モール別の裁量、初動アクション3点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国の小売各社が、年末商戦に向けて返品ポリシーを一時的に緩める動きを強めています。

返品ポリシーとは、購入後の返品・交換の可否や期間、費用負担を定めた店舗側のルールのことです。9月7日付のModern Retailは、米国のブランドが年末商戦(Q4)に合わせて期間限定の返品ポリシーを導入し始めていると報じました。背景には、ホリデー商戦の売上のうち約17%が返品されるという業界予測があります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者向けに論点を整理して解説します。

何が起きたか:返品17%を前提に、ポリシーを期間限定で組み替える動き

米国では、年末商戦の売上の約17%が返品されると小売各社が見込んでいます。この数字は、返品処理サービスのHappy Returnsと全米小売業協会(NRF)が2025年に共同実施した調査にもとづくものです。

Modern Retailが取材した返品管理サービスLoopのマーケティング担当バイスプレジデント、ジョー・バンセナによれば、通常の30日返品枠ではホリデーシーズンと帰省・旅行の期間をカバーしきれず、期間限定でポリシーを緩めるブランドが増えているといいます。ギフト購入者は「受け取った側が交換に費用を負担しなくて済むか」を見て店を選ぶため、返品ポリシーそのものが集客要因になっているという指摘です。

Loopの調査データでは、消費者の約58%が返品ポリシーを理由にそのブランドから離れた経験があり、92%が返品手数料の有無で買い方が変わると回答しています。バンセナは「返品ポリシーが気に入らなければ、大半の顧客はそもそも買わないか購入を中断する」と述べています。

さらに同記事は、返品を売上機会に変える動きも紹介しています。化粧品ブランドのJones Roadは、交換手続きの途中で買い物を続けた顧客から追加で19万7,000ドルの新規売上を生み、交換対応によって310万ドル分の売上を維持したとされています(いずれもLoop提供データ、米国の事例)。サイズ交換の最中はすでに顧客がサイトに滞在しているため、新規獲得コストをかけずにアップセルできるという発想です。

日本のEC事業者にとっての3つの論点

日本の店舗がそのまま真似できるかというと、前提が異なります。押さえるべき論点は3つあります。

第一に、法律上の前提が米国と違います。日本の通信販売には法定のクーリングオフがなく、返品条件は店舗が定める「返品特約」で決まります。ただし消費者庁の特定商取引法ガイドによれば、広告に返品特約の記載がない場合は、商品を受け取った日から8日間は購入者が申込みの撤回や解除を行えます。また返品特約は最終確認画面にも表示する必要があり、価格と同じ文字サイズにするなど、消費者が容易に認識できる形での表示が求められます。つまり日本では「返品ポリシーを緩める」以前に、まず表示が要件を満たしているかの点検が先です。

第二に、モールごとに裁量の範囲が違います。自社EC(ShopifyやBASEなど)は返品期間も送料負担も自由に設計できますが、モールでは制約が入ります。楽天市場やYahoo!ショッピングでは返品条件を店舗ごとに商品ページへ明記する運用が基本で、Amazonでフルフィルメント by Amazon(FBA)を利用している場合は返品受付がAmazon側のポリシーに沿って処理されます。カテゴリーごとの適用範囲は変わるため、自店の該当条件は各モールの最新ヘルプで要確認です。

第三に、コストの見え方です。返品送料の無料化は損益計算書の上では純粋なコスト増に見えますが、Modern Retailの記事でバンセナが指摘しているのは、転換率の改善・新規顧客の増加・Q4全体の売上増が、返品率のわずかな上昇を上回るという構図です。日本でも年末商戦は楽天スーパーSALE、ブラックフライデー、お買い物マラソンなど値引き施策が集中し、比較検討の材料が価格に偏ります。返品条件は、価格を下げずに購入の心理的ハードルを下げられる数少ないレバーだと言えます。

今後の展望と初動アクション

まず着手すべきは、広告と商品ページでの検証です。Modern Retailの記事では、多数出稿している広告のうち1本だけ「返品無料」の文言を入れたクリエイティブを追加し、クリック率が他を上回るかを見るという方法が紹介されています。日本でも楽天RPPやAmazonスポンサープロダクト広告の文脈では商品名側の制約がありますが、自社ECのMeta広告やGoogle広告なら同じ検証がすぐ試せます。

次に、商品ページのカートボタン付近に返品条件を明記する検証です。前述のとおり日本では返品特約の表示自体が法定要件ですが、それを「小さく書いて済ませる」か「安心材料として見せる」かは店舗の選択です。バンセナによれば、この配置変更のテストはほぼ例外なく売上増につながっているとされています。

三つ目は、返品を接点として使う設計です。交換手続きのページに関連商品を出す、初回購入者には交換時の追加購入に割引を出すといった施策は、日本のモールでは実装の自由度が低いものの、自社ECなら十分に実現できます。

最後に、期間限定という枠組みの利用です。恒久的に返品無料へ切り替えるのではなく、11月から1月中旬までなど期間を区切れば、社内の合意も取りやすく、通年のコスト構造を壊さずに検証できます。

まとめ

年末商戦の返品は避けられないコストであると同時に、購入前の意思決定を左右する販促要素でもあります。日本のEC事業者がまず行うべきは、返品特約の表示が特定商取引法の要件を満たしているかの点検、次にモールごとの裁量範囲の確認、その上で期間限定の緩和を小さく検証することです。値引き以外に打てる手が少ない年末商戦において、返品条件は残された数少ない差別化の余地だと考えられます。

参考文献

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引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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