ElevenLabs は Music v2.5 を公開し、無料プランでも商用利用を認めました。
2026年9月11日、ElevenLabs が AI音楽生成モデル「Music v2.5」を公開しました。注目すべきは性能そのものよりも権利まわりの条件で、無料プランでも1日5回のロスレス音源ダウンロードが可能になり、ElevenMusic のクレジット表記を条件に商用利用が認められています。商品動画やSNS広告のBGMを月に何本も差し替える日本のEC事業者にとって、これは実務コストに直結する変更です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

Music v2.5とは何か、47,885ペアのブラインドテストで示された差
Music v2.5とは、ElevenLabs が2026年9月11日に公開した AI音楽生成モデルのことです。ElevenMusic におけるプロンプト生成とリファレンス生成のデフォルトモデルとなり、従来の Music v2 も引き続き利用できます。
性能面では、同一プロンプトから両モデルで1本ずつ生成した音源を比較するブラインドテストを47,885ペア実施し、v2.5 が過半数で選好されたとElevenLabs 公式ブログが公表しています。同社は「楽器の音が本物のように聞こえる」と表現しており、差が特に大きかったのはボーカル主体の楽曲と、R&B、ソウル、ヒップホップ、ロック、メタル、オーケストラ、シネマティックといったアコースティック比率の高いジャンルだったとしています。逆に言えば、打ち込み中心のシンプルなBGMでは v2 との体感差は小さい可能性があり、この点は自社の用途で試して判断すべき部分です。
提供チャネルは4つあります。ElevenCreative、Studio、Flows のワークフローノード、そして ElevenLabs API です。API から呼べるということは、商品登録の裏側で「新商品が入ったら自動でBGM付きショート動画を1本生成する」といった組み込みが技術的に可能になったことを意味します。
日本のEC事業者にとっての論点は、価格ではなく権利条件の3点
EC事業者が確認すべきなのは生成品質ではなく、権利条件の3点です。理由は、商品動画のBGMで実務が止まるのは「いい音が作れないから」ではなく「この音源を広告に使っていいのか判断できないから」だからです。
第一に、無料プランの商用利用条件です。ElevenLabs は無料プランで1日5本のロスレスダウンロードを提供し、ElevenMusic のクレジット表記を条件に商用利用を認めるとしています。有料の Pro プランは月400本のロスレスダウンロードです。1日5本という枠は、楽天市場の商品ページ用ショート動画やInstagramリールを週に数本回す規模の店舗であれば、まず無料枠で運用検証できる水準です。ただしクレジット表記が必要な点は見落としやすく、動画の概要欄や画面内表記の運用ルールを先に決めておく必要があります。
第二に、権利条件がトラック単位で固定される点です。同社は、作成時点で適用された利用許諾はそのトラックに紐づき、解約やダウングレードをしても既に作った音源の使い方は変わらないと説明しています。さらに、将来的に規約を変更した場合も変更日以降に作った新規トラックにのみ適用するとしています。これは、過去に配信した商品動画のBGMが後から使えなくなるリスクを下げる設計で、広告クリエイティブを資産として積み上げるEC事業者には実務的な意味があります。なお、日本の著作権法上のAI生成物の権利帰属は事業者ごとの利用規約とは別の論点であり、大型キャンペーンで使う場合の最終判断は要確認です。
第三に、他アーティストの楽曲を参照したトラックはダウンロード自体がブロックされる点です。既存曲を指定して「この曲っぽく」と生成する使い方は封じられています。これは制約であると同時に、権利処理の観点では安全側に倒れた仕様です。うるチカラでは以前、Suno がライセンス済み楽曲で学習した新モデルに切り替えた件や、Suno がダウンロード制限を強化した件も扱いましたが、AI音楽生成サービス全体が権利クリアランスを強める方向で揃ってきています。
なお ElevenLabs は、ユニバーサル ミュージック グループとの複数年にわたる戦略的合意についても言及していますが、これは Music v2.5 とは別件だと公式が注記しています。混同して「UMG公認の音源が使える」と解釈しないよう注意が必要です。
初動でやるべきことは、用途の棚卸しとクレジット表記ルールの整備
まず着手すべきは、自社が音源を使っている場面の棚卸しです。理由は、用途ごとに求められる権利の強さが違い、すべてを同じ基準で判断すると過剰か不足のどちらかになるからです。
具体的には、商品ページ埋め込み動画、楽天市場やAmazonの広告クリエイティブ、TikTok や Instagram のショート動画、店舗紹介動画、この4つで棚卸しするのが実務的です。このうち広告配信に載せるものは審査で権利証明を求められる可能性があるため、生成日時とプロンプト、適用プランをスプレッドシートで残す運用にしておくと後で困りません。
次に、クレジット表記のテンプレートを決めます。無料プランで運用するなら表記は必須条件なので、動画の末尾カットと概要欄の両方に入れる定型を作り、動画編集テンプレートに組み込んでしまうのが確実です。
三つ目に、月あたりの必要本数から無料と Pro の分岐点を出します。1日5本の無料枠は月換算で最大150本相当ですが、実際には生成の試行錯誤で消費するため、採用に至る本数はその数分の一です。週に10本以上の完成音源が必要な体制であれば Pro を検討する段階と考えられます。
四つ目として、API 連携は最後に検討します。新商品の入荷サイクルが速く、動画制作が明確なボトルネックになっている店舗でなければ、まず手動運用で必要本数と品質基準を固めるほうが投資対効果は高くなります。
まとめ
Music v2.5 の要点は、47,885ペアのブラインドテストで示された品質向上よりも、無料プランで1日5本のロスレス音源を商用利用でき、権利条件がトラック単位で固定されるという条件面にあります。日本のEC事業者はまず無料枠で用途を棚卸しし、クレジット表記の運用ルールを整えたうえで、必要本数に応じて有料プランや API 連携を検討する順番が現実的です。
参考文献
- ElevenLabs 公式ブログ|Introducing Music v2.5, our best music model yet
- ElevenLabs Documentation|Eleven Music
- ElevenLabs|Eleven Music API
- ElevenMusic
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: ElevenLabs 公式ブログ
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。