TikTok Shopを起点に海外市場へ攻め込むブランドが増えています。米国で得た伸びをそのまま英国・欧州、そして日本へ持ち込む動きが本格化しており、共通するのは現地に合わせたマーケティング、クリエイターとの連携、TikTokの新ツールを試し続ける姿勢です。3社の事例から、日本のEC事業者が越境ECのルートとしてTikTok Shopをどう捉えるべきかが見えてきました。本記事ではゲーム機、ラグジュアリー再販、K-beautyという異なる3ブランドの型を整理します。

何が起きたか:3ブランドが米国の成功を海外へ複製
Modern Retailによると、モーション操作のゲーム機を手がけるNex Playground、ラグジュアリー再販のFashionphile、K-beautyのMBXの3社が、米国TikTok Shopで築いた勢いを海外でも再現しようとしています。進出先には英国・アイルランド、欧州、そして日本が含まれます。
Nex Playgroundはコントローラー不要の家庭向けゲーム機(299ドル)を販売し、2025年のホリデー商戦では発売直後に完売したと報じられています。英国・アイルランドではAmazon UKや玩具チェーンに加え、今月中にTikTok Shopでも販売を開始する予定です。米国で導入した「Refundable Sample(返金型サンプル)」プログラムでは、アフィリエイトのクリエイターが商品を先に購入し、2〜3本のコンテンツを制作すれば代金を払い戻す仕組みで、双方に利点があるとしています。物流面では「Fulfilled by TikTok」を英国でも継続し、配送遅延を避ける考えです。
Fashionphileは単品(シングルSKU)のラグジュアリー商品を扱うため、アフィリエイトを使わず自社でTikTok Liveのライブ販売を行う独自路線をとります。昨年10月に英国の再販マーケットプレイスLuxe Collective(TikTokフォロワー160万)を買収し、英国・米国・日本のスタジオから自社ホストが商品を実演しながら販売しています。同社の英国事業の責任者によれば、TikTok Shopは現在、英国事業の25%強を占めるまでに育っているとのことです。日本からの発送に対応するため、TikTokは同社アカウントに12日以内の出荷を許容する設定を付与したと説明しています。
MBXはNooni、Kaja、I’m Meme、I Dew Careなどを展開し、「TikTok-firstモデル」を掲げます。まずTikTok Shopで認知と需要を確かめ、その後にAmazonや実店舗、卸へ広げる順序です。看板商品Nooni Lip OilはTikTokで累計2億回超の再生を記録し、Nooniは出品者ランクで最上位の「Tier 5」、Kajaは「Tier 4」に到達したとされています(社の説明ベース、数値は要確認)。同社は今月、日本でもTikTok Shopを通じてブランドを立ち上げる予定です。
日本のEC事業者にとっての論点:越境ECの入口が変わる
注目すべきは、3社がそろって日本を重要市場に挙げている点です。TikTok Shopは2026年に欧州と日本を次の成長エンジンと位置づけており、日本はTikTokの月間利用者が約2,800万人、EC市場規模も大きいとされています(時期・規模は媒体報道ベースで要確認)。これは日本のEC事業者にとって、楽天市場やAmazon、Shopifyに続く越境ECの新しい入口がもう一つ増えることを意味します。
MBXが活用する「Earn Abroad(Global Commission)」は示唆的です。海外のクリエイターと自動でマッチングし、購入導線付きの投稿を自動でタグ付けし、越境の報酬支払いまで代行する仕組みで、現在は英国・ドイツ・スペイン・フランス・イタリアなどで提供されています。市場ごとにゼロから体制を組まずとも、実績あるコンテンツ資産を使って素早く認知と需要を生み出せるという考え方は、人員の限られた日本の中小EC事業者にこそ参考になります。
物流の観点でも、Nex Playgroundが頼る「Fulfilled by TikTok」や、Fashionphileのように単品在庫を各国倉庫から直送するモデルなど、自社の商品特性に合わせた設計が問われます。日本の事業者であれば、楽天やAmazonで磨いた在庫・配送オペレーションをそのまま流用できるか、それともライブ販売前提の別建てが必要かを見極める段階に入ります。
今後の展望と初動アクション
第一に、自社商材がTikTok Shop向きかを見極めることです。Fashionphileのように高単価・単品でもライブ販売で売れる市場(英国では高額品の購買が定着)がある一方、米国では低価格の美容・食品が中心という違いがあります。日本市場でどのカテゴリが伸びるかは未知数のため、小さく検証する価値があります。
第二に、クリエイター連携を前提に設計することです。Nooni Lip Oilで「車内で撮影したシンプルなクリエイター動画が安定して伸びる」と発見し、その型を横展開したように、勝ちパターンを見つけて再現する運用が鍵になります。
第三に、中途半端な参入は避けることです。Nex Playgroundの担当者は「水に足先を浸す程度のやり方ではうまくいかない。クリエイター経済を受け入れ、彼らに自由を与えて成長を育ててもらう必要がある」と述べています。本格投資を前提にした体制づくりが求められます。
まとめ
TikTok Shopは、米国での成功を英国・欧州・日本へ複製する越境ECの新しい主戦場になりつつあります。日本のEC事業者にとっては、楽天・Amazon・Shopifyに加わる選択肢として、商材適性・クリエイター連携・物流設計の3点を早めに検証しておく姿勢が現実的です。日本上陸の正式な時期は要確認ですが、準備の遅れがそのまま機会損失になりかねません。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。