GPT-6 Astra が双腕ロボットの実機タスク100試行中7回を完遂し、比較対象は0回でした。
ロボット検証機関 Robocurve が2026年9月10日に公開した新ベンチマーク StationeryBench の結果を、The Decoder が9月12日に取り上げました。文房具を使った5つの両腕作業で、OpenAI の GPT-6 Astra と Ai2 の MolmoAct2 を同じロボットアームに載せ、合計200試行を人間が採点しています。完遂率はまだ7%ですが、進捗スコアの平均は46対12と3.9倍の差がつきました。倉庫のピッキング自動化を検討しているEC事業者にとって、この数字の読み方は来年の設備投資判断に直結します。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

GPT-6 Astraが完遂7回、MolmoAct2は0回という結果
結論から言うと、GPT-6 Astra は5課題100試行のうち7回を完全達成し、MolmoAct2 は1回も達成できませんでした。Robocurve の検証ページによると、課題はマーカーのキャップを外す、クリップを持ち上げたボウルに注ぐ、定規を空中で左右のアームに受け渡す、付箋の束から真ん中だけ抜き取る、ふた付きの箱を開けて消しゴムを取り出し閉じる、の5つです。両モデルとも同じ YAM 双腕アームを操作し、1課題あたり20試行ずつ実施されました。
採点は人間の評価者が0から100までを25点刻みで付ける方式です。課題別の平均進捗は、マーカーが62対25、クリップが51対18、定規が46対16、付箋が34対0、ふた付き箱が34対0でした。完遂に至ったのはマーカー5回、定規1回、付箋1回の計7回です。注目すべきは MolmoAct2 の挙動で、付箋とふた付き箱では20試行すべてが初期姿勢からほとんど動きませんでした。難易度が上がると、そもそも動作を開始できていないわけです。
なお GPT-6 Astra はモデル単体ではなく、Inspect Robots というエージェント制御の仕組みを介して動いています。1試行あたりのモデル呼び出しは12.6回から19.4回、出力トークンは2,358から3,206、推定コストは1.21ドルから1.93ドルと記録されました。コーネル大学と Google DeepMind に籍を置く研究者の Yoav Artzi は、この結果を「空間推論における段階的な変化」と評しています。ただし本人は、未公開のベンチマークでは人間に近い精度に届く場面がある一方、人間に及ばない場面も残ると付け加えています。

日本のEC事業者が読み取るべき3つの論点
第一に、完遂率7%は「まだ現場に入れる段階ではない」という事実として受け止めるべきです。倉庫のピッキングやギフト包装、返品時の検品といった作業は、100回のうち93回失敗する自動化では成立しません。2026年から2027年にかけて物流ロボットの提案を受ける機会は増えるはずですが、デモ動画の成功例ではなく、同一条件で何回試して何回成功したかを必ず確認してください。
第二に、汎用モデルと専用モデルの力関係が逆転しつつある点です。MolmoAct2 はロボット制御に特化した vision-language-action モデルであるのに対し、GPT-6 Astra は汎用の推論モデルにエージェント制御を組み合わせた構成でした。それでも結果は汎用側が上回っています。これは倉庫ロボットに限った話ではなく、受注処理や商品説明文の生成でも同じ構図が起きています。専用ツールを選ぶか、汎用AIに自社の手順を教え込むかという判断は、ハーネス側が主役になりつつある流れを踏まえて考える必要があります。
第三に、コストの桁感です。1試行あたり1.21ドルから1.93ドルという数字は、机上の文房具を扱うだけの作業としては決して安くありません。人件費と比較する前に、AIが自律的に判断する処理は1アクションあたりいくらかかるのかという単価の発想を持っておくことが重要です。この考え方は、GPT-6 Astra のEC活用とコスト設計でも整理しています。
いま着手できる初動アクション
まず、自社の作業のうち「失敗してもやり直せるもの」と「一度失敗すると顧客に届いてしまうもの」を仕分けてください。前者は自動化の実験対象になりますが、後者は完遂率が99%を超えるまで人間の確認を外すべきではありません。
次に、物流倉庫や3PLとの契約更新時に、相手方がどの程度AIやロボットを導入予定かを確認しておくと良いでしょう。自社で設備を持たなくても、委託先の自動化度合いは繁忙期の出荷キャパシティに直結します。ドローン・ロボット規制と物流の動きもあわせて確認しておくと、調達リスクの見通しが立てやすくなります。
最後に、AIエージェントに業務を任せる際の評価基準を社内で決めておくことをおすすめします。今回のベンチマークが0点から100点の4段階で部分点を付けたように、「全部できたか」だけでなく「どこまで進んだか」で測ると、改善点が見えやすくなります。GPT-6 Astra が自律運営に挑んだ検証も、同じ視点で読み解けます。
まとめ
GPT-6 Astra は双腕ロボットの実作業で完遂率7%、平均進捗46点という結果を出し、専用モデルの12点を3.9倍上回りました。数字としては大きな前進ですが、EC現場への実装はまだ先です。日本のEC事業者としては、自動化の売り込みを受けたときに完遂率と単価の2点を必ず聞く姿勢を持ち、失敗が許される工程から小さく試すのが現実的な進め方だと考えます。
参考文献
- Robocurve: GPT-6 Astra vs MolmoAct2 on bimanual robotic manipulation
- The Decoder: GPT-6 Astra appears to show a “step change” in spatial reasoning based on early benchmarks
- GitHub: robocurve/stationerybench
- GitHub: robocurve/inspect-robots
- Yoav Artzi の投稿(X)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。