AI疲れで有人電話が復権|満足23%の壁とEC顧客対応3つの論点

電話窓口のAI対応に満足と答えた人は23.0%。米国DTCが有人電話を復活させる動きと日本の最新調査1,597名分から、EC事業者が顧客対応をAIと人でどう切り分けるべきか、実務で動かせる3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国のDTCブランドが、AI疲れの顧客向けに有人の電話窓口を復活させています。

問い合わせをチャットボットへ寄せる流れが一巡し、その反動として有人の電話窓口をあえて置き直すブランドが米国で増えています。日本でも、電話窓口のAI対応に満足と答えた人は23.0パーセントにとどまり、不満の36.3パーセントを下回る調査結果が2026年9月に公表されました。AIで受けるか人が受けるかは、もはや人件費の計算だけでは決められません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

米国のDTCが電話窓口を戻し始めた理由

結論から言えば、電話窓口はコスト項目ではなく差別化要素として再評価されています。Modern Retailが2026年9月15日に報じたところでは、賃貸住まい向けシャワーヘッドを扱うDTCブランドのSproosが、この夏に自社スタッフが応対する専用電話窓口を日曜から金曜まで開設しました。2020年に立ち上げた同社には1日およそ30件の電話が入り、共同創業者のベンジャミン・フィックスが自ら何時間も受けているといいます。狙いは明快で、AIのロボット的な応対との差をつけることです。

調理器具ブランドのMade Inは、AIチャットボットを持ちながら電話窓口も併設し、スタッフがFaceTimeやZoomでフライパンの手入れ方法や卵の焼き方まで答えています。同社には専属のシェフや調理人が在籍しています。コーヒーのサブスクリプションを手がけるTrade Coffeeは2018年の創業時から電話窓口を運営し、常時6名ほど、ギフト需要が増える繁忙期はさらに業務委託を足す体制です。1件の通話が30分に及ぶことも珍しくなく、オペレーターは全員が元バリスタであることを条件にしています。

背景には数字があります。SurveyMonkeyの調査では、米国の79パーセントがAIエージェントより人との対話を強く好み、41パーセントがAIによってカスタマーサービスは悪化したと答えています。Gartnerも、AI対応からの離脱を選ぶ顧客が増えることで有人対応の件数が急増しうると見ています。AI自体は止まりませんが、AIに寄せすぎた設計が顧客を逃がす局面が出てきた、というのが今回のニュースの本質です。

日本の調査はもっと具体的で、示唆も鋭い

日本でも同じ構図が、より具体的な数字で確認できます。コールセンター運営のアイ・エヌ・ジー・ドットコムが全国1,597名を対象に実施した調査(2026年8月3日から6日、産経リサーチ&データ「くらするーむ」会員へのインターネット調査)では、企業への連絡手段はメール・問い合わせフォームが77.8パーセント、電話が69.7パーセントで、電話の需要が依然として高い水準にあることが示されました。

電話窓口のAI対応に対する満足度の調査結果グラフ

注目すべきは満足度の内訳です。AIに対応された経験がある人のうち、満足層は23.0パーセントにとどまり、不満層は36.3パーセントに達しました。どちらともいえないが40.6パーセントと最も多く、評価が固まっていない層が4割います。その一方で、AIの回答を一定程度は信用すると答えた層は59.6パーセントあり、顧客はAIそのものを拒んでいるわけではありません。内容が複雑または例外的なときに必ず人の対応を求める人は69.3パーセント、急いで相談したいときは49.0パーセントでした。

企業へ電話をかけるときに求めることの調査結果グラフ

さらに、電話をかけるときに求めることの最上位はすぐにつながって待たされないことで83.7パーセント、次いで答えが正確なことが68.5パーセントでした。つまり顧客が嫌っているのはAIという技術ではなく、つながらないことと、的外れな回答を繰り返されることです。音声AIの単価が下がり、Gemini 3.8 Liveのような低コストの音声応対が現実的になった今だからこそ、どこを自動化し、どこを人に残すかの線引きが成果を分けます。

日本のEC事業者が今日から動かせる3つの論点

第一に、窓口の設計をAIか人かの二択ではなく、一次対応と例外対応の切り分けとして考え直すことです。配送状況の確認、返品受付、注文内容の照会といった定型はAIが即答して待ち時間を削り、サイズ交換の例外処理や品質クレームは人へつなぐ。問題は引き継ぎの瞬間で、会話履歴が消える設計だと顧客は同じ話を二度させられ、そこで不満が生まれます。問い合わせ自動化の原則を先に決めてからツールを選ぶ順番が重要です。

第二に、電話番号の扱いです。日本では特定商取引法により、通信販売の広告に事業者の氏名、住所、電話番号を表示する義務があります。消費者からの請求に応じて表示事項を記載した書面や電子メールを遅滞なく提供する措置を講じている場合は省略できますが、原則は表示です。詳細は消費者庁の特定商取引法ガイドを確認してください。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングに出店している事業者は、モール側の問い合わせ導線と自社窓口の役割が二重になりがちです。どの用件をどちらで受けるかを決め、商品ページと注文完了メールの案内を揃えるだけで、たらい回しは目に見えて減ります。

第三に、有人対応を商品知識のある人に寄せることです。Trade Coffeeが元バリスタを条件にし、Made Inがシェフを置いているのは、電話を苦情処理ではなく購買後の体験価値に変えているからです。Sproosの共同創業者は、顧客が電話でどこで買ったか、どの色が好きか、来客の予定があるかまで話してくれると述べています。これは有償のアンケートでは得にくい一次情報です。問い合わせ内容をタグ付けし、商品ページのFAQや同梱物の改善に回す運用は、AIの要約機能を使えば少人数でも回せます。AIとの対話が短時間で理解を変える研究が示すとおり、丁寧な一往復には想像以上の効果があります。

まとめ

AI対応の満足層が23.0パーセントにとどまる現状は、AIをやめる理由ではなく設計をやり直す理由です。定型は自動化して待ち時間を最小化し、複雑な用件は商品を知る人へ確実につなぐ。この二層構造をどこまで丁寧に組めるかが、顧客獲得コストが上がり続ける今、実店舗やイベントへ回帰する動きと並んで、2026年後半のEC顧客対応の分かれ目になります。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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