米小売大手ターゲットが、6四半期以上続いた前年割れから一転し、直近四半期で純売上6.7%増へと回復しました。値引き合戦ではなく来店客数(トラフィック)の増加が伸びを牽引し、店舗とデジタル(オンライン)の両チャネルが同時に伸びた点が特徴です。日本のEC事業者にとっても、集客の軸足をどこに置くかを考える格好の材料になります。本記事では事実関係を整理したうえで、楽天市場やAmazon、自社ECの運営に引き寄せた示唆を3つにまとめます。
何が起きたか:値引き頼みではなく「客数」で戻した
Modern Retailによると、ターゲットの直近四半期の純売上は前年同期比6.7%増となりました。これは少なくとも6四半期連続で前年割れが続いた後の、久しぶりの増収です。CEOのMichael Fiddelkeは、この伸びが「店舗とデジタルの両チャネルにまたがり、来店客数が牽引し、主要6カテゴリーすべてで増加した」広範なものだったと説明しています。
ポイントは、回復のドライバーが「割引による単価押し下げ」ではなく「客数の増加」だったことです。さらにオンラインだけ、店舗だけが伸びたのではなく、両方が同時に伸びています。ターゲットは2026年通期で前年比4%の増収を見込むとしており、単発の反発ではなく流れの転換と位置づけています。背景には、店舗テクノロジーや接客トレーニング、サプライチェーン拠点への投資を継続してきたことがあります。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
第一に、集客KPIを「客数」で見直す論点です。楽天市場やYahoo!ショッピングのモール運営では、クーポンやポイント還元で一時的に売上を押し上げる施策に偏りがちですが、それは単価を削る増収であり利益を伴いません。ターゲットのように訪問者数そのものを増やす施策(指名検索、リピート来店、新規流入)にKPIの重心を移すと、値引き原資に依存しない成長が見えてきます。
第二に、店舗とデジタルを足し算で見るオムニチャネルの論点です。日本でも楽天は実店舗連携やアプリ送客を強化しており、Amazonも店頭受け取りや実店舗との在庫連携を進めています。自社ECとSNS、実店舗やポップアップを「どちらか」ではなく「両方同時に伸ばす」設計にできているかが問われます。片方の数字を共食いさせる導線になっていないか、点検する価値があります。
第三に、新規性(新商品・限定launch)で客足を作る論点です。ターゲットは話題性のある新規投入で開店前から行列を作る場面を生み出したと説明しています。日本のEC事業者でも、定番のセール頼みではなく、新作・限定・コラボといった「今しか買えない理由」を計画的に投入することが、客数増の起点になります。これはモールのイベント連動(お買い物マラソン等)とも相性が良い考え方です。
今後の展望と初動アクション
まず、自店の売上を「客数×客単価×購入頻度」に分解し、直近の伸び(または落ち込み)がどの要素由来かを確認してください。値引きで客単価を削って作った売上であれば、ターゲットとは逆の構造です。
次に、店舗・アプリ・自社EC・モールのチャネルごとに流入と売上を並べ、どこかが他を共食いしていないかを見ます。最後に、四半期ごとに必ず「新規性のある投入」をカレンダーに組み込み、セールに頼らない来店理由を計画的に作ることをおすすめします。投資配分も、値引き原資より接客・在庫・物流の体験改善に振り向けるほうが、ターゲットの事例に近い持続的な伸びにつながります。
まとめ
ターゲットの6四半期ぶりの増収は、値引きではなく客数とオムニチャネル、そして新規性で作られた回復でした。日本のEC事業者も、ポイント・クーポン頼みの増収から一歩引いて、訪問者を増やす施策と店舗・デジタルの同時成長、計画的な新作投入へと軸足を移すことで、利益を伴う成長を狙えます。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。