Rothy’s売上17%増|DTC実店舗9出店に学ぶEC3つの論点

Rothy’sは2024年に売上17%増の2億1,100万ドルを達成し、9店舗出店と既存店20%増を両立しました。DTCのチャネル分散と出店ペースの決め方を、日本のEC事業者向けに3つの論点で解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

Rothy’sは2024年に売上が17%増え、2億1,100万ドルに到達しました。

アメリカのDTC靴ブランド Rothy’s(ロージーズ)が、多くの同業が失速した直販市場で成長を続けています。Modern Retail は2026年9月19日、同社のCEO兼社長である Dayna Quanbeck をポッドキャストに招き、2億ドル超えに至るまでの拡大の作法を取り上げました。広告費を積み増すのではなく、実店舗と卸をゆっくり増やした判断が効いたという内容です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の視点で読み解きます。

Modern Retail Podcast でRothy'sの拡大戦略を取り上げた回のビジュアル

何が起きたか:9店舗の追加で既存店売上も20%伸びた

結論から言えば、Rothy’sの成長はチャネル分散を早めに仕込んだ結果です。Modern Retail の2025年2月の報道によると、2024年の売上は前年比17%増の2億1,100万ドル、既存店売上は20%増、この年の出店は9店舗で店舗網はおよそ50%拡大しました。新規出店が既存店の数字を食い合わなかった点が、この17%の中身を示しています。

1号店は2018年にサンフランシスコで開いた336平方フィート(約31平方メートル)の小型店でしたが、その後は平均約1,567平方フィート(約146平方メートル)とやや大きめの形に落ち着きました。売上の大半はいまも自社ECサイト経由ですが、同社は直近2年でAmazonでの販売を開始し、Anthropologie、Bloomingdale’s、Nordstrom といった百貨店・専門店での卸テストにも着手しています。

慎重さの背景には経営陣の経験があります。Quanbeck は2019年にCFO兼COOとしてRothy’sへ入社し、2024年初に社長へ就任しました。前職は2019年2月に破産した Charlotte Russe の暫定CEOで、当時およそ600店舗を抱えていた同社で大型店舗網の危うさを間近で見ています。Rothy’sの店舗数は2025年2月時点で26、適正な出店ペースは年5〜10店舗だと同社は語っています。2026年9月時点の最新の店舗数は公表されておらず、ここは要確認です。

そして2026年9月のポッドキャストで Quanbeck が挙げた現在の課題は、成長に「気を取られないこと」でした。売れているときほど拡大の誘惑が増える、という自戒です。

日本のEC事業者にとっての3つの論点

第1の論点は、チャネル分散に着手するタイミングです。Rothy’sが店舗と卸を増やしたのは売上が伸びている最中であり、集客が詰まってからの延命策ではありませんでした。うるチカラでも、AI検索の普及でデジタル広告経由の新規獲得が鈍り、ブランドが実店舗に再注目している動きを取り上げています。楽天市場のRPP広告やAmazonのスポンサープロダクトに新規獲得の大半を預けている店舗ほど、単価が上がったときの逃げ場がありません。余力のあるうちに二本目の柱を作る、という順序が要点です。

第2の論点は、チャネルを足す順序と評価軸です。日本では既存モールが強いため、モール先行で自社ECが後追いという、Rothy’sとは逆の順序になりがちです。どちらが先でも判断軸は同じで、追加チャネルが既存チャネルの売上を移し替えただけなのか、市場そのものを広げたのかを見ます。Rothy’sはワシントンDCエリアに2店舗を構えた結果、両店が食い合うのではなく市場全体が伸びたと説明しています。日本のEC事業者であれば、楽天市場と自社ECを同一商圏と決めつけず、ブランド名の指名検索と直接流入が双方で増えているかを月次で確認するのが実務的です。顧客数を23%伸ばしたDTCブランドの決算でも、伸びの中身が新規客なのか既存客の移動なのかが焦点になっていました。

第3の論点は、拡大ペースの上限を先に決めることです。年5〜10店舗という枠は、日本のEC事業者にとっては新規モール出店、新規SKU投入、新規広告媒体のテストを同時にいくつまで走らせるか、という数字に置き換えられます。単品依存から抜け出すために店舗網を広げたブランドの事例でも、拡大の速度を決めたのは売上ではなく運用体制でした。人員と在庫管理の実力を超えた同時進行は、どれも中途半端になります。

今後の展望と初動アクション

当面は、獲得コストの上昇が続く前提でチャネル構成を見直す動きが広がると考えられます。日本のEC事業者が今週から着手できる初動は4つあります。

まず、直近12か月のチャネル別売上構成比を出し、1チャネルが7割を超えていないかを確認します。次に、指名検索と生成AI経由の流入を計測対象に加えます。AI検索時代の集客をDTC各社がどう組み替えているかは、広告以外の入口を設計するうえで参考になります。3つ目に、新しいチャネルを開く際は撤退条件を先に決めます。何か月で損益分岐に届かなければ畳むのかを数字で持っておくと、判断が感情に左右されません。4つ目に、同時に走らせる新施策の上限を、売上見込みではなく運用できる人員数を基準に明文化します。

Rothy’sの判断が日本でそのまま通用するわけではありません。店舗賃料の構造も、モールの集客力も異なります。ただ、成長局面で意図的に速度を落とすという選択は、モール依存の是正を先送りしてきた事業者にとって考える価値のある型です。

まとめ

Rothy’sは2024年に売上17%増の2億1,100万ドルを記録し、9店舗の出店と既存店20%増を両立させました。広告依存を薄める分散を売上が伸びている時期に仕込み、出店ペースには年5〜10店舗という上限を置いています。日本のEC事業者も、チャネル構成比の点検と撤退条件の明文化から着手するのが現実的です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ