リテールメディア6066億円の86%はEC|コンビニ本格参入の3論点

日本のリテールメディア広告市場は2025年に6,066億円、うち86%がEC事業者です。ECサイトを持たないCircle Kの月2億表示網とセブンの新会社から、EC事業者が押さえる3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

北米と欧州でコンビニエンスストアを展開するCircle Kが、リテールメディア事業「Full Circle Media」の本格展開に乗り出しました。注目したいのは、同社がECサイトを1つも持たないまま、月最大2億回の広告表示網を組み上げた点です。日本でも2026年9月にセブン‐イレブンの広告新会社が動き出します。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者にとっての論点を3つに整理して解説します。

リテールメディアとは、小売企業が購買データを使って売る広告のことです。

国内のリテールメディア広告市場規模の推計と2029年までの予測を示すグラフ

Circle KがECサイトなしで作った月最大2億回の広告網

Circle Kは、店頭のスクリーンを軸にリテールメディアを事業化しました。ECサイトという「検索連動広告を置く場所」を持たないまま、来店客の動線そのものを広告在庫に変えたことになります。

Modern Retailの報道によれば、同社は2026年2月からFull Circle Mediaのブランドを使い始め、それ以前はリテールメディア事業についてほとんど発信していませんでした。規模は米国6,600拠点以上で、同社の公表値によれば月間で最大2億インプレッションに達します。これまで主軸だったのはLiftと呼ぶアップセル用のスクリーンで、6,600拠点に13,200台が設置され、店内のデジタルウォールも併設されています。チョコバーを1つ買った客に「2個で3ドル」の条件を提示する、という具合に、オンラインの検索連動広告に近い動きを店頭で再現しています。給油機のスクリーンは3,800台超、さらにアプリとメールにも配信面があり、2026年5月からはソーシャルと外部サイトへの配信も始めました。

リテールメディアの責任者は、2025年に着任したJoell Robinsonです。前職のGiant Eagleでは、リテールメディア事業Leapの立ち上げに関わっていました。同社が土台に置くのは、34州5,000店舗超で1,470万人が使うロイヤリティプログラムInner Circleです。誰が何を買ったかを会員IDで追えることが、広告効果の測定を成立させる前提になっています。Robinsonのチームがいま試しているのは、メール施策でのクローズドループ計測と、広告がなかった場合との差を見る増分計測です。目指しているのはチャネルをまたいで完結する計測だと述べています。

外部からの評価も出ています。燃料・コンビニ業界に納入する企業向けのマーケティングとPRを手がけるKonbini Strategyの代表Frank Beardは、Circle Kが広告に投資を厚くするのは考えるまでもなく妥当だと述べています。コンビニは交通量が多く、店内で売られている商品の広告を置く場所として自然だという理由です。そのうえでBeardは、広告主に向けた機能を優先して顧客体験への投資を見失うべきではないとし、「リテールメディアは、そもそも人を店に来させる魅力的な小売の中身があって初めて機能します」と付け加えました。

日本のリテールメディアは6,066億円、その86%はEC事業者

日本でリテールメディアの主戦場になっているのは、店頭ではなくモールとECサイトです。

CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトの共同調査によると、2025年の国内リテールメディア広告市場は前年比129%の6,066億円でした。その内訳はEC事業者が5,236億円、店舗事業者が830億円です。EC事業者の比率を計算するとおよそ86%になります。つまり日本のリテールメディア市場の大半は、大手EC事業者が提供する広告商品が占めていることになります。同調査は個別の事業者名を挙げていませんが、EC事業者が日々出稿している楽天市場のRPP広告やAmazonのスポンサープロダクトも、この領域に位置づけられる広告です。

店舗事業者の830億円は、デジタル広告620億円とデジタルサイネージ210億円に分かれます。同調査は2029年に市場全体が1兆3,174億円へ、店舗事業者分は1,939億円へ伸びると予測しました。同時に「ターゲティング精度や広告効果測定手法の整備が十分でない点」や、広告主・小売事業者内の部門構造が投資判断の分かれ目になっているとも指摘しています。Circle Kが測定の作り込みに時間をかけているのと、同じ課題が日本にもあるということです。

日本の店頭側も動いています。セブン‐イレブン・ジャパン、電通、サイバーエージェントの3社は『セブン‐イレブン・アドコネクト』の設立に合意し、2026年9月1日から事業を始めます。基盤となるのは約22,000店舗と約2,800万人のアプリ会員(いずれも2026年5月末現在)で、POSデータとアプリの購買データを使い、時間帯や天候、在庫といった店舗の状況に応じてサイネージ広告を出し分ける構想です。

店舗事業者が提供するリテールメディア広告市場の推計と2029年までの予測を示すグラフ

EC事業者が押さえる3つの論点と今週の初動

論点の1つ目は、自分がすでにリテールメディアの出稿主だと認識し直すことです。モール内広告を「販促費の一項目」として扱っていると、市場全体で何が起きているかが視界に入りません。楽天のRPP広告に予算をどう割くかAmazonのスポンサープロダクトをどう運用するかという個別の話を、購買データを持つ小売が広告を売る構造の中に位置づけると、値上がりの理由も競合の増え方も説明がつきます。

2つ目は、成果を「広告経由売上」ではなく「増えた分」で見ることです。管理画面が表示する広告経由売上には、広告がなくても買ったはずの人が含まれます。Circle Kがメール施策で増分計測を試しているのは、この差を埋めるためです。自社で確かめるなら、売上が安定している数SKUを選び、2週間だけ広告を止めて店舗全体の売上と比較する方法があります。止めた分がそのまま消えたなら広告が寄与していた有力な手がかりになり、ほとんど変わらないなら予算の置き場所を見直す材料になります。ただし前後比較は季節性や競合の施策と混ざりますし、広告を止めれば配信データも途切れます。主力SKUではなく、影響の小さい商品から試すことをおすすめします。なお楽天やAmazonが増分の指標を標準機能として提供しているかは各社の管理画面仕様によるため、実際の画面での確認をおすすめします。

3つ目は、出稿できる面が店頭へ広がることです。自社商品を卸やメーカーとして小売に納めているEC事業者にとって、コンビニのサイネージは新しい販促面になります。ただしBeardが付け加えたとおり、広告面が増えても売り場の中身が弱ければ成果は出ません。これはモール内でも同じで、顧客データを起点にした広告設計を進める前に、商品ページ、レビュー、在庫の状態を整えるほうが先です。リテールメディアネットワークの全体像を押さえたうえで、自社がどの立場で関わるかを決めてください。

なお、日本国内のCircle Kは、2018年11月にサークルK・サンクスのファミリーマートへのブランド統合が完了したことで店舗がなくなっています。日本で同種の広告商品が提供される計画があるかどうかも、公開情報からは確認できませんでした。この点は要確認事項として残ります。

まとめ

ECサイトを持たないコンビニが同社公表値で月最大2億回の広告網を持ち、日本のリテールメディア市場6,066億円の86%はEC事業者が占めています。EC事業者にとっての現実的な次の一手は、モール内広告を市場構造の中で捉え直し、成果を増えた分で測り直すことです。広告面を増やす前に売り場を整える、という順番は日米で変わりません。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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