ゴールドマン・サックスは、米大手5社のAI設備投資が2027年に1.2兆ドルへ達すると予測しました。
米国の巨大クラウド企業、いわゆるハイパースケーラーによるAI設備投資が、2027年には1.2兆ドル(1ドル150円換算で約180兆円)規模に膨らむ見通しです。対象はAmazon、Alphabet(Google)、Microsoft、Oracle、Metaの5社で、2026年の約8,000億ドルから約5割増える計算になります。数字の大きさは投資家向けの話に見えますが、AI設備投資の行方は、EC事業者が毎月払っているAIツールの料金や、モール各社のAI機能の進化スピードに直結します。本記事では、このAI設備投資予測の中身を整理したうえで、日本のEC事業者が押さえておきたい論点を3つに絞って解説します。

何が起きたか:AI設備投資予測が市場コンセンサスを上回った
結論から言うと、ゴールドマン・サックスのストラテジストが、米ハイパースケーラー5社のAI設備投資は2027年に1.2兆ドルに達するとの予測を示しました。PYMNTSがBloombergの9月25日の報道として伝えたもので、ウォール街のコンセンサス予想である1.1兆ドルを上回る水準です。
予測の骨子は次のとおりです。2026年の約8,000億ドルから2027年に1.2兆ドルへ跳ね上がり、2028年はさらに12%増えて1.4兆ドルになるとしています。ゴールドマン・サックスのチームは、2027年の投資規模について「1800年代後半の鉄道建設以来、どの技術投資サイクルよりもGDPに占める比率が大きくなる」と表現しています。
同じ時期に、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOもハイパースケーラーの投資が来年1兆ドル規模になりうるとの見方を示しており、複数の大手金融機関が「AI投資はまだ加速する」という見立てで一致している点が今回のポイントです。
資金の出どころにも変化があります。Yahoo Financeが7月に報じたゴールドマン・サックスのクレジット分析では、2027年の設備投資のうち約35%が社債など負債で賄われる見通しとされていました。手元の現金だけでは追いつかず、借入れをしてでもデータセンターを建てるという段階に入っているということです。
日本のEC事業者にとっての論点:AIの「原価」と「供給力」が変わる
このニュースがEC事業者に関係する理由は、AI設備投資がそのままAIサービスの供給力と価格に跳ね返るからです。ここでは3つの論点に整理します。
論点1:AIツールの単価は下がりやすい環境が続く
設備投資が増えれば計算資源の供給が増え、各社はその稼働率を上げるために利用者を取り合います。実際、直近でもOpenAIがGPT-6世代でAPI価格を半額に引き下げたように、価格競争は続いています。商品説明文の生成、レビュー要約、問い合わせの一次対応といった用途で生成AIを使っている店舗にとっては、同じ予算でこなせる作業量が増えていく流れと捉えてよいでしょう。ただし、個別サービスの料金改定は各社の判断次第なので、「必ず安くなる」とは言えません。契約更新のタイミングで単価を見直す習慣をつけておくことが現実的な対策です。
論点2:Amazon・Googleは投資回収のためにAI機能を収益化しにいく
一部の報道では、この規模の投資で採算をとるには年間約3,000億ドル規模のAI関連収益が必要になるとの試算も紹介されています(試算の出所は要確認)。投資したぶんを取り返すには、AIを使った有料サービスや広告を増やすのが自然な流れです。AmazonであればショッピングアシスタントのRufusまわりの広告枠や出品者向けAIツール、Googleであれば以前取り上げたクラウド事業の伸びと検索のAIモード内の広告などが考えられます。Amazon.co.jpの出品者やGoogle広告を運用する店舗は、AI経由の露出枠が「無料のおまけ」から「有料の広告面」へ変わっていく可能性を前提に、予算配分を考えておく必要があります。どの枠がいつ日本で有料化されるかは現時点では要確認です。
論点3:投資が鈍化したときのリスクも頭に入れておく
一方で、負債比率が上がっているということは、金利や景気の変化で投資計画が見直される余地もあるということです。仮にハイパースケーラーが投資を絞れば、無料枠の縮小や値上げ、新機能の提供延期といった形で利用者側に影響が出る可能性があります。特定のAIサービス1本に業務を依存させると、その会社の方針転換がそのまま店舗運営のリスクになります。
今後の展望と初動アクション
今回の予測はあくまで証券会社の見通しであり、実際の投資額は各社の決算発表で確定していきます。例年10月下旬から始まる米大手テック企業の7〜9月期決算では、設備投資のガイダンスが上方修正されるかどうかが最大の注目点になるでしょう。
EC事業者が今のうちに取れる初動は大きく3つです。まず、現在使っているAIツールの月額費用と、そのツールで削減できている作業時間を一度棚卸ししておくことです。単価が下がったときに、どこへ追加投資すべきか判断しやすくなります。次に、商品説明文の生成や問い合わせ対応などの業務は、ChatGPT、Claude、Geminiなど複数のモデルで同じプロンプトを試し、乗り換え可能な状態を保っておくことです。最後に、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングの管理画面に追加されるAI機能のお知らせを定期的に確認し、無料で使える期間のうちに試しておくことをおすすめします。
まとめ
米大手5社のAI設備投資は2027年に1.2兆ドルへ達するとの予測が出ました。供給力の拡大はAIツールの単価低下を後押しする一方、投資回収のためのAI広告や有料機能も増えていくはずです。EC事業者は「安くなった分をどこに使うか」と「特定サービスに依存しすぎない体制」の両面から、AI活用の設計を見直すタイミングに来ています。
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引用元: PYMNTS
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。