Googleは2026年9月24日、Geminiが利用者の代わりに店舗へ電話する「Call for Me」の試験提供を発表しました。
在庫確認や取り置き依頼の電話をかけてくる相手が、人間ではなくAIになる時代が現実になり始めています。TechCrunchによると、Call for Me はまず米国の Pixel 11 所有者のうち、Geminiの有料プランを契約している人に限って提供されます。日本での提供時期は発表されていません(要確認)。それでも、AIエージェントが「顧客の代理人」として事業者に接触してくる流れは、電話窓口や実店舗を持つEC事業者にとって無視できない変化です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、Gemini Call for Me の中身と日本のEC事業者が今から考えておくべき3つの論点を解説します。
Gemini Call for Me とは何か:AIが本人の番号で店舗に電話する機能
Gemini Call for Me とは、Geminiが利用者本人の電話番号から事業者へ発信し、会話を最後まで代行する機能のことです。これまでのGoogleの通話支援機能との最大の違いは、利用者が承認した個人情報をAIが通話中に相手へ伝えられるようになった点にあります。これにより、問い合わせだけでなく予約や変更といった「手続き」まで踏み込めるようになりました。
Googleが挙げている用途は、店舗への在庫確認、レストランの予約、予約日時の変更、商品の取り置き依頼の4つです。AIは自己紹介をしてから会話を始め、自動音声の案内メニュー(IVR)を操作し、保留中も待ち続け、担当者が出たらそのまま用件を伝えます。利用者はリアルタイムの文字起こしで通話の進み具合を確認でき、いつでも自分に切り替えられます。
提供条件はかなり絞られています。対象は米国の Pixel 11 シリーズ所有者で、Geminiの有料サブスクリプション契約者、さらにAndroid向けの電話アプリのベータ版を使っている人に限られます。Googleは「現実の会話はニュアンスに富んでいる」として、小規模な実験から始める理由を説明しています。
Googleの電話AIの歴史は長く、2018年の開発者会議では Google Assistant が美容室に電話して予約を取るデモを披露しました。その後、2025年には価格やサービス内容を事業者に問い合わせる「Ask for Me」、Pixelでは保留を代わりに待つ「Hold for Me」や、自動音声メニューの選択肢を画面表示する「Direct My Call」が提供されてきました。Call for Me は、これらを「本人の代わりに手続きまで完結させる」段階へ進めたものと位置づけられます。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
結論から言うと、影響を受けるのは「電話窓口を持つ事業者」と「実店舗と在庫を連動させている事業者」です。純粋なモール出店だけで電話窓口がない店舗への直接の影響は、現時点では小さいと考えられます。
1つ目の論点は、在庫確認の電話がAI経由で増える可能性です。Googleが最初の用途に「店舗の在庫確認」と「取り置き」を挙げている点は重要です。日本でもアパレル、家電、ホームセンター、酒販など、ECと実店舗を併営している事業者は多く、「店頭にありますか」「取り置けますか」という電話は日常業務になっています。この問い合わせをAIがまとめてかけるようになると、1件あたりは短くても件数が増えることがあり得ます。自社ECや楽天市場、Yahoo!ショッピングの商品ページで店舗在庫を正しく出せていれば、そもそもAIが電話をかける必要がなくなるため、在庫情報の公開度合いが電話件数を左右する構図になります。
2つ目の論点は、本人確認と個人情報の扱いです。Call for Me は利用者本人の番号から発信し、承認済みの個人情報を相手に伝えます。受ける側から見ると、電話番号は本人でも話しているのはAIという状況です。予約変更や取り置きは受けてよいのか、配送先の変更や返金のような重い手続きはどうするのかを、事前に社内で線引きしておく必要があります。うるチカラでは以前、Meta の Muse や Instinct が電話機能を追加したニュースでも同じ論点を取り上げましたが、Googleが参入したことで、AIからの電話は一部の新興サービスの話ではなくなりつつあります。
3つ目の論点は、電話窓口そのものの価値の見直しです。AI疲れから電話サポートが見直されているという米国ブランドの動きがある一方で、顧客側がAIに電話を任せ始めると、「人間同士で話したい客」と「AIに任せたい客」が同じ窓口に混在します。受け手側にもAI音声応答を導入するのか、人間の担当者で丁寧に受けるのかは、ブランドの方針として判断すべきテーマになります。
今後の展望と、今のうちにやっておくべき初動
今後の注目点は、提供対象がPixel 11以外の端末や米国以外に広がるかどうかです。Googleは展開時期を明らかにしていないため、日本での提供は現時点で未定です(要確認)。ただし、日本ではGoogleマップやGoogleビジネスプロフィールに掲載された店舗電話番号が広く使われており、提供が始まればAIの発信先として真っ先に使われるのはこの番号だと考えられます。
EC事業者がいま取れる初動は3つです。まず、Googleビジネスプロフィールの営業時間、電話番号、取り扱い商品の情報を最新にしておくことです。AIが誤った情報をもとに電話をかけてくる無駄を減らせます。次に、店舗在庫やお取り置きの可否を、自社ECや各モールの商品ページで明示することです。情報がWeb上で完結していれば、電話の件数自体を抑えられます。最後に、電話受付マニュアルに「相手がAIだと名乗った場合」の対応ルールを1項目加えることです。受けてよい用件と、本人に折り返しが必要な用件を分けておくだけで、現場の迷いはかなり減ります。
まとめ
Gemini Call for Me は、AIが本人の番号で店舗に電話し、在庫確認や取り置きまでこなす機能です。提供は米国の一部利用者に限られますが、Googleの参入でAIからの電話は現実的な選択肢になりました。日本のEC事業者は、在庫情報のWeb公開と、AIからの電話への対応ルールづくりを先に進めておくのが得策です。
参考文献
- TechCrunch: Google tests letting Gemini call businesses for you
- TechCrunch: Google’s Ask for Me feature calls businesses on your behalf
- Google 電話アプリ ヘルプ: Direct My Call
- Yahoo Tech: Google’s Gemini Can Now Call Businesses for You
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。