Google DeepMindが2026年8月5日に首脳交代を発表しました。
CEOだったデミス・ハサビスが日々の運営から離れてGoogle DeepMindの会長兼Alphabet最高科学責任者に就き、Googleの最高科学責任者だったジェフ・ディーンは27年勤めた同社を退社して新会社を立ち上げます。Geminiアプリの月間利用者が9.5億人を超えたと公表された直後に、AI開発の中枢にいた2人が同時に立場を変えたことになります。生成AIを業務に組み込んでいる事業者にとっては、開発体制の変化がモデルの更新ペースや価格にどう効くかが気になるところです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
同じ日に動いた3つのポスト
今回の発表の中身は、Google DeepMindの指揮系統を1人のトップの下に束ね直す人事です。Googleは2026年8月5日、公式ブログに「The next chapter of our AI momentum」と題した記事を掲載し、スンダー・ピチャイとデミス・ハサビスが社員に送った2通のメッセージをそのまま公開しました。動いたポストは3つあります。
1つ目はハサビスです。Google DeepMindのCEOとしての日々の運営責任を手放し、同社の会長とAlphabetの最高科学責任者を兼ねる立場に移ります。社員向けメッセージでは「GDMでの日々の運営責任を引き継いでもらう時期が来たと判断しました」と説明しています。会社を去るわけではなく、ロンドンの新拠点を軸にピチャイとAGI関連の戦略課題で連携しながら、Alphabet傘下の創薬企業であるIsomorphic Labsにより多くの時間を割くとしています。
2つ目は後任の人事です。Google DeepMindのCTOでGoogleのチーフAIアーキテクトを務めてきたKoray Kavukcuogluが、同社のSVPに就いてピチャイの直属になります。担当範囲はGeminiのモデル開発、フロンティアAI研究、Geminiアプリ、開発者向けチームにまで及びます。DeepMindには初期から在籍して13年、ディープラーニングチームを立ち上げ、音声合成のWaveNetや強化学習のDQNといった成果を主導してきた人物です。
3つ目がジェフ・ディーンの退社です。Googleでの27年に区切りをつけ、Googleのシニアフェローであるサンジェイ・ゲマワットとともに独立した公益法人を立ち上げます。ピチャイのメッセージによると、Googleは創業投資家兼クラウドパートナーとして関与を続け、機械学習システムと関連インフラの研究フレームワークで協業する予定です。同じメッセージでは、Geminiアプリが月間9.5億ユーザーを超えたこと、Gemmaモデルの累計ダウンロードが9億を超えたことも報告され、研究面の成果としては直近のGemini Robotics関連の進展にも触れています。
抜けたのは1人ではなく、共同作業歴14〜30年の4人
見落とされやすいのは、Googleを離れるのがディーン1人ではないという点です。The Decoderによると、新会社Discovery Loopの共同創業者は4人で、ディーンとゲマワットに加えて、Google DeepMindでGeminiの共同リードを務めたOriol Vinyals、Google Brainの共同創業者であるQuoc Leが名を連ねます。ディーンの説明では、4人の共同作業歴は短い組み合わせで14年、長い組み合わせで30年に及びます。
Discovery Loopはデラウェア州の公益法人として設立され、機械学習と科学、工学の研究サイクルそのものを自動化することを掲げています。当面は大規模な機械学習実験の自動化から着手し、そこで確立した進め方を他の科学・工学分野へ広げる構想です。資金面ではRadical VenturesとKhosla Venturesが共同リードを取り、Lightspeed、Kleiner Perkins、Doerr Capital、そしてAlphabetが参加します。ラウンドのクローズは数週間内とされており、調達額は本稿執筆時点で公表されていません(要確認)。

人の動きはここ半年で続いています。The Decoderは、Geminiの共同リードだったNoam Shazeerが6月にOpenAIへ移り、DeepMind古参の研究者David Silverが2月に退社したことにも触れています。1件ずつ見ればよくある移籍ですが、Geminiの中核を担ってきた研究者が半年のうちに立て続けに抜けたという事実の積み上がりは、無視できる規模ではありません。
今後の焦点はGemini 4と、一本化された指揮系統
当面の注目点は、この体制変更がGemini 4の開発速度にどう表れるかです。ハサビスは社員向けメッセージの中で、新モデル、とりわけGemini 4で良い進捗が出ていると述べています。ただしリリース時期は今回も示されませんでした。うるチカラでもGemini 4のリリース時期に関する確定情報を別記事で整理していますが、今回の発表で公式な日付が動いた事実はありません。
体制面では、モデル開発と研究、アプリ、開発者向けプラットフォームがKavukcuoglu 1人の下に集まり、その報告先がピチャイになりました。意思決定の階層が1つ減るため、モデル投入や機能追加の判断は速くなる可能性があります。一方でThe Decoderは、コーディング分野でGoogleの最上位モデルがOpenAIやAnthropicに後れを取っており、Gemini 4がその差を埋める前提になっていると指摘しています。研究の自由度より製品の競争力に寄った運営になるのかどうかは、次のモデル発表の中身を見るまで判断できません。
Geminiを業務に組み込んでいる事業者としては、経営陣の顔ぶれそのものより、そこから派生する3点を押さえておけば当面は足ります。1つはモデルの更新と提供終了の告知ペースで、商品説明文の自動生成や問い合わせ返信のようにモデル名を固定して運用している処理に直結します。2つめは、Geminiアプリと開発者向けAPIが同じ責任者の下に入ったことで、消費者向けに先行提供された機能がAPI側へどれくらい速く降りてくるかという点です。3つめは価格改定の告知で、コスト前提が変わるとGemini 3.1 ProとGemini 3.6 Flashの使い分けのような運用設計を組み直す必要が出てきます。いずれも今回の発表だけでは何も確定しておらず、次の四半期の発表を待つ話です。
まとめ
Google DeepMindは2026年8月5日、ハサビスを会長兼Alphabet最高科学責任者に、Koray KavukcuogluをSVPに据える体制へ移り、あわせて在籍27年のジェフ・ディーンを含む4人の退社とDiscovery Loopの設立が明らかになりました。Geminiアプリ9.5億ユーザーという足元の数字と、研究人材の流出という長期のリスクが同じ日に並んだ発表です。Geminiを業務で使っているのであれば、モデルの更新告知と価格改定の2点を追っておけば当面は十分です。
参考文献
- Google – The next chapter of our AI momentum
- The Decoder – Google Deepmind loses both its CEO and chief scientist as Demis Hassabis and Jeff Dean step down simultaneously
- TechCrunch – Jeff Dean and other top AI researchers are leaving Google to launch their own startup
- Discovery Loop – Continuous Exploration
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。