楽天は8月5日、楽天市場に「AI店長」を開発中だと発表しました。
楽天グループは2026年8月5日、パシフィコ横浜で開幕したビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」で、楽天市場に出店する店舗の専門知識をもった「AI店長」を開発中だと明らかにしました。各店舗の店長のプロフィルや性格を読み込ませ、買い物客の問い合わせに答えながら出店店舗の販促につなげる構想です。買い物客と対話するAIコンシェルジュに加えて、店舗ごとの個性や専門知識がAIに読み込まれるという意味で、楽天市場の出店店舗にとっては節目の発表だと受け止めています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、出店店舗の立場から論点を整理します。

発表されたのは「AI店長を開発中」という事実です
今回明らかになったのは、提供開始ではなく開発中であるという事実です。日本経済新聞によれば、楽天グループは8月5日、楽天市場に出店する店舗に関する専門知識をもったAI店長を開発中だと発表し、利用者の問い合わせに応じて買い物をサポートしながら、出店店舗の販促にもつなげるとしています。出店する各店舗が、店長のプロフィルや性格を読み込んだAI店長で購入を促す構想で、三木谷浩史会長兼社長が横浜市で開かれたRakuten AI Optimismの中で明かしました。
イベント自体はネットショップ担当者フォーラムが伝えたとおり、8月5日から7日までパシフィコ横浜の展示ホールB・C・Dで開かれています。入場は無料で事前登録制、楽天が掲げるAI活用施策「AI-nization」と「AIの民主化」の一環として位置づけられており、展示エリアには「Rakuten AI」「楽天モバイル」「フィンテック」「スポーツ」などのブースが並びます。
現時点で提供開始時期、対象となる店舗の条件、追加料金の有無、店長プロフィルをどの画面からどう登録するのかといった運用面の情報は公表されていません。この部分は要確認とし、続報を待つ必要があります。ただし方向性そのものは唐突ではありません。楽天は7月7日の説明会の時点で、5万以上の出店店舗が持つ接客データを取り入れ、店舗の知見を活かした対話型接客へと進化させる方針を示していました。今回の発表は、その方針に「AI店長」という具体的な名前がついたものと読むのが自然です。
出店店舗のAI活用はすでに半数、数字で前提を押さえます
前提として押さえておきたいのは、楽天市場のAI活用がすでに実測値の出る段階に入っているという点です。ケータイ Watchが伝えた7月7日の説明会によると、出店店舗向けの「Rakuten AI for RMS」は商品説明文の作成、画像背景の加工、問い合わせへの回答作成などを支援しており、現在およそ半数の出店店舗がAI機能を活用しています。4月30日に提供が始まったデータ分析エージェントは、導入店舗の72.9パーセントが利用しているとされます。
同じ説明会に登壇したプチギフトmomo-fukuの木澤典子は「問い合わせ対応にかかる時間が月間67時間から20時間に削減できた」と語り、商品説明文の作成をAIに任せたことで登録商品数を1000点から1万点規模へ広げられたと説明しています。月間47時間の削減は、時給換算で人を1人増やす議論と同じ土俵に乗る数字です。
買い物客側の変化も数字で出ています。Business Insider Japanによると、2025年12月に始まったAIコンシェルジュを使った利用者は、従来の検索を起点にした購入行動と比べて購入決定までの時間が約41パーセント短縮され、平均注文金額も約17パーセント上がっています。楽天市場には5万を超える店舗と5億を超える商品が並び、楽天はすでに11のサービスでRakuten AIを展開、開発中のAIが8種類、計画中のものが50種類以上あるとされます。一方で楽天の髙間真里は「まだアクセルは完全に踏んでいない」と述べており、回答品質を慎重に高める段階にあることも同時に示されました。
つまり出店店舗から見ると、AI店長は何もないところに突然現れる機能ではありません。すでに半数の店舗が使っている運営支援AIと、購入行動を実際に変えている接客AIの二つが先にあり、その接点に置かれるのがAI店長という位置関係です。
出店店舗が今から備える3つの論点
第一に、店長のプロフィルが店舗の資産に変わるという論点です。AI店長が店長のプロフィルや性格を読み込む構想である以上、誰が店長で、どんな基準で品揃えを決め、何にこだわっているのかが言語化されていない店舗は、読み込ませる材料そのものを持たないことになります。店舗紹介ページ、スタッフ紹介、商品ページの中のこだわり説明といった、これまで後回しにされがちだった文章を、今のうちに固有名詞と具体的な理由を含む形で書き直しておく価値があります。
第二に、日々の問い合わせ回答とレビュー返信の質が、そのまま接客データの質になるという論点です。楽天は5万以上の店舗が持つ接客データを取り入れる方針を示していますが、AI店長が具体的にどのデータを学習対象にするのかは公表されておらず、ここは要確認です。ただ、定型文を貼り付けるだけの返信と、商品固有のサイズ感や使い方まで書き込んだ返信とでは、蓄積されるものが違うのは確かです。Rakuten AI for RMSのレビュー返信機能は商品ページの情報を自動で読み込む仕様なので、まずは自店の返信テンプレートを商品単位で見直すところから始められます。
第三に、効果をどう測るかという論点です。AI店長経由の接客が売上にどう寄与したかを店舗側の管理画面でどこまで分解して見られるのかは、現時点では分かりません。だからこそ、機能が出てから慌てないために、今の状態をベースラインとして記録しておくことをおすすめします。RMSのデータ分析エージェントを使い、月間の問い合わせ件数、初回返信までの平均時間、レビュー返信率、商品ページの直帰状況といった数値を控えておけば、AI店長が入った後の変化を自店の数字として説明できます。
なお、これらの施策はいずれも楽天市場の中で完結させてください。楽天R-Mailや商品ページから自社サイトやSNSへ誘導する形は楽天市場の店舗運営規約に触れます。AI店長への備えは、あくまで楽天市場内のページと文章の整備として進めるのが安全です。
まとめ
楽天市場のAI店長は、8月5日時点では開発中の発表にとどまり、提供時期や条件は要確認です。ただ、すでに半数の出店店舗がRakuten AI for RMSを使い、AIコンシェルジュ経由では購入決定までの時間が約41パーセント短縮されている以上、備えを先送りする理由はありません。店長プロフィルの言語化、問い合わせとレビュー返信の質の底上げ、現状数値のベースライン化という3点を、続報が出るまでの期間に片づけておくことをおすすめします。
参考文献
- 日本経済新聞・楽天市場に「AI店長」搭載へ 店舗の専門知識で買い物サポート
- ケータイ Watch・「楽天市場」の接客が激変、楽天AI導入で問い合わせ対応時間が3分の1になった理由
- Business Insider Japan・楽天市場が「購買体験」変わるAI機能に手応え。購入時間は約41%短縮、平均注文金額も約17%上昇
- ネットショップ担当者フォーラム・楽天の最新AIやテクノロジーを体験できる「Rakuten AI Optimism」、今日からスタート
関連する解説として、開幕前にまとめたRakuten AI Optimismで出店者が見るべき3つの論点、店舗ページ側のAI対応を扱った楽天のR-Storefront×AIの使いどころ、販促面の判断軸を整理した楽天メルマガを送るべきかの判断基準、ポイント施策の考え方をまとめた楽天SPUの判断軸もあわせてご覧ください。
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引用元: 日本経済新聞
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。