Walmart Connectが年末商戦を前に、広告主へリフト調査を直接売り込み始めました。
米小売大手Walmartのリテールメディア部門であるWalmart Connectが、広告代理店を介さずにブランドへ直接連絡し、サイト内広告のブランドリフト調査を提案しているとModern Retailが2026年10月23日に報じました。狙いは「その広告は本当に売上を上乗せしたのか」という増分効果を示すことです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本の楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの広告運用にどう効くのかを3つの論点で整理します。
Walmart Connectのリフト調査で何が起きたか
結論から言うと、Walmartは「広告の効果測定」を営業の武器に格上げしました。複数の代理店幹部によれば、Walmartの営業チームは広告主に直接連絡し、年末商戦前に店舗サイト内のブランドリフト調査を受けないかと持ちかけています。対象は広告出稿額に応じて決まるとされ、これまで大口広告主向けの単発ベータだった仕組みが、より多くのアカウントへ広がり始めた形です。なお、Walmartは報道時点でコメントしていません。
背景には広告事業の急成長があります。Walmartの2027年度第2四半期決算では、グローバル広告事業が前年同期比38%増、米国のWalmart Connectは(VIZIOを除いて)43%増でした。eMarketerは、リテールメディア広告費が年内に693.3億ドルへ達すると推計しています。
一方で課題も明確です。報道では、リフト調査の結果が出るまでキャンペーン終了後最大9週間かかること、広告主が自分で調査を設計・実行できず、実質的に小売側が自社の成績を採点している構図であることが指摘されています。代理店Mile Markerの最高分析責任者Anthony Costanzoは、ウォールドガーデンの外で行えるような増分テストはまだできないと述べています。
日本のEC事業者にとっての論点
日本のEC事業者にとっての論点は、ROASではなく増分効果で広告を評価する流れが、モール広告にも確実に来るという点です。理由は単純で、モール広告のROASには「広告がなくても買ってくれた人」の売上が含まれるからです。
1つ目の論点は、楽天市場のRPP広告やAmazonのスポンサープロダクト広告で見ているROASが、増分を過大に見せている可能性です。指名検索や既存顧客のリピート購入まで広告経由として計上されると、広告を止めても売上はさほど落ちないことがあります。Walmartが増分効果を前面に出したのは、まさにこのズレを埋めるためです。
2つ目の論点は、測定データの出し手が誰かです。Amazonには広告主が分析クエリを組めるAmazon Marketing Cloudがありますが、日本で利用できる機能範囲は要確認です。楽天市場やYahoo!ショッピングでも、増分効果の検証はモール側の提供データに頼る部分が大きく、Walmartと同じく小売側が採点する構図は変わりません。
3つ目の論点は、モール側の営業が店舗へ直接来る流れです。楽天市場ではECコンサルタントが店舗に広告や施策を提案するのが日常ですが、米国でも代理店を飛ばしてブランドへ直接提案する動きが強まっています。提案された調査や広告メニューを、自社の判断軸で評価できるかが問われます。
関連して、AI経由の商品発見が増えてもレビューが購入を決めるという調査はAI発見とレビューの関係を解説した記事、Walmart Connectの広告機能の変化は除外キーワード機能の解説記事も参考にしてください。
今後の展望と初動アクション
年末商戦の予算を確定させる前に、広告の増分効果を自社で確かめる準備を始めるのが最優先です。具体的には次の4つから着手してください。
まず、主力SKUのうち数品目で広告を2週間止める、または入札を大きく下げるオン・オフ比較を行い、売上と自然検索流入の変化を記録します。止めても売上が落ちないSKUは、広告費を別の商品へ回す候補になります。
次に、モールの担当者から調査や効果データの提案を受けたときは、比較対象(広告を見ていない集団)の作り方、計測期間、計測対象の売上範囲を必ず確認します。条件が開示されない数字は参考値として扱います。
さらに、結果が出るまでの時間差を計画に織り込みます。Walmartの例では最大9週間かかるため、12月の楽天スーパーSALEやブラックフライデーの効果検証は、2027年の予算策定に間に合わせる前提で設計しておくと無駄がありません。
最後に、ROASと並べて「広告費1円あたりの増分売上」を社内の定例レポートに加え、広告を続けるか止めるかの判断基準を明文化します。
まとめ
Walmart Connectがリフト調査を直接売り込み始めたのは、リテールメディアの評価軸がROASから増分効果へ移りつつある表れです。日本の楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングでも同じ問いは避けられません。モールが出す数字を鵜呑みにせず、小さなオン・オフ比較で自社の増分効果を持っておくことが、年末商戦と2027年予算の判断を強くします。
参考文献
- Modern Retail「Walmart Connect pitches brands directly as it pushes lift studies ahead of holiday ad deals」
- Walmart「Walmart Releases Q2 FY27 Earnings」
- Walmart Connect 公式サイト
- Amazon Ads「Amazon Marketing Cloud」
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。