ガソリン価格の高騰が、消費者の買い物行動をふたたびオンラインへ押し戻しています。米国ではレギュラーガソリンの全国平均が1ガロン4.43ドルまで上がり、外出を控えてネット通販に流れる動きが鮮明になりました。なかでも配送網を厚くしてきたAmazonに支出が集中しつつあるという見立てを、Modern Retailが報じています。本記事では事実関係を整理したうえで、ガソリン高騰局面で日本のEC事業者がとるべき初動を3つにまとめます。
ガソリン高騰で何が起きているか
米国のレギュラーガソリン全国平均は5月時点で1ガロン4.43ドルとなり、前年同時期の3.16ドルから大きく上昇しました。4ドルを超えたのは2022年以来で、背景には米国とイランの軍事衝突による原油供給の混乱があるとされます。この点は今後の情勢次第で変動するため要確認です。
ガソリン代の負担増は、消費者の移動と購買を確実に変えています。位置情報データのPlacer.aiによると、不要不急の買い物を扱う小売店への来店は4週連続で前年割れとなった一方、生活必需品を扱う店舗への来店は4週連続で増加しました。メール配信のOmnisendの調査では、運転を減らすためにオンライン購入を増やす意向を示した消費者がおよそ3分の1にのぼります。Ipsosが約2500人を対象に行った調査でも、44%が運転を控えていると回答しました。
この流れの受け皿になっているのがAmazonです。同社は3月に9万点以上の商品で1時間・3時間配送を広げ、5月には30分配送をうたう「Amazon Now」を米国の数十都市へ拡大しました。CEOのアンディ・ジャシーは、生鮮品を即日で買う利用者は他の顧客よりも購入点数がおよそ3倍多く、支出額は80%多いと説明しています。ガソリンを使って店舗を回るより、まとめてネットで届けてもらう方が合理的だと考える層が増えているわけです。
日本のEC事業者にとっての論点
この動きは対岸の火事ではありません。日本でもガソリン価格は高止まりが続き、補助金の動向しだいで店頭価格が振れる状況です。実店舗への来店が鈍るほど、購買は配送スピードと送料の見えやすいプラットフォームへ集まります。日本でも当日配送やネットスーパーを強化するAmazonに需要が寄りやすく、楽天市場やYahoo!ショッピングの出店者にとっては相対的な配送体験の差が問われます。
見落とせないのが出品者側のコストです。Amazonは米国で4月、フルフィルメント by Amazon(FBA)の出品者に対し3.5%の燃料・物流サーチャージを課しました。日本のAmazon出品者に同様の上乗せが及ぶかは現時点で要確認ですが、燃料費はいずれ配送手数料に跳ね返る費目です。需要がAmazonに集中する一方で出品コストも上がるなら、利益率の設計を前倒しで見直す必要があります。
需要の中身も参考になります。2025年のプライムデーでは販売点数の3分の2が20ドル未満で、プロテイン飲料や食器用洗剤といった日用品が上位を占めました。景気の不透明感が増す局面では、高単価品より「いつも使うもの」をまとめ買いする傾向が強まります。GlobalDataのニール・サンダースやeMarketerのスカイ・カナベスも、こうした必需品シフトと配送利便性の重要性を指摘しています。
ガソリン高騰局面でとるべき3つの初動
第一に、送料と配送リードタイムの訴求を前面に出すことです。商品ページや特集ページで「翌日着」「あと何円で送料無料」を明示し、来店コストの代わりにネットで買う合理性を可視化します。
第二に、まとめ買いと定期購入の設計を強化することです。日用品・消耗品を扱うなら、複数個セットや定期おトク便に相当する仕組みで一度の注文単価を引き上げ、配送1件あたりの採算を確保します。
第三に、配送費の上昇を織り込んだ価格・販促の再設計です。燃料費高騰は遅れて手数料に反映されます。原資が削られる前に、値引き一辺倒ではなくポイントやセット販売で実質還元する設計へ寄せておくと、利益率を守りやすくなります。
まとめ
ガソリン高騰は、配送網の強いAmazonへ需要を集める追い風になっています。日本のEC事業者は、送料と配送スピードの訴求、まとめ買い導線、配送費上昇を見込んだ価格設計の3点を早めに整え、需要が動くタイミングで取りこぼさない体制をつくることが得策です。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。