AI検索で検索広告が効きにくい|実店舗回帰に学ぶEC集客3つの論点

AI検索の普及で検索広告が効きにくくなり、米国ブランドが実店舗とイベントへ回帰しています。日本のEC事業者が押さえるべき3つの論点と、店舗を持たなくても取れる初動アクションを解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国ブランドは、AI検索で鈍った広告集客を実店舗とイベントで補い始めました。

Modern Retailが2026年9月16日に報じたところによると、米国のファッション・ビューティーブランドの幹部たちは、長年頼ってきた検索広告やディスプレイ広告の効きが落ちたことを理由に、実店舗・イベント・人による接客へ予算と時間を戻し始めています。原因として名指しされたのは、消費者が商品探しに言語モデルやAIを使うようになったことです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の視点で3つの論点に整理して解説します。

実店舗でのブランド体験と接客を重視する小売の新しい運営モデル

何が起きたか:広告が効かない理由がAI検索だと名指しされた

今回の記事は、GlossyとModern Retailが決済事業者Global Paymentsと共催したブランドリーダーズディナーの内容をまとめたものです。発言はチャタムハウスルールのもとで匿名化されており、社名や個人名は伏せられています。

注目すべきは、広告の不調を「予算不足」でも「クリエイティブの問題」でもなく、消費者の商品発見行動の変化として説明している点です。ある社内マーケターは、検索広告やディスプレイ広告に長年頼ってきたが今はそのチャネルでの広告出稿が非常に難しくなったと述べ、その理由として消費者が商品発見に言語モデルやAIを使うようになったことを挙げました。そのうえで、対面と個人的なつながりに再び頼り始めていると語っています。

同じシリーズの2026年8月のディナー記事では、より踏み込んだ数字が出ています。ある幹部は、かつて6桁ドル規模の投資が必要だったECと実店舗のデータ統合を、AIを使って約3週間で構築したと述べました。別のブランドは、ブランディング目的で開いた店舗が最初の3か月で9回のイベントを実施し、結果的に発見と再来訪のチャネルとして機能したと報告しています。AIで効率を取り戻し、その余力を人が担う領域に振り向けるという構図です。

日本のEC事業者にとっての3つの論点

第一の論点は、AI検索の影響が「モール内」と「モール外」で非対称だということです。楽天市場やYahoo!ショッピングはモール内検索と特集・イベントが主戦場のため、AI経由の商品発見が増えても流入構造はすぐには崩れません。一方、Shopifyなどの自社ECはGoogle検索と広告への依存度が高く、影響を先に受けます。うるチカラでもAI検索経由の集客を伸ばすDTC4社の実践ChatGPTの利用シェア回復をSimilarwebのデータで読み解いた記事で触れたとおり、生成AI検索での被引用対策は自社EC側から先に着手するのが合理的です。

第二の論点は、「意図がある検索」と「意図がない回遊」の分業です。今回の記事で複数の幹部が語ったのは、AIは消費者が既に探している商品を正確に見つけさせる一方、店舗は知らなかった商品やブランドに出会わせる場として残る、という整理でした。ある創業者は、技術が増えたぶん顧客は人間を求めていると感じると述べています。これをECに置き換えると、指名検索と型番検索はAIに奪われる前提で、未知の商品と出会わせる導線をどこに置くかという設計問題になります。フェールラーベンが直営30店超まで広げた事例も、看板商品への依存から抜けるために回遊の場を持った例として読めます。

第三の論点は、店舗回帰のコストです。今回の記事では、ニューヨークやロサンゼルスのような一等地の運営コスト上昇が率直に語られています。卸が事業の約40%を占めるあるブランドは、ECと実店舗を並行して立ち上げながら、なぜ顧客がオンラインではなく来店するのかを先に突き止めたいと述べました。ニューヨークで1号店を開いた新興ジュエリーブランドの創業者は、創業者自身が12時間シフトに入らずに黒字化することが最大の難所であり、店舗を任せられる人材の確保に苦労していると語っています。店舗は万能薬ではなく、人件費と採用の問題に置き換わるだけだという冷静な指摘です。

明日からの初動アクション

日本のEC事業者が実店舗を持たない場合でも、取れる打ち手はあります。最も現実的なのは、ポップアップや催事、展示会への出展で「触れる機会」を年に数回つくることです。固定費を持たずに回遊と接客の効果を測れます。

次に、既存顧客との直接接点を棚卸ししてください。同梱物、電話とチャットの有人対応、SNSのダイレクトメッセージは、AIに代替されにくい接点です。うるチカラで紹介したInstagram DMを商品開発の源泉にした事例のように、集まった声をAIで束ねて商品と接客に還元する流れがつくれます。

三つめに、新規獲得の指標を分けて見ることです。顧客数と客単価を分けて開示したDTC企業の決算のように、新規顧客数と既存顧客のリピートを別々に追うと、広告の効きが落ちているのか、単に既存顧客で数字を維持しているだけなのかが判別できます。

なお楽天市場に出店している場合は、店舗メルマガ(楽天R-Mail)や商品ページから自社サイトやSNSへ誘導する施策は規約違反になります。楽天では、モール内で完結する接点、たとえば配信セグメントの分割や特集ページへの回遊設計に置き換えて考えてください。

まとめ

AI検索は集客の総量を減らすというより、意図が明確な検索をAIに集約させ、それ以外の出会いを別の場所に押し出します。今回の米国ブランドの動きは、その押し出された部分を実店舗とイベントで受け止める試みです。日本のEC事業者は、まず自社EC側のAI検索対策を進めつつ、AIに代替されない接点を年間計画に1つ足すところから始めるのが現実的です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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